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ミライの教室


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【9月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
記事:千葉美紀(ライティング・ゼミ平日コース)
 

息子は中学二年生だ。思春期? 中二病? ガラスのハートではない。でもなんか、扱いづらいな、めんどーなこと言ってるな、と感じることもある。
 

反抗期は終わったようだ。小学六年生の時が、一番ひどかったみたいだ。他人事のようだが、一番の反抗対象は、クラス担任の先生だったのだ。わたしより年上の女性の先生だった。子供扱いしてくるのが、気に入らないという。だって、子供じゃん。そう思ったけど、「適当に流せばいいよ。無視すれば」とわたしは言った。どうしたって、人の合う、合わないってあるものだ。例え相手が先生だって。小六で、そんなことが学べるなんて、良かったじゃないか。
 

仕事中に、その先生から電話があった。
「もう帰る、と言って、教科書を投げつけて帰ってしまったんです」
グループごとに発表する授業で、発表する順番について、先生とひと悶着あったという。発表が終わり、授業が終わったところで、帰宅したそうだ。教科書を床に叩きつけ、ランドセルを背負って。
 

結局、他の先生が迎えに来てくれて、学校に戻った。小学校は、一年間、同じクラスメイト、同じ先生で過ごす、狭い世界だ。一年生から五年生まで、楽しく通っていたのに、先生が変わっただけで、こんな風になるんだな、と残念だった。それと同時に、同じクラスの子供達に申し訳ないな、とも思った。先生は別に悪人じゃない。一人、反抗する子がいたら、雰囲気も悪くなっちゃうよね。
 

「あの突然帰っちゃった子のお母さん? 思春期、思春期。うちもなに考えてるのか、全然わかんないよ」
ある時、授業参観後の懇談会で、あまり面識のないお母さんから声を掛けてもらって、ほっとした。でも、担任の先生は、「反抗する子と戦っても仕方ないから、本気で注意したりはしません」という話をしていた。たくさんの扱いが難しい子供を見てきた答えなのだろうか。めんどうな子は何か話しにくいメッセージを抱えていて、おとなしい子は何かを隠しているかもしれない。家庭で問題を解決できれば良いけれど、子供が長い時間を過ごすのは学校だ。息子には、先生が嫌なら無視すればって言ったけど、先生も似たような意見だった?
 

そんな小学校生活も終わりに近づいた、二月後半。野球の試合中、息子の手にファールボールが当たった。硬式のボールだ。右手の指を支える中支骨が一本折れた。痛がりはしたが、その後は飄々と過ごしていた。野球チームでは、左手でできるお手伝いをした。学校にも普通に通っていたが、書く作業が免除され、少し楽だったようだ。
 

ある日、また先生から電話がきた。
「卒業文集の記事は、どうしましょうか?」
自分年表と小学校の思い出、二つの記事を子供達が自分で書くことになっている。
「お友達に書いてもらうか、私が書いてもいいんですけど……」
口述筆記の提案だ。先生に書いてもらうのは、無いな。なんとなく、そう思ったが、後は本人の意見だ。
 

「先生から電話がきたよ。卒業文集はどうするの?」
友達に頼もうかな、と息子は言った。パソコンでやってみたら? とわたしは勧めた。友達に書いてもらうのもまた、思い出になるかもしれないが、自分の手でやった方が良いと思ったのだ。ワープロで打った文字は、味気ないだろうか?
 

 学校から、パソコン使用の許可が出た。記事の枠を作ってあげて、内容は自分でキーボードを打たせた。「ダリい。書くことない」など、文句を垂れながら、二つの記事を完成させた。やり遂げた感動は、特になかったようだが、自分で出来ることは自分でやってほしい、と思っていたわたしは満足だった。
 

息子の折れた骨はくっつかず、包帯を巻いたまま、卒業式を迎えた。威風堂々の曲にのって、卒業生が入場してくる。こういう時の感動は、嬉しいでも、寂しいでも、悲しいでもなく、涙が出てくる。息子は笑顔だった。ちょっと涙をこらえているようにも、見えたけど。
 

右手の包帯のせいで、卒業証書の受取りはぎこちなかったけど、無事に小学校を卒業できた。最後に担任の先生に、お世話になった挨拶をした。いろいろご迷惑をかけて、すみませんでした、と頭を下げてきた。息子はただ笑顔だった。解放、って感じ?
 

卒業文集には、ワードで作った記事がちゃんと載っていた。クラスで取ったアンケート結果など、楽しげな記事もある。面白い人ランキングの上の方に、息子の名前を見つけて、ほっとした。反抗してばかりの嫌な子じゃなかったみたい。
 

そんな反抗期を終え、中二になった息子が、友達が通っている塾に行きたいと言い出した。絶対に遊ぶのが目的だ。
「タブレットに先生が出てきて、教えてくれるんだって」
最近の塾はハイテクだな、と感心した。学校も、生身の先生じゃなくて良いんじゃない? 決まった内容を教えるだけなら、ペッパー君でも十分できる。そうすれば、忙しい先生にも、子供と向き合う余裕が生まれる。先生だって、気難しそうな教頭や校長に囲まれて、子供より面倒なモンスターペアレントが出現したりして、大変なんだ。
 

授業や難しい親御さんの対応は、ロボットやAIに任せちゃおう。先生にとっても、子供にとっても、より楽しい教室が早く実現しますように。
 
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2018-09-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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