メディアグランプリ

コンビニのコスパの高いホットコーヒーが、おいしくて、困るんです


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:島津共則(ライティング・ゼミ平日コース)

「あと、ホットコーヒーのLサイズ、ください」
「かしこまりました」

朝、会社に行く前によるコンビニ。

30代の店員さんは、もうぼくの顔を覚えているようです。
彼は、Lサイズの紙コップを、ぼくに渡してくれます。

「ありがとうございます」
と、ぼくは彼に言うのですが、朝のコンビニは忙しい。
彼はもう、次のお客さんの買い物をレジに通しています。

ぼくは、入り口にあるコーヒーメーカーの小さな扉を開きます。
そして、紙コップを置き、扉を閉じ、Lボタンを押します。

困ったことに、
コンビニのホットコーヒーが、最近、どんどんおいしくなっているのです。

どうして困るかというと、
ぼくは、数年前まで喫茶店で働いていて、コーヒー豆の焙煎も、していたのです。

コーヒー豆の焙煎って、面倒なんです。
時間もかかるし、掃除が大変だし、手間もかかる。
そして、めいいっぱいの努力をしたからといって、よい焙煎ができるわけじゃないんです。

気を抜くと、すぐ焦げるし、中まで火が通らないと、えぐみが残っちゃうし。

さらに、あんなに大変なのに、喫茶店のコーヒーは値段が上げにくいんです。

450円。
300ml。

それなのに、コンビニのホットコーヒー、おいしいんです。

150円。
350ml。

困ってるんです。

ぼくのやってきたことや、やってることって(今も、週末には焙煎をします)
何なんだろうって。

スターバックスにも行きます。
でも、そこでは困らないんです。

どうしてかというと、
スターバックスには、隙があるから。
ちゃんと、すみわけをしてくれているのが分かるから、納得できるんです。

どういうことかと言うと、
ぼくは、いつもドリップコーヒーのショートを頼むんですが、
いつも同じように、酸化しているのが分かるんですね。
飲んだ後、胃が焼ける感じ。

でも、それでいいんです。
それで、全然いいんです。

だから、ぼくは、レシートと150円を持って、2杯目のドリップコーヒーをもらいます。
すると、20代のまぶしい笑顔の若者たちが、ぼくに笑顔とコーヒーをくれます。
そして、ぼくは、快適な環境で、パソコンを広げて、集中して仕事ができるんです。

たまにいく、街中の小さな喫茶店。
北海道で焙煎されたコーヒー豆。

やっぱり、そこで淹れられたコーヒーは、いつ行っても、同じようにいい。
800円とか950円とかするんですけど、
いつの間にか2杯目を頼んじゃったりする感じです。

昔の映画のサントラが流れて、照明は暗くて、席も20席ないくらい。

久しぶりに会った知人と行くと、すごくいい。
年に1~2回くらいしか行かないけど、でも、ずっと行くと思うんです。
ぼくにとって、大事な場所になっているんだと思います。

じゃあ、ぼくが休日に焙煎するコーヒーって、
どんな意味があるんだろう?

そう思いませんか?

ぼくは、思います。

効率的でもないし、
時間も使うし。
せっかくの休日の1.5時間が、黙々と作業をして過ぎていく。

そして、よい焙煎ができるとも限らないんです。
むしろ、焦げることの方が多いくらい。

喫茶店で働いていたときは、
ドラム式で強い火力で、安定的に熱を加えられたのですが、
今は、
家庭用コンロの上で、
銀杏を炒る用の、円形の網の手焙煎なんです。

だから、調整が難しくって。
かんたんに焦げちゃいます。

焦げるから、カフェオレにして、ごまかすんです。

「焦げちゃったねー」なんて、軽く娘に説明したりなんかして。

内心、悔しいんですけど。

だから、ぼくが休日に焙煎するコーヒーって、どんな意味があるんだろう?って
最近よく思うんです。

もう、これしかないのかな、っていうのがあって、それは、

ぼくが、ぼくの知っている人に、淹れている。
しかも、よく知っている人たちに。

家族や、ぼくの家に来た人しか
ぼくが焙煎した焦げたコーヒーって、飲めないですから。
(焦げたコーヒーを、わざわざ飲みたい人もあまりいないと思うけど)

もう、この一点しかないんじゃないかなって。

そして、これって、
コンビニでも、スターバックスでも、ぼくにとって大事な喫茶店でも、
できないことで。

ぼくが、ぼくの大事な人に、○○を提供すること。

その○○は、別にもうコーヒーじゃなくても良くて。
でもぼくは、たまたまコーヒーが好きだから。

だから、ぼくは今週末も、焙煎をします。

もし、あなたがぼくの家に来ることがあったら、そのコーヒーを淹れますね。

焦げてるかもしれないけど。
***

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2018-08-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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