メディアグランプリ

怪人二十面相の正体は天狼院店主


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

    記事:木戸 古音《ライティングゼミ平日コース》

「漫画を読んだらあかんよ」
こんなことを言われたら「ショックだ」「なんでだ」という人が
ほとんどでしょうか。
私は子どものころ母からよく言われていたのだ。
理由は何かというのを特に問い返した記憶も無い。
また自身も我慢を重ねて耐えていた、そんな記憶も無い。
いまだにそのころ、いわゆる子どもなら当たりまえに経験してきた「遊び」
の何分の一程度しか経験してこなかったと思う。
「遊び足りない」というか。
めんこ、ちゃんばら、あまり記憶に無い。
いまだに子ども時代の私は人並みの遊びをし尽くしてこなかったと
負い目を背負っている。

だから社会に出てからは傍観者であるよりも
へたでも「見る野球」より、「する野球」。
何でもかんでも「踊る阿呆」になろうと努力してきた。
子どの頃は、静的なおっとりした遊びに興じていたように思う。
ままごと遊び。お医者さんごっこ。
手っ取り早く、近所の特定の女の子と遊んでいたことが多い。
どこか屈折していたかもしれない。
仲間と張り合い、遊び興じることが苦手だったことが根本にある。

さて本の4日前のこと。
「これ読んでみ。復刻版やけど古本市で買ってきた。200円。
かたまりごと読み手をひきつけているから文章書くとき参考になるで」
と親しい者からポンと手渡された。
不気味な黒字のバックに何か怪しげな人物が描かれた表紙には
文庫版 少年探偵 江戸川乱歩(全26巻)から第一巻
とある。
戦前に出回って、戦後もかつては少年そして少女までもが、
むさぼりふけったとは人伝てに聞いていた。
もちろんご存知の方も多いと思う。
ところが私は漫画とか子供向けの童話、読み物にほとんど親しむチャンスが
なかったものだから、この本を差し出されたとき
「うーん? 何でまた、この本を見せてくれるの」
と、クエスチョンマークが頭のなかを二つ、三つほど浮いていた。
少なくとも私が普段読んでいる読書傾向にはないのは明らか。
漫画の禁止から私自身も自ら足かせをはめていたのだろうか。
「純文学以外は時間の無駄」
といったような枠付けをしていたように思う。
全く、あきれたものだった。
今思えばそれがかえって子ども時代に読書が自分の中に
根付かなかった原因かもしれない。

さてこの江戸川乱歩の少年探偵。
少年向けの本格的な物語。
いざ読み始めてみたものの実に困ったことが生じた。
「各段落ごとに読み手をひきつける文章はライティングに役に立つよ」
という言葉によろよろと、よろめいて良かった。
「まァ、だまされたおもて読んでみ」
ということばに、だまされたことに大感謝祭なのだ。

大人になった私自身が読んでも血肉を沸かす奇想天外のストーリーに
つぎはこの次はどうなるのと、「はやる心」を抑えることが難しい。
それにいまでは一般的でない洒落た言い回しが少年文庫なのに
目白押しに登場する。
だから残りページが気にならない。
「ずばり、河童えびせん、やめられない状態」
ということ。

ほんとに意外だった。
今、私が読んでもおもしろい。興味が尽きない。
飽きささない。
にくいほどの妙性がある。
一つの小見出しごとにぐぐっと読み手の胸ぐらを鷲つかむ。
「痛快」
それこそワン・フレーズ、ワン・フレーズごとに
前のめりに次、次せかせるのだ。
この文章の妙は何なのだろうか。

一文を読むと次の文章を読みたくなる。
読まなければ二十面相のからくり、秘密にありつけない。
「ここらで一休みしてまた明日読もか」
とはならない。
時間を忘れて続きを読みたいのが本音。

怪人二十面相の手口の妙。
それを読み解く明智小五郎探偵、小林少年探偵の推理のABCのユニットを
駆使した謎解きあかし。
細かいABCと大きく捕らえるABCユニットの連打。
これって、なんだ、三浦探偵いやまちがいました、三浦店長のライティング論そのもの
ではないか。
しかし私は、残り20ページ程を残して急ブレーキ、読むのをパタンと辞めた。
「やーんぺ」

なんでと思われるだろうか。

読み終えるのが惜しかったし、次に巻号の準備が無い。

続編を図書館でとおもった。
でも待てなかった。
それまでの繋ぎが欲しくて、とりあえず薦めてくれた友と本屋に飛んだ。
はて、いまも乱歩は読まれているのだろうかとの危惧がよぎる。
文庫コーナーを探すも無い、無い、見当たらない。
やっぱりそうか。
無いのか。

「あった、あったよ、見っつけた」
あきらめかけたころ同行の友人が見つけてくれた。
いったい何処にあったと思いますか。
ずばり
「学習漫画」コーナー。
見ると怪盗ルパンが隣に並んでいるコーナーだった。

「そんなばかな」
と、二人、けげんな表情でみあわす。
「それ漫画じゃないやん」
「どこが学習や」
「きっと書店スタッフも小分けの限度があり迷いに迷ってやむを得ず、
ここに置いたのだろう」
まあ、ともかく少年探偵の第二巻は確保できた。
ともかくも当面なりふりかまわず没頭できるものが手に入った。
この安堵感はありがたかった。
この合間にでも図書館で以降の巻号を探そうか。

三浦店主のライティングの要諦がこのシリーズには
実践的に凝縮されていると感じた。
怪人二十面相に変装した三浦店主の実践をしばらくは堪能しようと思う。
  

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2018-08-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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