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ロリータ服もライダーも魂は同じなのかもしれない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:いづやん(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「あ、かわいいな」
 
テレビを見ていたら、フリフリで装飾が過剰な服を着た女の子の映像が流れて、そんな言葉が口をついて出た。
 
いわゆるロリータファッション。下妻物語で深田恭子がしていた格好だな、なんて何気なくテレビ画面を見続けていた。
 
少女的な志向で盛りに盛られた装飾に、目を引く色。
 
テレビの向こうのレポーターは、ショップの人が服を見せながらの説明にいちいち過剰な反応をしていた。
 
お姫様のように可愛い甘ロリは鉄板だ。ロリータファッションの代名詞と言ってもいい。黒がメインのゴスロリも雰囲気と世界観がいい。クラシックロリータの落ち着いたお嬢様のような出で立ちは少し離れたところから眺めていたい気品がある。ショップの人の丁寧なカテゴリー説明が続く。
 
「甘ロリはやっぱりいいけど、クラシックロリータも捨てがたいな」
 
僕の独り言がそれに続く。僕はロリータファッション全般がわりと好きだった。もっとあちこちで見かけるようになればいいのに。
 
テレビに映る服をしっかりチェックしながら、僕はなぜだか腹が立ち始めていた。このレポーターの無神経さはなんなのだろう。
 
好みのものが画面に映っているのに腹が立ってくる感じ、どこかで似たようなことがあったな。どこだったっけ。
 
そうだ、バイクだ。バイクいいよね、と言われはするけど、風の気持ちよさや全身を使って乗りこなす時間、見知らぬ場所の中で、観光地でもないのに目がさめるような景色に出会ったときの感動、を言葉で相手にうまく伝えられた試しがない。
 
どのジャンルでもそうだが、人とはちょっと違う趣味は簡単には理解されないし、その本当の良さの説明も難しい。
 
ロリータファッションもバイクも、メインストリームからは少し外れた趣味嗜好で、時に「ロリータとは」「ライダーとは」なんて心構えの話になってきてしまうから他人への説明が難しい。そこまで話を広げると「老害」なんて言われてしまったりするし。
 
だいたい、外から見たらロリータファッションもバイクも、中のカテゴリー分けからしてわけがわからないな。
 
そのバイクがネイキッドなのか、アメリカンなのか、スーパースポーツなのかは、知らない人にとってはどうでもいいことだろう。残念ながら。甘ロリもゴスロリもクラロリも、みんな違っててみんないいのに!
 
……なるほど、さっきのレポーターのリアクションも多少なりとも理解できる気がしてきた。
 
「へえ、いいな、ちょっとやってみようかな」とその人に言わせられるかが、そのジャンルの生き死にがかかっている! 頑張れショップの人! とテレビを見ながら勝手にエールを送り始める自分がいた。
 
バイクも乗りさえすれば、ロリータファッションも着てみさえすれば、きっとその良さがわかるのにと思う。自分は男なのでロリータファッションは着ないけど。
 
ごめん、嘘をついた。一度だけ、しかも人前で着たことがある。
 
自分で主催したオタク系イベントで、参加者の服装は自由(コスプレも含めて)にした。せっかくなので僕も憧れのあるロリータファッションの衣装を知人から借りて着てみた。
 
甘ロリのジャンルでは1、2を争う有名なブランドの衣装で、全身のお値段を聞くと普段僕が着ている服の数倍もした。しっかりした生地に縫製、随所に使われたリボンやフリルに女子でもないのに心が浮き立ったのはよく覚えている。
 
着てみると(もちろんウィッグもかぶり)、自分が細身ということもあって案外悪くない。
 
「かわいー!」とイベントに参加していた友人たち、特に女性からのお褒めの言葉もいただいた。お世辞であっても気持ちが良かった。
 
鏡で見てみると不思議と背筋がすっと伸び、動作も普段よりたおやかになろうとしさえした。褒め言葉と鏡の向こうの姿に、心はすでに「ロリータであろう」としていたのだ。
 
思えばこれを僕に貸した知人は、この辺のハマり具合を見抜いていたのに違いない。
 
「こいつは沼に引き込める」と。
 
好きになりどんどんハマり抜け出せなくなる「沼」は恐ろしい。僕は男だったのでかろうじてこのロリータ沼にはハマらずに済んだわけだが、もし女性だったらイベントの帰りにショップに寄って、ワンピースの一着でも買っていただろう。それくらいの体験だった。
 
僕の大事な趣味であるバイクも初めに勧めてくれた友人たちがいた。
 
彼らは少し尻込みする僕に「これ貸してあげるから乗ってみて」「次はそれ乗ってキャンプ行こう」「こんなバイクも楽しいよ、乗ってみる?」と少しずつ少しずつ「沼」に引きずり込んでいった。
 
いや、違うな。そこに「沼」は見えているのに自分で入っていったのだ。ホンダのモンキーを数年乗って、もっと遠くに行きたくなって気がつけば大型免許を取り、900ccのバイクに乗っている。
 
ロリータファッションとバイク、どっちも体験できるのは「非日常」「いつもと違った自分」だ。
 
どちらも人とちょっと違った趣味で、やってない人には理解されづらい部分があると考えても根本は同じ、とさえ言えるのではないか。こんなこと言うと、両方のファンから石を投げられそうだけど。
 
さて、今週末もカッコいいライダー(になったつもりで)、どこに走りに行こうかな。それとも未練たらしくロリータブランドのショップを遠目から眺めに行こうか。

 
 
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2018-09-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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