メディアグランプリ

もはや誤算でもよかった


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記事:YANG MIAO(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
今週は何時間寝たんだろう。
 
深夜2時ぐらいになるとパッと目が覚め、それを書かなくちゃ、あれも考えなくちゃ、まだ調べてない……。頭がフル回転してしまい、そのままパソコンに向かう。気がついたら空が明るくなっていた。
 
子どもが生まれてから、夜中に授乳したり、おむつを取り替えたりしたので、ここ数年、夜ぐっすり寝むれないことには慣れてきた。しかし、今は子どもたちのために起きたのではなく、仕事のためだ。
 
子どもたちを保育園に送り出したあとは、二度寝することもひと息つく間もなく、メール、原稿、リサーチ、SNS投稿、アポ取り、イベントの企画、クライアントの絞り込み、資料スライドの作成……、To doリストがどんどん長くなり、とんでもなく時間が足りない。一日中何かと忙しく動き回って、あっという間に夕方になった。子どもたちが帰ってくる時間になると、さらに焦ってくる、今日がもう終わりだと感じた。
 
夕食のおかずは三品から二品に減り、とうとうワンプレートになったときには、「これだけ」と家族に言われ、はっと気がつき、申し訳なく感じた。会社勤めだった時は少なくとも週一回は家を隅々まで掃除していたが、今は、眼立ったごみ以外は目に入らなくなった。
 
「ママ、お客さんがこないんですけど」とアイスクリーム屋さんごっこをしている娘の不満そうな声が聞こえた。子どもたちと一緒に遊んでも残っているTo Doが気になってしまうのだった。
 
仕事も、生活も、子育ても、どんどんブラック化してしまった。
時間もない、自由もない、収入もない。
さらに追い打ちをかけるように、毎月n万にも上る健康保険と税金の請求がくる。
 
会社を辞めて、誤算だった。
 
フリーになってみたら、仕事とプライベートの境界線がなくなった。起きていればすべてが営業時間となった。会社の看板がなくなり、クライアントに会うことはこんなにも大変なのかとつくづく実感させられました。会社にいた頃は、組織によって自分のチカラが拡張されていたんだと知った。
 
打ち出したイベントに来たのは知り合いの二人だけだったときは、マーケットの厳しさを知った。フリーになることは組織というクッションを捨て、自分で作り上げた結果をすべて受け止めることを意味するのだ。そこには、うそも、言い訳も、ごまかしもきかないのだ。
 
しかし、すべてが行き詰ったおかげで、顧客はだれ、価値とは何か、何のために、を真剣に考えた。
会社でたくさん学んでいたマーケティングの理論やノウハウが企画書から降りてきて、リアルとなった。
 
英語のgrow(グロー)とdevelop(デベロップ)はどちらも「成長」という日本語訳になる。しかし、グローとは雑草のように、どの方向に伸びるかが分からないが、しげるように大きくなる様子のこと。一方、デベロップはde(否定表現)+ velop(包み)が語源なので、開封する、包みを広げるという、あらかじめ中身のあるものを伸ばすという意味なのだ。
 
サラリーマンは決して楽ではない。会社のビジョンや事業の目標にしたがい、やるべきことがあらかじめ決まられているので、それに合わせ、自分の意欲や能力を「開封する」ことが求められる。そこには好き嫌いを受け入れる余地はあんまりない。自分のアイディアを実現しようと思ったら、たくさんの人の承認を得、組織を動かさなければいけない。少し運が悪ければ、承認を得ていくうちに、最初のアイディアと似て似つかないようなものになって戻ってくることもよくあった。組織が大きいほど、自分が実感できるあらゆる「結果」が薄まるのだ。
 
それに比べ、フリーなったことは、自分が持つ小さな力でも精いっぱい活かして、どんな方法で生きられるか確信がなくてもトライしつづけ、結果まですべての責任を持つ。そう、grow(グロー)するのだ。
 
大きくても小さくてもグローするにはエネルギーと支えが必要だ。行き詰ったとき、思わぬところから共感してくれる方から頂く温かい応援に、何度も胸が熱くなった。
 
グローしていくことは、自分自身が持っていた考えの枠や先入観が壊され、リアルな現実に向き合わされることでもある。常に行動しなければ、何も起きないし、何も進まない。以前なら手に取りそうもないような本を読む、自払いして苦手なライティングを学ぶ、やったこともない役所用の申請書類を作る、半分なめていた地道な発信、まったく接点のない人でも自ら連絡とる……。これまでしなかった行動を起こすことで、予想外の発想や学びを得る経験を繰り返していくうちに、もっと大胆になり、楽しくなった。
 
何よりグローの醍醐味といえば、手応えなのだ。自分の思考や行動が結果となってストレートに帰ってくる、それが人を真剣にさせ、ワクワクさせ、謙虚にさせ、夢中にさせる。その結果として、経済的な報酬もついてくる(はず)なのだ。
 
今は、子どもに向き合うときに気持ちが以前よりも穏やかになった。これまで一度も買ったことのない色の服を楽しく着こなしている。からだの調子もよくなった。そして、月曜日が楽しみになった。
 
もはや誤算でもよかった、今日も私はグローの途中なのだ。

 
 
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2018-08-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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