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いじめも、やっぱり必要だった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:Masatomo Sugai(ライティングゼミ平日コース)

「もうここでやっていくの、辛いんですけど」

ある従業員が仕事終わりに、ボソッと、つぶやく。
あぁ、またか…… 今度はなんだろう。ぼくの胸は急に心拍数を上げた。
とりあえずここは親身に話を聞くことにしよう、そう思い、くわしく訊いてみる。

「なにかあった? 」
「実は…… 」

詳しい話を聞いてみると、どうやら新しく入ってきた社員と連携がうまく言っていない、そもそもあんまりよく思っていないようだった。仕事の面でも、性格の面でも。
面倒なことになっている。すぐに直感した。
理由は簡単だ。
その新しい社員というのは、社長の大学の同期であり、友人。当時からのツレだったから。そして、僕にとっても大学の同期である。
この関係はもちろん従業員も知っている。知っている上でのあの訴えだから、よっぽどのことなんだろう、そう直感したのだった。

なんとも気の重い話だ。

職場ではいろいろ問題が起こる。お客様への対応の仕方、業務の流れ、クレーム処理、そして、人間関係。職場で起こる問題は大抵は解決することができる。しかし、人間関係は別物だ。解決しにくいことが多い。ずるずると解決できずに残ってしまう。それに、????によると、離職する人の理由の多くは、職場の人間関係だという。仕事内容や忙しさというのは慣れて解決することも多い。しかし人間関係は別だ。慣れるというのはほとんどない。合うか、合わないか、上手く合わせてあげるか、しかない。たとえ自分を曲げて合わせてあげたとしても、結局は無理矢理に演じているだけなので、長続きせず、どこかでほころび、破綻する。そしてめでたく迷宮入りする。

なにを隠そう、ぼくも、前回、離職した時も同じ、人間関係を理由にやめた。ただ、自分がなんとかしたかったが、どうにも出来なくなり、おなじ過ちは繰り返さないと強く決意しての離職だった。

それは3年前のことだった。

「コーチングをもっと勉強したいので辞めます」
ある日の仕事終わり、直属の上司にそう相談した。当然驚かれたが、理解のある上司だったこともあり、折れてくれた。
コーチングをもっと勉強する、というのはもちろん理由の一つだが、本当のことをいえば、この職場の人間関係のギクシャクに疲れていた。
ぼくがいた部署は約20人だった。たった20人の部署ではあったが、大きく2つに分裂していた。組織的に、ではなく、裏の人間関係で。政治家でも派閥がいくつもあるくらいだから、そんなのはどこにでもある話なのかもしれない。人間は自分と同じような考えの人、同じような価値観の人と群れたい生き物だ。そうやって群れを成すことで生き延びた歴史もある。
そんな中で何が辛かったかといえば、ぼくはその両方に好かれていた。八方美人といえばまぁそうなのかもしれないが、僕にはそうしたい理由があった。というか、そういう風にしかできなかった。人を差別する、仲間外れにする、というのがどうも許せないのだ。そういうのを見聞きするたび、鼓動が激しくなるし、胸が締め付けられる思いがして、頭に血がのぼる感じがある。

いつからこうなったんだろう。
目を瞑ると、小学校の頃の苦い記憶が蘇ってきた。

「あいつ、また変なことかんがえてんじゃね? ニヤニヤしやがって」
「あはは。たしかにー」
左後ろ、少し離れたところで、ある男子たちが言っている。
聞こえないフリしよう。
なにも気にしないようにしよう。別にそんなに変なことも考えるわけじゃないし。
自分のことじゃない。
自分には関係ない。
自分は関係ない。

気にない。気にしない。気にしない。気にしない……

でも苦しかった。辛かった。自分がそんなふうに言われることに。
なにを理由にいってるんだ。
僕のなにがいけないの?
そんなに言われなきゃダメなの?

田舎の小さな小学校。学年に2クラス、1クラスに24人程度の田舎の小さな小学校である。みんなとはもちろん友達。もちろん、あーだこーだ言ってる男子も友達、だった。ついこの前まで普通に遊んだり、部活してたのに。
辛い。寂しい。仲間外れにしないでほしい。
そんな感情が胸をいっぱいにした。

いじめは僕の中に密かに影を落とした。目立つ程の陰ではなかったものの、それは確かに存在し、影響を与えた。
いじめられた経験が、ぼくの心には残っていた。だから仲間外れににされる人の気持ちがよくわかった。いじめられた、仲間ハズレにされた経験が、誰かが仲間ハズレにされるのを、嫌いにさせた。

職場でそういう人間関係の問題が起こらないようにしたい。それを解決したい。そう思ったのが、コーチングを勉強し始めたきっかけでもあった。
コーチングは、例えるなら、カーナビである。現在地を教え、目的地まで、ドライバー好みの最適な道順を教え、ナビゲートする。
人間関係の問題においてもコーチングは同じように効果を発揮する。今の人間関係から、ゴールとなる理想的な人間関係までナビゲートする。
また、コーチングは自己成長支援である。少しずつ自分が成長し、変わっていくことで自力で解決できるように支援する。だから、無理矢理自分を変えるということもない。

「今こそ、自分がチャレンジするときだ」

頭の中のもう一人の自分が囁いてくる。

3年前に悔しい思いをした、その思いを晴らすチャンスが、今、目の前で起こっている。今の職場で起こっている。

「人生に必要なことは、必要な時に、ベストなタイミングで起こる」
大好きな松下幸之助氏の言葉が頭に浮かんだ。

よし、僕がなんとかしよう!
必ずできる!

そう、不安を感じる自分にいい聞かせると、不思議と足取りが力強くなった気がした。

いじめられた経験も、今となっては役に立っている。
やはり、いじめも、自分に必要だから、あの時起こったのだ。

「おはようございます! 」
新たな決意を胸に、店のドアを開けた。
僕のあらたなチャレンジが始まる。

***

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2018-08-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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