着物はマッスルスーツ
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記事:植松真理子 (ライティング・ゼミ特講)
「着物を着るとみんなかっこよく見える」
子供の頃はそんな風に思っていた。スッとした立ち姿で、なんとなく雰囲気までキリッとするようにも見えた。
私は、「西の西陣、東の桐生」といわれた織物の産地、群馬県桐生市で子供時代を過ごしたので、子供の頃は日常的に着物を着る人を見る機会があった。私自身が着物を着る機会は年に1度あるかないかだったが、着物を着た時は嬉しくて、鏡に映った自分を見て「私も普段より2割くらいかっこよくなるな」と思っていた。
だが、最近増えた外国人観光客がレンタル着物を着て歩く姿は、あまりかっこよくみえないと思う。なぜだろう。
まず、着物の色や柄が季節に合っていないという違和感がある。
着物は色や柄を季節に合わせて選ぶものだし、年齢にもあわせる必要がある。だから「若いうちしか着られないから、この柄を着ておこうかな」「この色を着るなら秋よねぇ」「暦の上では春だから、帯はこれ」などと、いろいろな配慮をして選ぶ。
以前浅草で、レンタルきもの屋さんの店先に飾ってある着物があまりにも季節外れなので、お店の方に質問したら、「外国人観光客の方に人気の柄の着物を飾っています」とのことだった。色や柄をきまりに合わせて選ぶもの楽しいけれど、衣服なので自分が気に入った色や柄を選ぶことでも構わないと思っている、とも言っていた。色や柄を見て変だと思うのは、日本人の常識から考えた場合だけなのかもしれない。
よく考えると、日本人でも着物姿がかっこよくない人はいる。いる、というより多い。外国人観光客でも、色や柄を別にすれば、着物姿がきれいな人はいる。
かっこよくみえないというのは、姿勢や動き方の問題なのだ。
着物の帯をきちんと締めるためには、腰をまっすぐにしなければならない。フィットネス用語でいえば、骨盤をたてるというやつだ。骨盤を立てるには腰骨の周りにある筋肉、つまりインナーマッスルを使う。
インナーマッスルは体の中心にある大切な筋肉なのだが、小さい筋肉なのだそうだ。他の大きな筋肉を動かしたほうが楽に動作ができるので、あまり使わなくなってしまっている場合が多く、そのインナーマッスルを使って動くようにすることは、バランスのとれた体づくりのために重要だといわれている。近頃話題の体幹トレーニングも、インナーマッスルを動かしたり鍛えたりするトレーニングだ。
着物を着ていると、帯が腰あたりにまかれるので、骨盤を立てるのをサポートしてくれる。そのままインナーマッスルを使って腰をまっすぐにしていられれば着崩れしないのだが、それができないと着崩れしていってしまう。
インナーマッスルは着物で正座から立ち上がるときに、もっと必要になる。着物で立ち上がる時にはまず、少し体の重心を前に移して腰をあげて足先を畳につける。そして、足先を支点にして、まっすぐに体を引き上げて立ち上がるのだが、この時、上半身の反動を使わないで、下半身の力だけで立ち上がらなければならない。
お茶がはいったお盆を両手にもって立ち上がることを想像してみてほしい。ふらついたら、お茶や茶碗を落としてしまう。
畳を足の指でしっかりつかむ必要があるので、足指と足裏の筋肉もつく。足裏の筋肉がつくということは、足裏のアーチがしっかりするということだ。これは、長時間歩けなくなったり歩くと痛みがでたりする足の変形である外反母趾(がいはんぼし)や偏平足(へんぺいそく)の予防になる。
また、帯を締めるためには手を背中に回して硬い帯の生地をきっちりと折り、ずれないようにはさみ合わせなければならない。これは肩甲骨が柔軟でないとできない。指の力もそれなりに必要だ。
着物の裾は足首まであるので、歩くときに前にだす足は、膝を曲げずにまっすぐにのばすことになる。モデルさんのウォーキングと同じだ。
つまり、着物をかっこよく着るとバランスよく体幹トレーニングができるのだ。その意味では、着物はマッスルスーツといえると思う。
だが、今の生活では着物を着る機会はほとんどない。着物が大好きな私も、今は外反母趾にもなってしまったし、肩こりもあるので帯が結べるかどうか不安だ。しかしこのまま着物を着なくなるのは残念だ。だから、冠婚葬祭や催し物等、着物をチャンスがあれば積極的に着物を着る。
そして着るならかっこよく着たい。だから、その日を意識して体を鍛えるようにしている。やっぱり今でも着物は私にとってのマッスルスーツなのだ。
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