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タクシーに乗って「関東まで行ってください」と言ったら


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:飯沼かおり(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「関東まで行って下さい」
 
東京駅でタクシーに乗って、運転手さんにこんなことを言う人はいないだろう。
まるで私は言ったことがあるかの様だが、もちろん私も言ったことはない。
しかし、私たちは意外と日常生活でこんなことをしているのではないかと思う。
 
例えば私の英語学習がそうだった。
3年前広島に住んでいた時、無性に英語の勉強がしたくなった。
 
広島県には、他の都道府県に比べて西洋人の観光客が多かった。
近年は、北海道に行っても、沖縄に行っても、どちらかと言うとアジア人の観光客が多い。
しかし、広島県は原爆ドームの影響なのか、歴史への関心により西洋人の観光客が多いと肌で感じた。
路面を走る電車に乗ると、西洋人に日本の歴史や観光のポイントなどを、流暢な英語で説明する観光ガイドの人によく出くわした。その流暢な英語のカッコいいことと言ったら。
そんな場面に何度も遭遇する内に英語の勉強に無性に興味を持った。
 
いくつかの英会話教室の体験レッスンを受けた。一番初めはカルチャースクールの40分の体験レッスンだった。15年ぶりに触れる英語に本当にドキドキした。目の前に外国人の先生がいるだけで頭が真っ白になって、全然言葉が出てこない。
「アイ、アー、ウー!」出産のトレーニングに来たわけじゃないのに! とにかく何も言葉が出てこない。顔が真っ赤になって、ずっとカラスみたいに「アー、アー」言ってる私。先生も困った様子である。最終的に「りんごは?」と聞かれて、私が「apple」と答える。そんなことをやる始末になりとっても恥ずかしかった。
 
次は、家の近くに新たにオープンした英会話スクールの分校に体験レッスンに行った。
そこでは驚くべきことが起きた。綺麗な英語を話すアメリカ人の先生が、私の英会話のレベルチェックを担当してくれた。前回の出産トレーニング状態となんら変わりのないレベルであったが、なんとその先生は、「She’s great!」と言って私を平均レベルより上のクラスに推薦してくれたのだ! 「穴があったら入りたい」状態だった私は、正反対の結果に、天にも昇る思いで、その英会話スクールに即決で申し込みをした。
 
入って1、2カ月ほど経った後に気づいたことだが、そこの分校は開校したばかりで、まだそのクラス一つしかなかった上、生徒も中の上レベルの人が私以外に1名しかいなかったのだ。つまり、私はおだてられて、単なる生徒集めのセールスに乗ってしまっただけだったのだが、「豚もおだてりゃ木に登る」状態で英会話にやる気を出してしまったのだ。
 
そこから1年間、毎日2~3時間自習で英語の勉強をした。勉強が楽しくて、楽しくて、少しでも講師の先生と色々な話をしたくて、少しでも英語で意思の疎通ができると本当に嬉しかった。勉強しないと気持ちが悪く、毎日欠かさず決めた教材で、決めた分量をこなした。携帯の「study plus」というアプリを使って教材ごとの勉強時間の管理をしていたら、同じ教材で勉強している仲間が何十人もできた。FACE BOOKの様にやり取り、コメントをし合い、勉強がさらに楽しくなっていった。
 
1年経った頃、夫の転勤で関東に戻ることになった。その頃TOEICで600点レベルになっていた私は、もっとTOEICの点数を上げたいという欲が出て来ていた。アプリでできた勉強仲間の数人が、関東のある英語スクールに通って、半年で一気にTOEIC800点を超えた様子を見ていたからだ。
「私もそのスクールに通って、本物の英語を身につけたい!」と、数十万円を払ってそのスクールに通うことにした。
 
そのスクールは「スパルタ指導」で知られる有名な学校で、授業の度に大量の宿題が出る。必然的に毎日2時間程度の勉強が強いられる。勉強の習慣がついていたからか、最初は普通にこなせていた。毎週1回の授業の為に、毎日2時間宿題をし、通学するという日々を過ごした。
 
半年ほど経った時、家庭の事情でその学校にしばらく通えなくなった。そして、それと同時に、どうしてか一切英語の勉強に手がつかなくなった。
 
「あんなに勉強が楽しかったのに、どうして?」
「やっぱりわたしは何をやっても続かない人間なのか?」
「そもそもわたしが何かを達成するなんて無理なんだ」
 
自分自身を責める日々が続いた。それでも、どうしても勉強は手につかない。
 
しかし、あるお試しコーチングを受けた時、コーチの方から鋭い質問が飛んだ。
 
「やりたくもない英語の勉強を、なんでやるんですか?」
 
「え?」と、しばらく固まってしまった……。
 
やりたくないはずがない! だって1年半も毎日、毎日勉強してきたのに。
アメリカ人の先生と意思疎通もできて、あんなに楽しかったのに。
夫との時間を削って時間もお金もかけてきたのに……。
自分に言い訳の様なことを言ってみたが、真実は明白だった。
 
私には、英語を勉強する明確な目的がなかったのだ。
 
通訳や通訳ガイドになった人の話を聞いていると、実に勉強をする目的がはっきりしていた。
「通訳ガイドをすることで、日本の歴史を正確に海外の人に伝えたい」
「日本の文化と海外の文化の架け橋になりたい」
 
私はどうだろう? 「英語を話せてカッコいい」「先生ともっと英語で話したい」
どんなに考えてみても、そんな浅はかな理由しか出てこなかった。
 
そうだ。私の英語の勉強には、目的地がなかった。タクシーに乗って、「関東方面に行ってください」という程目的が曖昧だった。「東京タワーにいって下さい!」と明確に言えるものがなかったのだ。これでは道に迷いに迷い、車が故障してしまっても仕方がない。
 
目的地は明確な方が良い。目的地が明確であれば、たとえ多少の回り道をしたとしても、再び目的地を目指し軌道修正し、辿り着けるはずだ。タクシーが突然故障して全く動かなくなってしまう様なことはない。ダイエットや、習い事、ジム通いなどにも同じことが言えるはずだ。
 
そんなことを心に刻みながら受講した、ライティング・ゼミもいよいよラストの時を迎える。
ライティング・ゼミを受けた当初の私の目標は「書く習慣をつける」ことだった。4か月の受講でこれはクリアできたと思う。そして、また書くことに対する次の欲が出て来た。
今度は英語での失敗を生かして、次の目的地を明確にして取り組みたい。
さて、目的地はどこにしよう。

 
 
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2018-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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