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メディアグランプリ

寝かしつけの呪文


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:Masatomo Sugai(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「だっこ! だっこ! 」
「はいはい、だっこね……」
 
もう何度目だろうか、このやり取りを聞くのは。
子供が早く寝付けるように暗くしたダイニングで夕食を口にしながら聞いていた。
寝かしつけにいってから、もう40分前後。今日も1時間くらいかかりそうだ。
毎晩毎晩「だっこ、だっこ」とねだられ、毎日のように1時間かかる寝かしつけに、妻はかなり疲弊していた。夫である僕から見ても、特に寝かしつけは辛そうに見えた。
娘はもうすぐ1歳6ヶ月になる。自分の足で立って自由に歩き、言葉も単語単語で少しずつ語彙もふえ、ちょっとしたやり取りはできるようになった来た。こちらの言っていることも理解できるようになってきている。毎日新しいことを覚えたり、できるようになっていて、その成長ぶりは親としてこの上なく嬉しい。
 
ただ、それに比例するかのように、寝かしつけが大変になって来ていたのだった。
もっと小さかった時、1年前なんかは、寝る前のミルクでそのまま寝ることがほとんどで、本当に手がかからなかった。しかも夜泣きもほとんどなかった。なんて親孝行な子なんだろうと二人で感心したものだった。
 
ところが最近になって、寝かしつけに1時間かかるようになり、そのうえ、夜泣きも日によって差はあるが、回数が多くなってきたのだった。妻も僕も、いや、妻の方は格段に辛そうだった。
 
僕が代わりに寝かしつけをしたらいいんじゃないか、とおもったかもしれない。僕もたしかにおもったし、試した。しかし、全くの無効だった。まず、寝室に母親がいないだけで泣いてしまい、寝るどころの話ではなくなってしまうのだ。日中遊んでいるときは「パパ、パパ」と寄ってくるが、寝るときになると、ママじゃなないとだめになってしまう。やっぱり父親は母親にはなれないのだ。母親とはなんと偉大なんだろうか。
 
このままでは親の疲弊により家庭が、家族がおかしくなってしまう……
 
そう感じ、寝かしつけ方法を見直してみることにした。
 
調べてみると、どうやら寝かしつけというのは、新米パパママの世界共通の悩みだったようだ。それに関連した書籍もたくさんあった。
その中から数冊を読み、寝かしつけについての研究を始めたのだった。
 
その中で、すぐに取り込めることはやってみたのだが……
 
夕食の時間、お風呂の時間をずらしてみる。
寝室の明かりを、豆電球をやめて真っ暗にする。
おやすみツアーをする。
 
どれも少しは効果を感じたが、仕事の都合や、手間の問題もあり、継続していくことは私たちには難しかった。
まだまだ改善しない、寝かしつけの状況に、絶望にも似た諦めが漂っていた。
 
私たちは、最後の手段を試してみることにした。
これこそ最も手間がかかり、妻としても一番やりたくはなかった方法だった。
 
それは、寝る前にある絵本を読み聞かせることだった。
 
子供に絵本の読み聞かせをすることは、子供が育つ上で、ものすごく役立つというのはよく知られたことだと思う。私たち夫婦も、ほかの家族しかり、生まれたころから絵本を買って、耳元でよく話してあげていた。
 
「たった10分で寝かしつけ」と帯にあるのだが、私たち夫婦は半信半疑で、正直なところ、あまり期待していなかった。
「そんなことないでしょ」
「流石に大げさなんじゃない? 」
そう疑っていたのだった。
 
まぁ、これで寝かしつけが少しでも楽になるなら。
 
そう相談し、買ってみたのだった。
 
『おやすみ、ロジャー』
 
効果は絶大だった。
もっと早くからやっていればよかった、と思うほどに。
 
詳しい仕組みはわからないが、どうやら、この絵本全体に仕掛けがあるようだ。
心理学的なアプローチでねむくするらしい。
 
絵本を買った日の夜。
早速、妻が試してみた。
それを僕は、子供の刺激になりにくい、妻の背後からその様子を見ていた。
 
豆電球だけが灯った薄明かりの寝室で、妻が絵本を読み始める。
子供はいつもの毛布にもぞもぞしながら、聞いているようだ。
 
絵本には、あくびをしたり、ゆっくりよんだり、という細かい指示が散りばめられていて、それに合わせて妻があくびをしたり、子供の名前を読んだり、緩急をつけて絵本を読み続ける。
子供はいつものように、すぐに横にはならずに、もぞもぞ。もぞもぞ。体を起こしたり、立ったり、足をいじったり。いつものように寝入りそうにはない。
 
しかしそれに構わず妻が読み続けていると、目を閉じ、顔を布団につけたままおしりだけあげたりして、まどろみのなかで必死に寝ないように抵抗しているかのように反応し始めた。
 
さらに妻が続けると、半分寝ていながらも、必死に眠気に抵抗するようにしていた。その様子はまるで、金縛りか何かの呪文に必死に抵抗するモンスターかのようだ。その攻防戦はしばらく続いたが、最後は読み続けた妻が勝利した。その時間、なんと25分だった。今まで1時間かかっていた寝かしつけが25分。半分以下になったのだ。
これはいけるじゃん!
 
次の日も、そのまた次の日も、その日によって差はあるものの、だいたい30分前後では寝かしつけができるまでになっていた。
 
絵本1つで、こうもかわるとは。
言葉の力とはなんと強力なんだろう。
 
こうして、私たちのはじめての子育ても、また1つ壁を超えようとしていた。
 
数日して、やはり父親である僕も寝かしつけを出来た方がいいだろうとおもい、『おやすみ、ロジャー』を寝かしつけで読んでみた。いや、読もうとした、の方がよいかもしれない。
寝かしつけの準備をし、子供の近くにいき、始めの数行読み始めた。
ところが、すぐに子供に絵本を取られ、ママに「読んで」と持っていかれてしまったのだった。
 
あぁ、僕の存在って……
 
僕が母親と同じレベルの父親になる日は、まだまだ先のことのようだ。
 
一人前の父親になる道は今日もつづく。
***

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2018-10-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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