fbpx
メディアグランプリ

残念な日


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:水乃龍(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「正直がっかりだ……!」
期待が大きかった分、激しく落ち込んだ。
「4時間もバスに乗って来たのに……!!」
私はたまらず愚痴をこぼした。
 
出雲大社バスツアー。
その広告を見つけたのは偶然だった。
すぐに友人を誘って申し込んだ。
誤解しないでほしい。出雲大社にがっかりした訳ではない。
大きな注連縄に、きれいな空気。
「神が集う場所」と言われるだけあってステキな場所だと思う。
しかし、たった1つ。
たった1つのことで、せっかくの出雲大社が私にとっては残念な場所になってしまった。
 
きっかけは太宰府天満宮に行ったことである。
「みてみて、すごい並んでるよ! 御朱印集めてる人って多いんだね~」
友人が驚いて声をあげた。
私はせっかくの機会だからと天満宮の御朱印帳を買うことにした。
実は前から御朱印帳に興味があったが、なかなか買う機会がなく、今回「これもご縁だ!」と思って、おもいきって買うことにした。
 
もう気づいただろう。
そう、私ががっかりしたのは出雲大社の御朱印である。
決して字が下手だったということではない。
私が勝手にイメージを膨らませて、そのイメージと違ったことに落ち込んだだけなのだ。
出雲大社について知っているのは、あの大きな注連縄と歴史のある場所であるということ。
むしろその2つしか知らないと言っていい。
私は、あの大きな注連縄とドンとした大社の佇まいから、御朱印も力強く太い文字で大きく書かれているのだと思っていたのだ。
でも、実際は違った。
繊細な文字でスマートに書かれていたのだ。
「たったそれだけのことで……」
そう思う人がほとんどだと思う。
でも、御朱印を目的としていた私には大きなことだった。
前から神社や仏閣に行くことが好きだった。
出雲大社もいつか行ってみたいと思っていた場所だった。
「きっと、御朱印を集めていなければ楽しい時間だっただろうに……」
そう思うと悔しくてしかたがなかった。
「なんでこんなスマートな字なんだ……!」
「いや、きれいな字だけれど、イメージじゃないだろう!」
誰に聞いても逆ギレだと言われそうなことを、悶々と考えた。
それでも、友人と来ているため、いつまでも悶々としている訳にはいかない。
「いろんな人がいるんだから、イメージ通りじゃないこともあるさ」
私は、大きく息をはいて自分を納得させようとした。
何度か深呼吸をして、少し落ち着いた時に、ふっと思ったことがある。
 
「文字って、不思議だなぁ」
 
私が「文字」で思い出すのは、書道である。
そして、小学校の教室である。
教室の後ろ壁一面に、生徒の作品が並べて貼ってある光景である。
不思議に思ったことはないだろうか。
教室に貼ってある彼らの作品は、1つ1つ見て楽しむことができるのだ。
授業参観の時などを思い返してみると、親が子供達の作品をじっくり見ている光景をよく目にした。
書いている文字はどれも全く同じである。
それも難しいものではなく、「元気」とか「大空」とか至ってシンプルなものである。
なぜ、そんなに楽しむことができるのか。
「自分の子供の作品だから」
もちろん、それもあるだろう。
でも私はそれだけではないと思う。
「文字」は不思議とその人の性格を表していると思う。
例えば、活発な子は紙いっぱいにはみ出すほど大きく字を書いていたり、大人しく真面目な子は正確にきっちりと書いていたり、というふうにである。
1人1人性格が違うように、字もそれぞれ違う。
じっとそれらの作品を見ていると、まさにその子達の集合写真を見ているような気分になってくる。
クラスで集合写真を撮ると、真ん中で大きくポーズをとっている子や隅っこでちょこんとしている子など、本当に色々な子供がいることがわかる。
まさにそんな感じだ。
 
「最近、自分で字を書いてないなぁ……。仕事もパソコンばっかりだもんなぁ」
なんだか、自分の字が他人に与える印象がどんなものかすごく気になった。
ごく稀に知人から手書きのメッセージをもらうことがある。
それは、メモ紙に書かれたものだったり、レターセットに切手を貼って送られてくるものだったり。
それらを受け取る時、いつもほっこりと安心した気持ちになるのだ。
きっとそれは、文字から滲み出る相手の人柄を無意識のうちに感じているからだ思う。
最近はLINEやメールを使うことがほとんどだ。
LINEやメールはとても便利で、手紙と比べて、相手に届くまでの時間もかからず、手間もかからない。
でも、「自分の文字」もあることを忘れないでほしい。
大事なことを伝えたいと思った時、きっとLINEやメールよりも、少しだけ強く思いを伝える手助けをしてくれるだろう。
 
思わずにやけた。
久々に手紙を書いてみようか。
その手紙を受け取った時、どんなふうに感じてくれるだろうか。
この日の私は、散々な気持ちでいっぱいだった。
でも今は、自分の想像にワクワクしている。
きっと今日もぐっすり眠れるだろう。

 
 
***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜《9/27までの早期特典あり!》

天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。



2018-09-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事