ほめ言葉アレルギーの私を変えた、ひとつの羅針盤
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:西峯 美咲(ライティング・ゼミ日曜コース)
言葉は不思議だ。
同じ言葉でも、素直に受け入れられる時もあれば、「なんか胡散臭い……」と疑ってしまう時もある。
その度に、「結局、言葉は道具の一つに過ぎないな」と思う。
彼と再会したのは、偶然だった。
入社以来、関西の営業所でずっと楽しくやりがいを持って、働いてきた私のまさかの本社異動。それがキッカケだ。本社に異動になって、自分の仕事や存在意義が見出せず、慣れない仕事をなんとなくやりこなしていた時、彼と再会した。あるプロジェクトで、彼をインタビューすること。それが私の仕事だった。
13年ぶりの再会、私と彼はいわゆる「同期」だ。
「誰かの夢を叶えられるサポートが出来ること、それが自分の喜びです」
「5年後、10年度、自分がこの土地にいなかったとしても、ここで働く人たちの幸せがずっと続くように、と思って、今何をすべきなのか考えています」
彼は言った。あの頃と全く変わらない、まっすぐな表情だった。
「マジか……」脳内で、私は思わずつぶやいた。
私は、彼と向き合っている自分の姿を想像するだけで、恥ずかしくなった。日々の仕事が何につながっているのか分からないまま、悶々と働いている自分が、こんなまっすぐな想いを受け止めていいんだろうか。そんな罪悪感があった。だけど、もっと彼の話を聞きたい。彼が大切にしていることを知ると、自分が忘れかけていたものを思い出せるような気がする。必死になって、彼の話を聞き続けた。
インタビューを終えた後、彼が一通のメールをくれた。
「今日は話を聞いてくれて、ありがとう。すごく聞き上手で、なんだか、話したくなる時間でした。あなたは評価者にはならず、物事の核を見てくれる気がします。ありがとう。あなたのような人が本社にいてくれてよかった」
「マジか!?」全くもって予想外のほめ言葉に、今度は、思わず声が出た。その後、じんわりと泣けてきた。
自分の今の仕事が誰かの役に立てているのかもしれない。彼の言葉は、不思議なぐらい、素直に私の心の中に届いてくれた。少しだけ、今の自分を認めてもいいのかもしれない、そう思えた。
この再会以来、彼の存在は私にとって大きなエネルギー源になっている。彼の発する言葉ひとつひとつが、自分の進む方向に勇気を与えてくれている。
言葉は不思議だ。
巷では、あらゆるビジネス書が「とにかくほめろ」「ほめ言葉で人生が変わる」と謳っている。だけど、実際はどうだろうか。同じほめ言葉でも素直に信じられる時と信じられない時があるのではないだろうか。自分に自信がなく、うまく認められない人ほどそうだと思う。「すごいね」と言われても、「何がですか? どこがですか?」と思ってしまう。私がその典型だった。
そんなひねくれ代表の私が、なぜ彼のほめ言葉を素直に受け入れられたのだろう。
彼との再会後、こんなことを考えるようになった。
ほめ言葉は羅針盤に似ている。
羅針盤は、自分の向かいたい場所があって、そこに向かっているのかどうか不安な時に確認すると、正しい方向を指し示してくれる。ほめ言葉も同じで、なりたい自分に向かっているのかどうか不安な時に、「大丈夫。あなたは正しい方向に向かっているよ」と指し示して勇気を与えてくれるものなんじゃないだろうか。
もしかすると、彼はその当時の私の迷いや悶々とした思いを、どこか感じ取っていたのかもしれない。感じた上で、私が進みたいと思っているであろう道を指し示す「羅針盤」を贈ってくれたのではないだろうか。
だから、私も素直に彼の言葉を信じられた。私は、彼のほめ言葉そのものに心動かされたのではなく、彼が「私の向かいたい方向はどこなのか?」に思いを馳せてくれたこと、どんな羅針盤を贈ればいいのかを考えてくれたことに、心動かされたのかもしれない。
ほめることが目的のほめ言葉ではなく、その人の進む道に勇気を与えられるほめ言葉を。
そう思えるようになると、不思議なぐらいに、羅針盤を贈りたくなる相手がどんどんと思い浮かんできた。
結局、言葉は道具の一つに過ぎない。
だからこそ、私もその人の武器になるような言葉を贈りたい。
羅針盤のない航海も楽しいかもしれないが、迷った時やピンチの時、羅針盤の存在はその人のふとした支えになるのではないだろうか。そんな想いは私をワクワクとさせた。海を旅した経験はないが、航海中のワクワクとした気持ちにも似ているのかもしれない。
彼がくれた羅針盤は、今日も私を導いてくれている。
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