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大人のサンプル


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:森脇 千晴(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「わたしはポンっと生まれました」
「わたしはとてもワクワクしていました」
 
お気に入りのぬいぐるみ達をソファに座らせ、自分のエコー写真を見せながら、彼女は語っている。
「彼女」とは5歳になる私の姪。
体内記憶を持って生まれてくる子どもがいると聞いたことがある。
「お空から見ていて、ママが1番可愛かったから、この人のところに行こうって決めたん
だよ!」とか、そんなスイートな事を突然言い出したりするそうだ。
姪に体内記憶があるのかどうかは分からない。
仮にもし、そのような記憶があるとすれば、「わたしはポンっと生まれました」というのは帝王切開で生まれたときのことを言っているのか?
ワクワクしながら生まれてきたのか! それは何よりだ!
私は横で聞きながら、そんなことを思っていた。
 
私にとっては初めての姪である。
「はちみつとクローバー」という少女漫画の主人公と同じ「はぐみ」という名前がつく予定だった。
漫画と同じように「はぐちゃん」と呼ぼう。
初めてオーストラリアに短期留学した際、ぎゅっと抱きしめ合うハグ文化に感動した私は、「はぐみ」という名前に大賛成だった。
そんな「はぐちゃん」の誕生を心待ちにしていたのだが、生まれる直前に突然名前を変更するという知らせが届いた。
「なんかお菓子の名前みたい……」と、どこぞの誰かから言われた弟が、あっさり、この名前を却下したのである。
そのような経緯もあり、生まれてきた赤ちゃんには、なかなか名前がつかなかった。
ようやく赤ちゃんについた名前。
それは偶然にも? 漢字もそのまま、密かに私が自分の子どもにつけたいと思っていた名前だった。
 
「ねえねえ、わたしがうまれたとき、嬉しかった?」
もうすでに答えを知っているというのに、彼女は自分が生まれた日のことを聞きたがる。
「嬉しくて、嬉しくて、泣きながら1人でワインを1本開けたのよー」と私は、いつも通り答える。
「ふふふ」と嬉しそうに笑う姪。
1人でワイン1本開けてしまうくらいの喜びと感動が伝わり切らないのが、私はいつも少しだけ残念だ。
 
そんな彼女も5歳になり、とても口が達者になった。
直接教えた訳でもないのに私の大好物がビールだということは、しっかり頭に入っているようで、「ビールばっかり飲んでると太るよ!」とか「男に嫌われるよ!」とドキッとするようなことを言ってきたりする。
一応、一つずつ反論を試みてみる。
「太る=だめと考えるのは、いかがなものかしら?」
「私の経験上、少しくらいお酒が飲めた方が男にモテる気がするのだけど」
「また始まった……」と言わんばかりに周りの大人たちは、呆れた顔でその会話を聞いている。
 
彼女の目に私はどんな風にうつっているのだろう?
お酒が大好きで、「○○さんのことが大好きー」と好きな人の話をし、基本いつもダラダラしている。(時々、ダラダラ虫と呼ばれる)
何か聞かれて「べつに」と答えようものなら、「ちゃんと考えて」と変なところに厳しい。
一緒にお風呂に入ったときには、熱心にお股の洗い方をレクチャーしてくる。
……ああ、結構ウザい存在かもしれない。
 
私と同じように、私の叔母にも子どもがいない。
叔母にとっても私は初めての姪。
アラフォーになっても毎年欠かさず誕生日プレゼントをくれるので、やんわりと断ったことがあるが、「初めての姪だから特別な存在なの」と恥ずかし気もなく堂々とした愛情表現で返された。
「仕事は?」「結婚は?」「出産するなら、もうタイムリミットが……」などと、もはや、両親ですら聞いてこないことまで、色々と気を揉んでくる叔母。
姪が生まれたとき、自分もこの叔母と同じようなことをするのだろうなと思った。
今では「特別な存在」の意味も分かるし、叔母が注いでくれる愛情も、なんとなく自分の理想を姪にのせてしまいがちな所も理解出来るようになったのだけれど。
 
「自分の子どもが欲しくならないの?」と聞かれることがたまにあるが、正直なところ、もう自分の子どもじゃなくてもいいような気がしてきている。
自分の姪や甥に限らず、友人たちの子どもとも割と仲良くやれていると自負しているが、私は自分が元気なときしか子どもとは遊ばないし、適度にしかお世話もしない。
そんな、ずるい立ち位置なりに、ほんの少しだけ気をつけていることがある。
それは、妥協や遠慮を抜きにして、出来る限り対等に話し、そのままの私で彼らと接するということ。
たとえ、自分の子どもでなくても、私たち大人は、子どもたちに対してもっと色んな役割を担っていいはずだ。
最近そんなことを思う。
自分が子どものときに、もっと色んな大人を見てみたかったなと思うことがある。
未来を描くとき、サンプルは多い方がいい。
「お母さんとは、ちょっと違うけど、こんな大人もいるのか」
そんな身近な大人のサンプルの1人でいれたらいいなと密かに思っている。

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2018-09-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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