一流ライターは、変態だ。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【9月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:河野裕美子(ライティング・ゼミ平日コース)
「苦しいのに、楽しいんですよ。変態なのかな、俺」
今期のドラマで、登場人物が言ったセリフである。
そして彼は、「やるぞー」と新しい仕事に熱中するのだ。
……思い当たる。そんな人たち、次々に思い浮かぶぞ。
壁一面に貼られた付箋。
巨大な魚のウロコにも見えるその光景に、思わず身の毛もよだった。
とあるコピーライターの仕事風景だった。
ウロコに見えた、小さなメモ帳サイズの付箋には、コピーが一文ずつ記されている。
有名なコピーを生み出すまでの道のりを、映像を使って説明した、コピーライティング講座での一場面でのことだ。
しかも、その有名なコピーは、こんなウロコを作る前から、メモの段階で思いついていたものだったそうだ。
結構いいコピーが思いついていたのに、さらにいいコピーがないものかと、どんどん付箋を増やしていき、とうとう壁が足りなくなったのだ。
「コピーって、どうやって作ってるのかな」と気軽にこの講座に参加してしまった私は、その付箋のウロコを持つ巨大魚に襲われるような感覚がして、膝に置いた手を、ぎゅっと握り締めていた。
ひょっとして、とんでもない世界なのでは?
NHKの朝ドラ「半分、青い」の脚本家、北川悦吏子さんは、この脚本を執筆中に2回も入院したそうである。
漫画家の西原理恵子さんの元旦那さんは、西原さんの執筆風景を見て、あまりの地獄の形相に恐怖を覚えたそうである。
かの太宰治は、言わずと知れた「人間失格」である。
もしかして、「ライター」と呼ばれる人たちは、命と引き換えの仕事をしているのか?
私も書くことが好きで、それが仕事にできたらなぁ、と淡い期待は抱いているのだが、実は、ライターとは危険な仕事なのではないか?
いやいや、そんなはずないよ。一部の変わった人だけでしょ。
体弱いとか、もともと変な性格とかさ。
普通の人間の私にも、できるはずよ。
……と、このライティングゼミの門戸を叩いたのが、恐怖の続編だったとは!
「苦しい」の一語に尽きる。
たった2千字を、毎週書くだけなのに。
それなのに、毎週苦しい。ネタ、構成、何もかも、片時も私の心から離れない。
こんな私のことも知らないで、講師で店長の三浦氏は、「そろそろ書くのが楽しくなって来た頃かなぁ」などと画面の向こうで微笑んでいる。
私は、受講開始からこの方、楽しいと思ったことはなかった。
「もうそろそろ、30分くらいで書けるようになってきたかなぁ」という三浦氏の言葉にも「いつかそんな風になれるの?!」と全力で突っ込む。
ぜんっぜん思うように書けない!
ならば辞めてしまえばいいのか?
……いや、私にも変態の種は、あるのだ。
「書かないと、死にますよ」
これは、私自身に向けて作ったコピーだ。
ライティングゼミを受講する2~3年前に、自分が本当にしたいことは何か考え、残りの人生で必ずそれに取り組もうと思った。
やりたくてもできなかった何かに、言い訳なしでとにかく取りかかろうと思ったのだ。
それを探して、紙に書き出して、毎日眺めて自分を奮い立たせようと思ったのだ。
自分は何がしたいのか。ずーっと考えて、出てきたことが「書きたい」。
「書く」人生を送るために、前述のコピーを作り、自分の部屋の壁に貼った。
そのコピーは、家族に気味悪がられたため取り外したのだが、ずっと心にある。
ライティングゼミを受講したのも、死にたくないからだ。書かないと、死んでしまう。
しかし、「書きたい」ことと「書ける」ことは違うので、ゼミを受講しても、上手くできずに苦しむばかりだ。
どうしたら、もっと上手く書けるのか?
「1本書き上げたら、『ゴッドファーザー』シリーズ3本見ないと眠れません。中身全部出すと、そうなりますよ」
講座での三浦氏のこの発言を聞き、付箋の魚がフラッシュバックした。
なんという変態なのか。ゴッドファーザー1本、何時間あると思ってるんだ。3時間あるぞ! 3本見たら9時間じゃないか。仕事上げた後に9時間映画見るのか?!
……完全敗北だ。私は、変態度合いが足りてなかった。
やっぱり、ライターは危険な職業だったのだ。
一流ライターは、全員変態だ。今なら自信を持って断言する。
私が上手く書けないとするなら、変態が不足していることが原因だ。
しかしだ。私は書かないと死ぬのだ。十分に変態の素質はあると信じている。
その証拠に、苦しいにも関わらず、毎週2千字書いている。
まだ、書くことが楽しいところまでいかないし、速くも書けない。
でもそれは、単に未熟だからと思いたい。
まったく、とんでもない世界に足を踏み入れてしまった。
「ライター志望です」なんて言ったら、生命保険に入れないかもしれない。
だから、焦る必要はない。もう少し普通の社会を楽しんで、本性を隠しておこう。
じわじわ成長していけばいい。
人生100年時代、まだ十分時間はある。
私はまた今日も、苦しい気持ちを抱えながら、変態の種に水を与えて、ほくそ笑んでいる。
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