洞窟探検
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記事:西垣 有加(ライティング・ゼミ日曜コース)
気が付けば、私は汗だくだった。
額からポタポタと垂れてくるほどの汗をかいていた。
気温は10度、上着があっても少し寒い初冬のような寒さの中である。
私の認識が間違っていたのだろうか。
ここは鍾乳洞、そして鍾乳洞と言えばいわゆる洞窟であり、平たんな山の中にある穴を進んでいくものというのが私の認識だった。
その間違った世界観は簡単に打ち砕かれ、鍾乳洞は山登りだというものに上書きされてしまった。
ただ涼めればいい、そういう軽い気持ちできた鍾乳洞であったが、その期待は見事に外れた。
外の気温は35度、猛暑日である。
鍾乳洞は夏場でも12度ほどにしかならないという。
上着がないと逆に涼むどころか凍えるような環境だと知ったのは、入り口の気温の看板をみた時で、寒いのかと少しがっかりした気持ちで鍾乳洞に入った。
この鍾乳洞には出口が3つある。
第1出口までは平たんで、鍾乳石も美しい見ごたえ抜群の景色が広がっていた。
私は何枚も写真を撮り、美しい自然の造形美を楽しみつつ、洞窟を探検した。軽く疲れはしたが、美しい景色をみればなんてこともない。
第1出口に着いたとき、「足腰の弱い方、自信のない方は第1出口へ」という看板を目にした。
しかし第1出口までの平たんな道、鍾乳石の美しさに魅せられた私に出口を出るという選択肢はなかった。
迷わず、第2、第3出口へ向かう道を進むことにした。
最初は軽く階段を登った。
これが山登りの始まりだとは気づかずに……。
階段を登った先には、コンクリートに囲まれた通路があり、川底の下を進んでいるという解説があった。
川底の下なのかと思えばなんだか涼しげな風景が目に浮かび、殺風景なコンクリートの通路も楽しく歩くことができた。
そしてその通路を抜けた途端に、先がみえない階段が現れた。
ひたすら数十段の階段ではあったが、登り切った私は軽く息切れをしていた。
洞窟探検は続いていく。
少しだけ鍾乳石をみる場所があり、それを過ぎたら階段、また鍾乳石があり、今度は坂道、鍾乳石、階段といった感じに、平たんな道はほぼなく登っていく一方である。
途中私は汗がほんのりでてきて、まるで冬の寒空の下でマラソンをしているような気持ちになった。
爽快感こそあるが、寒さはもうとっくに感じなくなっていた。
それを繰り返すうちに気が付けば第2出口まできていた。
第1出口までにみた美しさはそれほどなく、本当にただ洞窟探検をしたという気持ちであったが、ここまで来たなら最後まで登ろうという思いが強くなり、第3出口に向かうことにした。
第2出口から第3出口までは実に短距離で、あるコースさえ外せばあっという間にゴールだった。
あるコースというのは「探検コース」だ。
探検コースは第2出口からすぐの場所にあり、もう入り口がすでにクライミングではないかというほど急なコースで、私はすぐにあきらめた。
分岐した道を進むとあっという間に、探検コースとの合流地点につき、ちょっと岩山を登るのが探検っぽいという程度であった。
当然鍾乳石が見えたという話は聞いていない。
第3コースはほぼ、階段を登るだけで終わりかと思われたが、最後に少し鍾乳石がたくさんみえるところがあり、そしてなぜか出口の手前には神社があった。
無事に山登りが終わったお礼をして、第3出口に向かった。
いや、そう簡単に出たくない。
すでに汗を拭かないとまずいくらいの暑さの中で、この寒いはずの気温10度の鍾乳洞からでたら確実に35度の猛暑日が待っている。
身体が冷めるのを待ち、第3出口をでた。
そこに現れたのは見知らぬ景色、山の上。
下を見ると果てしなく続く下りの階段通路がみえた。
あれだけ登ったのだから、当然下りなくてはならないのである。
ここからはひたすら階段を下りていく。
途中休憩場所があり、そこで食べた冷やしトマトと、冷やし抹茶は素晴らしく美味しかった。
最初の入り口にでたときには再び汗だくになっていた。
鍾乳洞は涼める冷涼スポットでは決してなかった。
私の認識が間違っていたのだ。
景色は違えど、ほぼ山登りと変わりはない。
鍾乳洞に行く際は、決して涼みにいこうとは思わず、自然が作り出す造形美を楽しむ気持ちで行ってほしい。
洞窟を探検しながら登っていく、その気持ちでいけば、子供から大人まで十分楽しめる素晴らしいスポットであることは間違いはない。
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