24時間戦えない私が働くA社という会社
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記事:チミモン(ライティング・ゼミ朝コース)
「なにか他に質問などありますか?」
「はい。私には子どもが二人いるので定時までは働けません。短時間勤務をお願いしたいです」
2年半前の転職活動、A社面接での最後のやり取りである。
その瞬間、面接官の二人は、
「あー……。うちの会社にはそういう例はないんですよねー…‥」
と言った。
「またか」と私は思った。
履歴書の備考欄に短時間勤務希望と書いているのに、面接でこんな対応をされることは何度もあった。
こうなるとその会社からは断られる。もう慣れっこだった。
ところが数日後、意外なことにA社からは「最終面接に来てください」と連絡があり、最終面接の数週間後に転職が決まった。
肝心の勤務時間については「短時間正社員という制度を作った」とのことで、私はA社初の子持ち・短時間正社員となったのである。
会社に「そういう例」がないだけあって、入社初日からいろんな部署の人に「へぇー、短時間なんだ」といちいち感心され、毎回「お子さんは何人? 何歳? 何時まで働くの?」という質問に答えて回った。
入社数週間後には保育園から会社に連絡が入った。
「チミモンさーん、保育園から電話ー」という呼び出しはフロア中の注目を集め、「こんなふうに毎回電話がかかってくるの?」と上司に言われてしまった。
前職は子育て用の制度が整っており、子育て中の女性が常に複数人いた。短時間勤務も保育園からの呼び出しも「よくあること」と周りが理解してくれていたので、非常に働きやすかった。
A社でも白い目で見られたり嫌みを言われたりすることは全くなかったが、いちいち説明をする必要があったのでやりづらいなとも感じていた。
ところがA社での一年目が終わったとき、前職とA社の大きな違いを目の当たりにした。
短時間で働き、有休も使い果たして欠勤している私が昇級・昇給したのである。
さらに賞与も満額支給されると言うではないか。
期初に立てた目標に対する達成度と会社への貢献度「だけ」で評価をしてくれたのだ。かなりの驚きだった。
前職では、妊娠中や育児中の女性の昇級はなかなか望めなかった。制度は整っていたし周りも理解はしてくれていたが、上層部が「フルに働けない」ことをマイナス評価していることは明白だった。
私はそれを「仕方がない」と飲み込んで、おかしいとも思わずにいた。
一方A社の人事面談では、保育園からの呼び出しに驚いていたあの上司が私の達成度をきちんと評価してくれたし、社長も「もっと上を目指してほしい」「もっと働きやすくするにはどうしたらいいか教えてほしい」と言ってくれた。
制度よりも何よりも、上層部がこんなふうに考えてくれる会社ならやっていけると確信した瞬間だった。
それから数か月後、会社は「在宅勤務」制度の適用を広げた。ちょっとした社内のトラブルを理由に在宅勤務に切り替えたいという社員が現れたためだ。これまで在宅勤務は職種が限定されており、さらに「退職するしかない」くらいの事情がなければ申請できなかった。それが家庭や本人の事情で在宅が可能になったのだ。
加えて在宅制度は「突発」でも取得可能となった。これが私にとっては大変ありがたかった。
「台風による休校」「感染症は治っているが登園禁止期間」など、出社はできないけれど仕事はできるという状況なら在宅勤務ができるようになったのだ。これで有給が減らなくなった。
実は「有休を使い果たす」ということは精神的にかなりの負担だった。子どものために家にいたところで実際は仕事をしている。にもかかわらず休みとしてカウントされる。そして「ああ、今年も人よりこんなに多く休んでしまった」と人知れず落ち込むのだ。
この制度が整えられたことによって、会社への後ろめたさと理不尽感が両方とも解消されたのだった。
当初、この制度はご主人や家族の都合で出勤が難しい女性社員が主に使っていたのだが、しだいに奥さんの出産や子どもの病気を理由に男性社員も活用するようになった。どんな社員も一時的に家族を優先しなければならない状況におかれても滞りなく仕事を続けられるようになった。
弊社、A社の仕事は決して楽ではない。
クライアントからのムチャぶりもあればプレッシャーも大きい。
時には無理もせざるを得ない。
だが、それを理由に「120%働ける人」だけで運営しようとはしない。
今120%で働けている人が、急に70%しか働けなくなることだってある。
逆に今70%しか働けなくても、数年後に120%働けるようになるかもしれない。
その社員の状況に合わせて最大のパフォーマンスを発揮できるようにすることが会社にとって最もメリットがあり、そういう人生の変化を受け入れてこそ多様性・柔軟性のある組織になれると会社が考えているからだ。
「女性は激務に耐えられないから入試の点数を0.8掛けするしかない」
なんて考える人は我が社にはいないのである。
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