メディアグランプリ

「あれあれ」は夫婦円満の証明


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記事:森田晃弘(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
先日、私たちの夫婦間であった会話です。
些細なことだとは思いますが、世間一般ではよく聞く話だとおもいます。
 
「あれあれ、あれって誰やった?」
「え? どんな人?」
「あのちょっと濃い顔の人。そんでちょっと声高い人」
「ああ、あの人ね! 分かる分かる、濃い人やんな。声の高い。あれ? あの人名前何やったっけ?」
 
こういうことがあると人は「ああ……もうそんな年齢なんだな、年を取ったもんだ」とか「物忘れが始まったよ。ショック」と思う方が多いようです。
ですが私は「まだ」なのか「もう」なのかの45歳。妻も43歳。確かに最近老眼が若干出てきたようなきもしますが、まだまだボケる年齢でもないし、そもそも早すぎるでしょ。まさか自分がこの年でこんな会話をすることになるとは思いもよりませんでした。
 
その後も二人で
「あれあれって何やねん」
「あれはあの人やんか」
「そうそう、あの人やん」
と、この時も暗くなることもなく二人で「年寄りかっ!」と大爆笑。
 
「言葉が出ない」「名前が思い出せない」「物忘れがひどい」流石にここまではありませんが、名前がすぐに思い出せないことは確かに多い気がします。40代で? 嘘でしょ? 若年性認知症? それはやばい……確かに思い出しにくくなっているとは思うんですが、実はそんなことより、私自身も驚きだったんですが「あれあれ」で通じることがかなり楽しかったんですね。
 
そこで改めて考えてみました。もちろん色々な情報があって、その中から判断して考えているんですが、私たち夫婦間の「あれあれ」は結果的に確実に同じものを指していました。しかもその時にあった情報は「ちょっと顔の濃い人」「ちょっと声の高い人」それだけです。そこで私は不思議に思ったんです。
なぜこんなに少ない情報でお互いに同じ人を理解できたのか?
普通は「あれ」という代名詞だけでお互いに理解しあえることはありません。
ということは「あれあれ」と言いながらも、お互いがそれ以外の情報を共有していた可能性があります。
特に私たち夫婦は自営業ですので、ひょっとしたらサラリーマンのご家庭よりも一緒にいる時間が長いかもしれません。同じテレビを見て、同じ新聞を読み、そこそこいい感じで同じ空間にいる。ひょっとしたら私だけが楽しく感じているだけで、妻は「メッチャ我慢してくれている」だけかもしれませんが。ですが少なくとも今はいい関係を続けているんじゃないかと思います。これはひとえに私たち夫婦がそれだけ同じ時間を似た様な価値観の中で共有してきたからだという事ではないでしょうか。
 
当たり前ですが、元々価値観が違う人間同士です。更に当たり前ですが親も違えば住んでいた場所も違う。友達も違えば学校も違う。好きなものも違う。本来、価値観が違う人同士がちょっと同じ経験をしたところで、感じることは全く変わってきます。Aという情報を見て、私は「面白い」と感じ、妻は「つまらない」と感じていれば、おそらく「A」の面白いと思える情報をちょっとだけ伝えて私が「あれあれ、あの面白い人!」と言っていても妻は妻の中の「別の面白い人」を探すでしょうし、まったく伝わりません。そんな全く違う二人が、ある期間、同じ空間で過ごすことで「あれ」という一言でお互いに通じ合える関係になれた訳です。
 
ご存知でしょうか? 世界の人口は73億人です。ということは73億通りの環境の違いがあり、性格の違いがあり、捉え方の違いがあります。そんな73億人の中の2人の関係性の中で、結局その時は名前が出てこなかったけど、お互いに同じ人だと理解しあえている状態。これが結婚して15年目に初めて起こった奇跡です。これは「物忘れ」というネガティブな言葉で片付けてしまってもいいのですが、むしろポジティブな言葉で表すべきじゃないでしょうか。
 
そこで私はこの「あれあれ」問題をこう呼ぶことにしました。
「夫婦円満の証明」であると。
 
私たち夫婦はこれから徐々に「あれあれ」という事が増えていくのかもしれません。
それでも私たちにとってそれは少しもネガティブな意味ではなく、むしろポジティブな証明です。
そしてこれからもそのたびに大爆笑して過ごしていきたいものです。皆様もお互いにわかっているのに「あれあれ!」となったときは「やばいな、ボケ始めたか……」 とか「ボケないように脳に良い食べ物でも食べようか」 とか思わずに「これで通じるという事はそれだけいい関係を作ってこれたんだな」 「これは夫婦円満の証明なんだな」 と感じて、もっと今この瞬間を楽しく生きてみてはいかがでしょうか?
 
ちなみに皆様は、ちょっと声の高い、ちょっと濃い顔の人といえばだれを思い出しますか?
今回、私たち夫婦間で「あれあれ」問題になった人の正体は俳優の北村一輝さんでした。

 
 
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2018-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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