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一生物の健康器具


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:森脇 千晴(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
「女の子は冷やしちゃダメ」
私の友達のお尻にも母は座布団を忍ばせようとする。
自分の娘以外にもお構いなし。
そんな彼女の振る舞いが苦手だった。
 
いわゆる健康志向な人である。
食事はいつも手作りで、ジャンクフードは悪だとされていた。
一人暮らしを始めたとき、母親が真っ先に心配していたことは食生活のことだった。
とは言え……
「いつでも、どこでも、好きなときに、好きなものが食べられる」
これこそが一人暮らしの醍醐味だ! とすぐに気が付いた。
 
これまで、わりと健康的に生きてきた人間が突然、好き勝手な生活を送り始めると、体は分かりやすい反応を示す。
私は風邪をひきやすい体を手に入れた。
年に数回、風邪をひき、熱を出した。
1度風邪をひくとズルズルと長引き、治るまでに時間を要した。
 
学生の頃は、まだよかった。
社会人になってからの体調不良は最悪である。
体調を崩す=「自己管理が出来ない人」
自動的にそのようなレッテルが貼られる。
体調を崩そうものなら、厳しく指導されるという恐ろしい職場も経験した。
 
数年前にも例年通り、誕生日前に風邪をひいた。
鼻水。 喉の痛み。 声が出ない。
たぶん熱もあった。
(熱があるという事実は一気にしんどさをアップさせるため、あえて熱を測らない人は、きっと私だけではないだろう)
この風邪が随分と長引いた。
いっそのことインフルエンザとか、高熱が出た方が分かりやすくていい。
「いつかこの不調から解かれる日が来るのだろうか?」
とにかく治りの悪い風邪だった。
 
スッキリしない体と朦朧とした意識。
そんな日々の中で私は出会ってしまったのである。
自分で言うのも何だが「第一印象」は外さないタイプ。
運命的。
まさしく、そんな出会いだった。
 
2016年の12月。
風の冷たい冬の日だった。
かれこれ1か月近く風邪が治らない私は友人のサロンに向かっていた。
 
お目当ては「よもぎ蒸し」である。
はて? 「よもぎ蒸し」って何? 
そう首をかしげる人もいるだろう。
 
壺の中によもぎを含む漢方薬草を入れ、お湯を注ぐと壺から温かい蒸気が出る。
専用のイスに座り、その蒸気で下半身から体を温めるのだ。
ちなみに首だけ出るマントをすっぽりと着て行う。
マントの中は、真っ裸だ。
ダイレクトに下半身から漢方薬草の蒸気を当ててデトックスを行っていく「よもぎ蒸し」は600年以上前から韓国で出産後に行われていた民間療法。
血液の循環が良くなり、疲労回復や美容にも効果が出るのだという。
 
出来れば病院と薬には頼りたくない私は、よもぎ蒸しが、この長引く風邪に絶大な効果を発揮してくれるのでは!? と並々ならぬ期待を抱いた。
 
「とにかく、めっちゃ気持ちいい!」
「心身ともにデトックスされた!」
身近な経験者たちからは既にそんな声を聞いていた。
 
それだけではない。
「悩みが解消された」
「グラウンディング(地に足をつけること)が出来た!」
という内面的な効果まで……。
その効果を自分も体感したくてたまらなくなった。
 
「……あったかい」
 
じんわりと包み込まれるような優しい温かさを下から感じた。
しばらくすると汗がこぼれ落ちてくる。
ベタベタした汗ではなく しっとりとした汗。
この汗にも保湿効果があるのだと友人が教えてくれた。
 
終わった後、はっきりと体の変化を感じた。
喉は、すっかり楽になり、スキップして帰りたくなるくらいの爽快感を感じた。
たった1度蒸されただけで、すっかり虜になってしまったのである。
心も体も一気に軽い。
これがデトックスってやつ?
 
よもぎ蒸し初体験の後、私は驚くべき行動に出た!
ウン十万もする、そのよもぎ蒸しの器具を一式購入したのだ!!
 
ほとんど即決に近かった。
決してお金に余裕があった訳ではないが、この日は「一粒万倍日」。
一粒のもみが万倍にも実る稲穂になるという意味で、何かを始めるのに良いとされている日だった。
そんな良き日に私たちは出会った。
運命的な出会いに、いつだって私は弱い。
 
よもぎ蒸しが我が家に来てから、すっかり医者いらずだ。
腰痛や肩こりにも効く。
半年間消えなかった顔のニキビが、あっさりと消えたこともあった。
モヤモヤする日は静かに自分を蒸してみる。
余計なことは何も考えず、下からただ温めているだけで頭の中で複雑に絡まっていた糸が徐々に解けていくような感覚になるのが、いつも気持ちいい。
 
まさに「一生物の健康器具」。
 
自分だけで楽しむのは、もったいないので時々、人を蒸している。
初めてのお客様は、初対面の私の前で「愛されたいんです~」と大粒の涙を流した。
どうやら、体が温まると、心も緩まっていくようだ。
よもぎ蒸しの後、皆さん実に女性らしくなって帰っていく。
緩んだ後の表情が、いつも抜群に良くて、それを見るのが私の密かなお愉しみだったりする。
 
頑張り過ぎる女子たちへ。
心も体もカチカチに固まりそうになったとき、ぜひ、お股から温める「よもぎ蒸し」を試してみて欲しい。
「女の子は冷やしちゃダメ」
ん? どこかで聞いたことのある台詞。
あんなに嫌いだった母の台詞を、私は今、声高らかに口にしている。

 
 
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2018-08-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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