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今を生きろ! ヘトヘトな自分が教えてくれたこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:なつむ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
小高い丘を走り始めて、20分強、もうすぐ、2キロ。今日は、最低7キロを走ろうと決めて家を出た。
まだたったの2キロ。それでももう、息は上がっている。
 
走っておいて言うのも何だが、私は、走るのが好きではない。
息が上がって苦しい感じが、とても苦手だ。
それと、なぜだか、精神的に追い詰められるような気持ちがして、しんどい。
 
颯爽と走ることができないので、そういう自分を誰かに見られるのも、(ただの自意識過剰だとわかっていても、)なんだか居心地が悪くて嫌だ。
 
そういう意味では、今走っている、森の中の公園は良い。
ランナーや散歩の人や家族連れで溢れている河川敷に比べると、ここでのプチ・トレイルランは、人が圧倒的に少ない。
 
森の公園は、自然も色濃い。
セミが鳴いていて、草むらを走るとバッタやイナゴが慌てて逃げていく。
ハチの羽音も、はじめは怖かったが襲われることはなさそうだとわかると平気になった。
日によって、アゲハチョウがひらひらすることもあるし、トカゲや、蛇を見かけることもある。
 
そんな、気持ち良い環境の中でも、走るというのは、しんどい行為だ。
 
走っていると、いろんなことを、考える。
考えるというよりは、勝手に浮かんでくるというのに近い。
 
よく、「走るときは走ることに集中しましょう」と、言われる。
とはいえ、現代、日々の生活の中でなんだかんだと気になることはある。
一人で、音楽もかけずに走り出すと(正確に言うと、今日はイヤホンを忘れてきてしまったのだ)、ついつい、頭の中で、ごちゃごちゃと、一人会議が始まる。
考えちゃダメ、集中しなさい、と、強制的に禁止するような言い方をしたところで、心はあまり、言うことを聞かない。
平地を走るのに比べると、アップダウンがあって足元は不安定なので、何かを考えながらだとしても、足元だけは不思議とちゃんと見て走っている。
怪我をしてはならないということを肝に銘じているので、それは、わかっているらしい。
 
走っていてすでに「しんどい」からなのか。
ごちゃごちゃとした頭の中の一人会議は、比較的、「良くない」内容が多い。
うまく行かなかった過去の記憶、うまくいかないかもしれない未来。そういうものがぐるぐるする。
 
だんだん、イライラ、悶々と、してくる。
一人で走って、自分でしんどいことをして、勝手に脳内で盛り上がった末に、ひとりでに不機嫌になっているのだから、迷惑この上ないが、ある意味、いつものパターンなのだ。
どこを走っても、脳内がそんなに楽しいことになった記憶がない。
 
単純に走ることで「いい思いをしたことがない」のかもしれない。
子供の頃、持久走は大の苦手で、大嫌いだった。
高校くらいで少し体力がつくと、そんなに嫌いでもなかった時期もあったが、その頃どんなことを考えて走っていたのか、覚えていない。
何か、私にとって、走るしんどさは、自分の中で、それ以外の、走ることとは無関係のマイナスな感情も、いろいろ呼び起こしてしまうらしかった。
 
距離はようやく4キロ。今日走ると決めた7キロまではあとまだ半分近く残っている。
決めていた休憩のポイントで、一度足を止めて、頭の中の、自分のもやもやを吐き出すように、大きく息を吐いた。
いつもながら、しんどい。
 
いつもは3~4キロで終わりにすることも多い。
その距離はもう、走り終わったことになる。
それは少し自分に自信を与えた。
 
他方で、その分、疲労が溜まっているのも、事実だった。
休憩を終えて走り始めたとき、やはり、体が重く感じた。
 
5キロをすぎる頃には、疲れは、徐々に、しかし確実に、溜まっていった。
さっき走ったのと同じところを走っているが、足取りが、重い。
息が上がる。
自分の数メートル前の地面周辺しか、ちゃんと見えていない。
上りは走れない。歩く。普通に歩くのもできない。
手を膝について、一歩一歩、膝を手で押して、なんとか、前へ。
もう、ヘトヘトだ。
 
そのうち、頭の中が真っ白になった。
疲れてきて、余計なことを考えられなくなったのだろう。
 
頭の中が真っ白なまま、目の前の風景と地面だけを見て、私は、走り続けた。
……。
……。
……。
どのくらいの時間だったのか、わからない。
 
気がつくと、走った距離は、6.5キロを迎えようとしていた。
その時、なんだか不思議なのだが、「走っていることが辛くない」と、感じた。
空っぽになった頭の中で、感覚として、”幸せ”に近いような、ふんわりした感じがあった。
 
走る足取りや、軽く握った手に、自分でもよくわからないけれど、力強さがあった。
力が、”戻ってきた”のではない。走り出しの状態よりも、上なのだ。
間違いなく、今日、一番の走りができている。
フォームを見たわけでもないけれど、そう、確信できる、感覚だった。
 
頭の中の過去への後悔も未来への不安も、そこから生まれた鬱々とした気分も、完全に消し飛んでいた。
その時、一つだけ、頭の中に浮かんだこと。
 
「あ、今、今を生きている、気がする」
 
その感覚は、少しすると徐々に現実に戻ってきて、やっぱりしんどいと思ったけれど、結局、私はその後、目標の距離を超えて、8キロ近くを走った。
 
スポーツに詳しい人は、ランナーズハイとか、フロー状態とか、ゾーンに入るとか、そしてそれがどういうことなのか、きっと詳しく教えてくれるのだろうと思う。
今の私にはそういう知識はない。
 
でも、ヘトヘトになった自分の向こうに、未来や過去にとらわれずに「今を生きる」感じがあった、その感覚は、今後もまた走るであろう、自分の大きな光になっている。
 
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2018-09-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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