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あなたの本棚が見たい


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【9月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
記事:森脇 千晴(ライティング・ゼミ平日コース)
 

「おお! 女子って感じ!」
部屋を訪れた人に時々こう言われる。
部屋の何が「女子」なのかと言えば、本棚だ。
実は自覚がある。
理数系の難しそうなタイトルの本はほぼ皆無、女性作家の作品が多く並ぶ。
我ながら、文学部らしい女子っぽい本棚だと思う。
 

小さい頃から本が好きだった。
沢山読んできたが、ほとんど内容を覚えていない。
そのことがコンプレックスだったりするのだが、そんな私に読む楽しさを教えてくれた友人がいる。
読むことに加え、書くことでも繋がった人だと勝手に思っている。
私達はアルバイト先で知り合った。
ある日突然、バイトの休憩中に芸術大学の文芸学科に通っていた彼女から「卒業制作のために書いている小説を読んで欲しい」と頼まれた。
何故、私に頼む?
少し不思議に思ったが、それでも嬉しかったのを覚えている。
卒業がかかっている彼女の小説に、素人なりに少しドキドキしながら感想を伝えてから15年が経とうとしている。
国語の教師を目指していた彼女。
1度も2人で遊びに行くこともなく、大学卒業後、私達は離れ離れになった。
言ってみれば、いつ疎遠になってもおかしくない関係。
あるとき私は彼女に1通の手紙を書いた。
電話でもなく、メールでもなく、手紙。
でも、1番しっくり来るやり方だった。
内容はただの近況報告だったはず。
しかし、そこから、15年近く、私達は手紙のやりとりを続けている。
さぞかし遠い距離に住んでいるのだろうと思われるかもしれないが、実は電車で1時間以内のところに住んでいて、時々、一緒に食事したりもする。
それでも別れ際には「じゃあ、また手紙書くね」と言って別れるのだ。
この15年の間にLINEやメッセンジャーが普及した。
そんな中で、私達は82円分のパーソナルな出来事を手紙にしたため、想いを文字にのせ、交換し続けることで、関係を続けてきたとも言える。
 

この夏、久しぶりに彼女とご飯を食べたときのこと。
「この前、自分の本棚を紹介しようっていう授業をしたんだけど」と彼女。
今ではちょっとベテランの風格が出てきた現役の国語教師だ。
「本棚を紹介するって、どういうこと??」と私は聞く。
授業の内容はこうだ。
自分の本棚に何の本を置きたいか? を考え、その本棚にタイトルをつける。
それをクラスで発表するというものらしい。
 

「例えば、私の場合」と彼女が話し始めた。
谷川俊太郎の「すき好きノート」という本がある。
一番好きな人は誰ですか。
好きな年齢は?
これまでの人生で一番戻ってみたい過去の瞬間は?
など、いくつか質問が書いてあり、答えが書き込めるスペースが作られている。
「死ぬ前に読み返したい本棚」。
ここに、彼女は「すき好きノート」を入れるのだと言う。
(私の誕生日にも、この本をプレゼントしてくれた。)
 

「人の家に行ったら、まず本棚を見ちゃうんだよなあ」と言っていた人のことを思い出す。
その気持ち、すごく分かるんだけど……皆さんに聞きたい。
自分の本棚を見られることに抵抗はありませんか?
自分の趣味とか興味・関心事、それに悩み、夢まで!
なんだか全部見透かされそうな気がするのは私の自意識のせいだろうか。
 

しかし、友人の話を聞き、そんな自意識を飛び越えて、私も自分の本棚にタイトルを付けて紹介してみたくなった。
選んだのは以下の4冊である。
 

「蝶々喃々」(小川糸、ポプラ社)
「お節の残りの黒豆をヨーグルトに混ぜて食べていると……」と1ページ目から美味しそうな描写が始まるのだが、いちいち主人公の女子力が高い。(なんせ日常的に着物を着ている)
食事デートのシーンも、大人っぽくてドキドキする。
 

「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」(江國香織、集英社文庫)
「赤ワインとシュウマイって、なんでこんなに合うのかしら」
登場人物から、こんな素敵な組み合わせを教えてもらえた1冊。
日常の何気ないところが丁寧に書かれているところが好き。
江國香織は、そんな「細部」を書く天才だと思っている。
 

「きのう何食べた?」(よしながふみ、講談社)
同棲中のゲイカップルが毎日ごはんを作って一緒に食べる。
「作って食べる」の繰り返しのみ。
心がおなかいっぱいになって満たされる漫画。
 

「Lily―日々のカケラ―」(石田ゆり子、文藝春秋)
女優、石田ゆり子の紡ぐ文章はとても誠実で、優しく強い。
彼女の暮らしが垣間見れる写真も沢山載っているのがファンとしては嬉しい。
美しいものが見たくなったときに開く本。

 
 

さて、これらの本の共通点。
なんとなくお気づきの人もいるかもしれない。
日々のごはん。 大切な人との時間。 お酒。 
やることに追われて、心に余裕が足りないと感じるときに読みたくなる本を選んだ。
何故だか、ごはんやお酒の描写が多い本に惹かれる。
この4冊が入っているのは「丁寧に暮らしたくなる本棚」だ。
これを読んだあと、私は、ごはんを作ったり、部屋を片付けたり、花を買いに行ったりするだろう。
そのあと、私が望む幸せは、日常の中にあるんだってことを再確認するのだ。
読書も、私の日常にある幸せのひとつ。
ああ……1日中、家に籠ってこの4冊を読み直したい……!
今、そんな情動に駆られている。
 
***

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2018-09-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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