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メディアグランプリ

本は糸


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:かず(ライティング・ゼミ 日曜コース)

 
 
読書好きが高じて、住んでいる地域で「読書会」なるものを立ち上げた。とりあえず、Facebookページを作り、参加者を募集した。といっても、ただFacebookページを作るだけでは人は集まらないため、事前に以前知り合った本好きそうな方々に参加要請をした。
 
記念すべき第1回目の参加者は、僕を除いて2名。合計3名。非常に少人数だ。でも、僕が主宰して、かっこよく言うとファシリテーター的な役割を果たさねばならないので、少々ドキドキした。土曜日の朝の10時から一人が持ってきた2冊の本について、ゆるく語り合った。
 
「この小説のココがいい」「この著者は他にもこんなジャンルの本を書いている」「彼の経歴がおもしろい」「ビジネス書を読んで、こんなことを実践しようと思う」
 
みんな話したいんだなと思った。本について、人生について。本の紹介を通じて、その人のキャラクターも見えてくる。その後は、みんなでランチに行き、その続きを話し合った。終われば13時、まだ半日ある。有意義な土曜日の過ごし方である。
 
それからも月に1回読書会を開催し続けた。6名が定員だったが、だいたい4名〜6名が参加。初めて参加の方が半分くらいの会も多くあり、交流の機会ともなっている。みんなよく喋る。普段会社で働いているときはこんなことは話さないから、こういう場で話したい願望を叶えているのだろうと想像した。
 
30回目以降は、私が転職をして、東京に引っ越したため、次の方に運営をバトンタッチした。50回目を迎えようとしている。
 
最初に参加してくれた2名のうちの1名、Kさんは、50回のうち、ほぼ毎回参加。フリーランスのITエンジニアである彼は、小説が好きで、小説を通じて人の内面に迫るコメントをする。原田マハさんの本をよく持ってくる。犬好きで、犬の写真集もたまに持ってくる。聞くところによると、仕事は超多忙。でも、この場にだけは毎回楽しみにしていて、参加してくれるのだ。
 
私が転職をしてからは、彼とはご無沙汰になっていたが、1度地元に帰るタイミングで、次の方が主宰する回に参加した。その後に、一緒に飲みに行った。彼とお酒を交えて話すのは、初めてだった。次は彼の好きなウイスキーをジャズバーで飲み行こうと。
 
そんな彼が、亡くなった。
 
彼が亡くなったのを知ったのは、生前、事前に書いていた文章を家族の方が投稿をしたFacebook上だった。重い病気に冒されていたという。そこには軽いテイストで、「何も言わずにごめんなさい」と書かれていた。その投稿を見たとき、私は、泣いた。
 
彼とは読書会ではないところに知り合い、読書会に誘い、ずっと参加してくれた。読書会の彼の持ってくる本を通じて、彼の優しさや力強さに触れて、内面を深く知ることができた。別に読書会でなくたって、彼を知ることができたはず。でも、読書会だからこそ、もっと深く味のある彼を知ることができたのだ。
 
その時、読書会という場になくてはならないものの一つである、本の魔力に気づいた。本、それ自体は紙だが、内容がある。人の人生がわかる、知識が得られる、元気を沸かせる、そして人と人を繋げる糸のようなものでもある。読み手さえの内面をも明かしてくれる時さえあるのだ。
 
Webニュース、SNSの発達や動画コンテンツの充実で、本の存在価値が危ぶまれるようになってから久しい。でも、本は無くならないと思う。なぜなら、本はコンテンツだからだ。何かを訴えるために、本は存在する。本を通じて、感じたり、行動に移したり、自分の中の新たな感情を発見したり、ここでは挙げられないくらいの要素がある。
 
だから、媒体は変われど、本という形態は無くならない。むしろ、本の重要性が増すのではないかと思う。それは、本は先ほど述べた要素以上の価値を発揮するから。というのは、本は人と人をつなげる糸の役割を果たすからだ。
 
私は本を通じて、Kさんの内面を知った。本を通じて、読書会の仲間が集まってきた。そこから派生して、他のつながりもできた。飲みにも行く。複数名が共通の本を読んでいれば、その本が話の土台になるだろう。
 
糸としての本は、これからも生き続ける。Kさんはきっと、天国でも小説を読んでいるはず。あの笑顔で自分の好きな小説について語っていることを想像する。 もしかしたら、この話をここで書いていること自体喜んでくれているのかもしれない。
 
本がなければ、糸はできない。だから、今度は私が糸としての本を発信する側になりたい。考えていることや蓄積していることをうまく文章に表して、正確に伝えたい。自分のコンテンツを発信し、糸としての役割が果たせるように、文章を書きたい。自分の書いた文章、延いては本がどこかの読書会で話題にされることを夢見て。

 
 
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2018-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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