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メディアグランプリ

ジェットコースターのような人生と、それを見る洋裁教室の先生


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
記事:島津共則(ライティング・ゼミ平日コース)
 
2008年の夏。
小さなお好み焼き屋のテーブル席。
仕事が終わったばかりの、知り合って数か月の同僚が3人。
 
そのなかの一人、
洋裁教室の先生は
「大学では落研にいました……」
と言うと、顔を真っ赤にしました。
 
ぼくと、もう一人の同僚は、目を見合わせ、笑いました。
 
どうしてかというと、その女性は
職場で、いつも落ち着いていて、誰とでも少し離れた関係を作る、
厳しい先生だったからです。
 
その「洋裁教室の先生」が、のちにぼくと結婚し
2人の子どもを生むことになる人だとは知らずに。
 
 
そんなことになるとは、全く想像できませんでした。
 
 
なぜなら、当時28才のぼくは、
「人生で結婚することはない」
と割り切っていたからです。
 
なぜそう考えていたのでしょう?
 
それはぼくの人生が
「ジェットコースターのような人生」
だったからです。
 
父の力が強い家庭で、ぼくは育ちました。
 
生まれる前から、ずっと
「勉強でも運動でも、絶対一番になれ」
「絶対会社を継げ」
と言われ続けて育ちました。
 
ぼくは6才から「摂食障害」になり
小学4年~5年生の時にで1年間休学します。
そのあとも卒業まで「登校拒否」の繰り返し。
 
中学校では、3年の3学期はほとんど休み、努力して入学した高校も、7日で退学しました。
 
なぜか?
家庭の外でも、すべての教育機関で、班長、生徒会長、運動部の部長などの組織長に推薦されました。
そしてそれを、
「自分の能力以上を出して燃え尽きる」というサイクルを15才で、すでに何度も繰り返していました。
システムの限界。
 
その後1年間、家に「引きこもり」ます。
他県の全寮制の高校に入ることを決め、勉強し、入学。
16才で実家を出ます。
 
その高校でぼくは
「両親の会社を継ぐ」という自分の決意を取り消します。
両親の開いた口はふさがらないまま。
 
ぼくは、ある大学のスペイン文学科に入学します。
必要最小限の出席日数を確保すると、
残りは古いアパートの一室で7か国語の独学(一日10時間以上)に没頭する日々。
 
大学4年生のとき、両親の会社にコンサルティング会社の社長が現れます。
そして彼は、ぼくとぼくの母の心をつかむと、数千万円のコンサル費用を手に入れ、姿を消します。
彼は有名な詐欺師でした。
 
その数か月のあいだに、姉が結婚。
姉の夫が婿養子として会社を継ぐことに決まります。
 
そのようにして
「22年間の全人生を捧げてきたテーマ」は
ウソのようにあっけなく、消えました。
 
「もう40年以上生きた」感覚でした。
とにかく疲れていました。
様々な現場の表舞台で「燃え尽きては立ち上がり」を繰り返してきたのです。
 
 
22才の燃え尽きた青年は、1年間アルバイトを行い、アルゼンチンに向かいます。
そこで2年半、スペイン語、英語、フランス語、イタリア語、ポルトガル語の基礎を学び、帰国しました。
 
2007年に帰国。
 
2008年の春。
「洋裁教室とカフェの飲食店」で働いていたとき
「洋裁教室の厳しい先生」に出会います。
 
2008年の冬。
午後11時。
五条河原町の交差点。
 
ぼくは「洋裁教室の先生」に言いました。
「好きです。付き合ってください」
 
3カ月後。
先生から「よろしくお願いします」という答え。
そのようにして、ぼくと先生の付き合いが始まります。
(10年以上たった今も、ぼくたちは敬語で話します)
 
 
でも「ジェットコースター」はまだ終わっていないことを、ぼくはまだ知りませんでした。
 
 
その4年後、ぼくは働きすぎてヘルニアになり、それまで属していた飲食業界を撤退することになるのです。
おなじ時期に、第一子が生まれます。
 
結婚したばかりの夫がヘルニアになり、
同時に職を失い、
生んだばかりの子どもが泣いているその家で、
「洋裁教室の先生」はじっと耐えていました。
 
飲食業界から別の業界に身を置くことになったぼくは、何度も職を変えました。
 
自分のスキルセットを
ゼロから組み立てなおし
所属する組織に適応させる日々が何年も続きました。
 
アルゼンチンから帰国して2018年までの11年間(27才から38才の間)、ぼくが所属した会社は、9つ。
 
1. 新築マンションのリペア会社
2. 空間芸術家のイベント補助
3. 洋裁とカフェの飲食店(「洋裁教室の先生」との出会い)
4. 創作イタリアンカフェ(ヘルニアに。飲食業界からの撤退)
5. ホテル内レストランのマネージャー
6. 生鮮食品会社の営業事務
7. アクセサリー製造販売会社の販売員
8. デザイン会社のweb運用
9. バックオフィス企業のweb事業部(いまここ)
 
 
そしていまでも、「かつての洋裁教室の先生」は、
出会って10年以上たったぼくを、
適度な距離を保ちながら、支え、根気強く見守っています。
 
 
おそらくぼくは今も、ジェットコースターに乗っているのだと思います。
そして彼女は、ジェットコースターに乗らずに、外からそれを見ているのだと思います。
 
 
その姿勢に、ぼくがどれほど救われてきたか。
 
 
安易に手を差し伸べるわけでもなく
「わかるよ」と理解を示すわけでもない。
 
結果に対して「いいですね」とも「それはよくない」とも判断せず、
ぼくという人間がどんな人なのかを見るだけ、という「淡々としたまなざし」がなかったら
ぼくはここまでやってこれなかった。
 
 
そして、ぼくは自分の人生を定義できなかった。
 
 
「ある思い」を言葉にすることは、驚くほど簡単です。
 
でも「それを今言ったらウソになるから言えないこと」が
世の中にはたくさんあると、
ぼくは感じてきました。
 
でも、今はそのときではない。
 
だから「かつての洋裁教室の先生」で今のぼくの妻に、こう言います。
 
 
一緒にいてくれて、ありがとうございます。
 
***

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2018-09-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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