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メディアグランプリ

宝塚歌劇団と私


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:丸尾 知実(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
三連休初日の朝10時過ぎ、私のラインに新着の連絡があった。
 
私とのやりとりの続きではあったが、驚いた。
 
これから出張に向かう新幹線の中で、泣いているというのだ。
泣きすぎて、化粧はぐちゃぐちゃ。そして、鼻水も出てきたというのだから、すごい。
連休初日、新幹線で号泣する妙齢の女性。
はたから見たら、これは彼氏から別れの連絡があった直後か、彼氏に別れを告げた人の旅立ちではないだろうか。
 
彼女とのやり取りで、彼氏に降られたという話もないし、彼氏が最近いたという話もない。
 
彼女が泣いている理由は一つ。
宝塚歌劇団の公演で休演者の発表があったからだった。
今日以降、ある宝塚歌劇団の女優Aさんが体調不良で休演するというのだ。
Aさんは大きな役を演じている人だったので、大変な事件であることがわかった。
 
そして、また私のラインが反応した。
別の人からである。
でもその内容も、その宝塚歌劇団の公演で休演者が出たというものだった。
 
「今日からAさんが休演てお知らせが出てたの見た?」
「あ、見た見た」
「私、お知らせ見ただけで、泣きそうなんだけど。むしろ泣いてる」
 
同じ演目を演じる集団を応援している友人達だけれど、決して、一番応援している役者さんが休演したわけではない。
けれど、休演というお知らせ一つで、大勢のファンが心配をしている。
はじめに紹介した彼女なんて、人目もはばからず、号泣していたのだ。
 
私もAさんの休演に動揺をしていたが、ファンって温かいなって心の声が漏れた。
誰も、自分が体調不良になって、公演を休んだわけではないし、その親族や身近な友人でもない。
ただの名もないファンなのだ。
それでも休演したAさんの日頃の努力が報われない事や、休んでしまったという心労を思って、心を痛めている。
 
さらに号泣している彼女からラインがやってきた。
他のファンがSNSに載せた文章を紹介してくれたのだ。
それはAさんを古くから応援しているファンの文章だった。
 
決して順風満帆とは言えない役者人生だけれど、遠回りをしてしまったかもしれないけれど、いつも努力していたAさん。努力を重ねてやっと手に入れた今のポジション。休演ということで心を痛めているだろうけれど、Aさんは決してへこたれない。彼女にとってはこれがスタートなのだ。だから体調は心配はするけれど、ファンが余計な心配するのは失礼だ。Aさんはより大きくなって帰ってくる。だからファンはAさんを信じて、彼女の復帰を待とう。
こういった内容の応援文章だった。
ファンってすごい。
 
ただの名もないファンであっても、彼女達の今後の可能性を信じてる。
 
今日、Aさんの休演が決まったが、舞台の幕は開く。
休演者の穴を埋めるために、色々な人がいつもと違う役を演じ、一つの作品を完成させるのだ。
宝塚歌劇は他の劇団と違い、1つの公演が終わっても公演を作り上げるメンバーは変わらない。
Aさんの努力を間近で見て、Aさんと長い時を過ごしてきた仲間だ。Aさんの休演をファン以上に心配しているだろうが、彼女達は公演をしなくてはならない。
お客さんに作品を提供するために、突然の窮地にも、お互いで穴を補わなくてはならない。
だから出演者全員で一致団結して、それぞれが精一杯の努力をし、必死で開演をするのだ。
観客は彼女たちのプロ意識の高さに驚かされ、その努力に更に涙するのだ。
 
休演者の心情を思って涙して、その穴を埋めるべく努力した出演者達の努力に感動する。
そして休演者が早く復帰できるように祈り、復活してさらなる素晴らしい世界を見せてくれるとAさんの今後の可能性を信じている。
 
なんて温かくポジティブな世界なんだろうと、私はファンの感想にすら感動してしまった。
 
すごい世界だ。
 
結果が全てとはいうけれど、ファンはその過程の努力をを少ない情報から察している。
そして、役者さんが表現する世界を楽しみに待っているのだ。
どんなことがあっても、彼女達は期待以上のものを提供してくれると信じているのだ。
 
これらをよく見ると、「ポジティブに捉えよう」という自己啓発セミナーや自己啓発本で見かける内容だと気がついてしまった。
 
どこの本屋に行っても、自己啓発本はたくさん並んでいる。
そしてどのSNSを開いても、自己啓発セミナーのお知らせが目に飛び込んでくる。
色々な情報があるが、その中にはよく「ポジティブな思考は大切」っていう言葉はよく見かけるものだ。
 
ふと、ポジティブってどんなだろうかと考えた。
考え込みすぎない。失敗を引きずらない。
これが私にとってポジティブというイメージだったので、実際に行うのは難しいだろうと感じたのだ。
失敗したら、自分の不甲斐なさに呆れてしまうし、考え込んでしまう。
 
アドラーという心理学者のメッセージを読んだ時も、同じだった。
自分の可能性を信じてあげる。
自分の個性を認めてあげる。
こんなようなメッセージを目にしたが、なかなかどういうことか実感することができなかった。
そんな不完全燃焼な知識が頭の片隅にあったのが、この日解決した。
宝塚歌劇の人と、ファンの人たちの言葉は、自己啓発本の無機質な文章より、よっぽど熱量のある自己啓発情報になった。
 
ポジティブシンキングってこういうことなんだろうな。
見守るってこういうことなんだそうな。
下手に文章を読んで想像するよりも、見てしまった方が手っ取り早く、わかりやすかったのだ。
 
Aさんが体調を崩して休演したということを失敗と捉えるなら、それ自体に目を向けず、それを乗り越えられる能力を信じる。そして、失敗を乗り越えた先のAさんの成長に期待するということ。
 
自己啓発セミナーに行くよりも宝塚歌劇団の人やそののファンに教えてもらう事の方が多いかもしれない。
宝塚歌劇団は私にとって自己啓発セミナーの一種なのかもしれない。

 
 
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2018-09-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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