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葬式はモンスター級の台風


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:高津輝明(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 母が逝去した。 とても安らかで眠るように逝った。 七月に癌が見つかった時には末期ガンで、手の施しようはなかったのだが、不幸中の幸いにも骨転移がなく、痛くないらしく、腸と肝臓ガンに本人は全く“そう”と気づいていなかった。
 
毎日病院に通いながら、元気出せよと言いながら、片方で葬式の準備をするこの究極の親不孝たるや! と思いながらそのギャップに自分自身かなり戸惑っていた。
 
いよいよの時は突然来た。 実はもう少し大丈夫かなと思っていたのだ。 苦しいながらも背中をさすってやったり、話をしたり、ご飯を食べさせたりしていたからだ。 臨終を迎え、事務的に葬儀場へ連絡。 1時間半ほどで来るので、それまでに準備をする。 まず清拭、看護師さんたちがそれはそれは綺麗に髪を洗ってくれ、着替えさせてくれた。 本当に感謝の気持ちでいっぱいになる。
綺麗に身支度ができたところでお迎えが来た。 葬儀場へ運び、控室に寝かせてくれる。胸のあたりからお腹のあたりまでドライアイスを敷き詰め、布団をかけて寝かせてる。
 思わず声をかける「お母ちゃん、寒ないか〜?」って寒いやろ!
 
 葬儀場で打ち合わせ、まず、どういう風な葬式をするか? うちは大阪出身で、身内も近くにおらず、母も来て3−4年ほどなので、特に友人もないのでこじんまりと、そのまま寝かせている部屋で葬儀しようか? という方向で進んでいた。 いわゆる家族葬である。 親父もボケて、自分の連れ合いの顔もわからんようなので、拝むだけにしたぐらいだ。 まぁそれでいいだろうととりあえずはそれでお願いした。
次にお坊さん。 近くのお坊さんと付き合いはあるが、どうしたらいいかと迷っていたら、葬儀場が「こちらで手配します」と段取りしてくれた。 そしたら付き合いのあるお坊さんのところ……。
 ま、まぁな、なるようになるということか(汗) 次の段取りが、返礼品、誰も来んやろ〜 と思っていたら、まず息子の会社の上司が来る。 友人が来る。 通ってたデイサービスのスタッフが来る。 ありがたいが返礼品を慌てて用意、会葬御礼のハガキを印刷屋に頼むのどうの? 「僕刷りましょか?」というと担当の方が「いやサービスしときます」とご厚意に甘えることに。 しかし人が来るなら少し形を整えなきゃと、小ホールを借りることに。 小さいが立派なホールだった。
 
「遺影の写真ありますか?」「いやー写真の嫌いな人だったから…… デイサービスの方に頼んでみます」とすぐデイサービスに電話。 いい写真が見つかった。 改めて、うちのおかん、こんな笑顔で通ってたんや! とちょい涙を誘う。
 
 母は夕方に息を引き取ったので、その日に通夜はできず、次の日になるので、
その日は枕経を読んでもらいひと段落。 そこにとまらないかんのかとおもいきや担当の人曰く「いやそれはどちらでも大丈夫です。 線香も朝まで持ちます。 ろうそくもつけっ放しで10時間以上もちます」 「まじかよ! じゃあ」と、とりあえずご飯食べに行って、今日は帰りましょう。 と意外と薄情だな俺! ファミレスでご飯。 食べた後に「あれ? 葬儀終わるまで精進料理じゃなかったけ? ま、食っちまったから仕方ない」と能天気に。
 
 次の日は奈良から身内が来る。 しかしその日は昼から納棺、親戚の迎えなど盛りだくさんで大変だ! 会館に行ってすぐに打ち合わせ。 納棺についての時間、通夜の時間、お坊さんへのお布施、仏さんの身の回りのもの、例えば数珠を持たせるんだそうだ。 お坊さんに拝んでもらってあの世に行くということは仏門に入るということらしい。 「ほうほう、四十九日の道中に必要なのですね?」と聞くと「いえ、浄土真宗は旅立つという概念はなく、あくまで阿弥陀様が天から迎えに降りて来るという教えです」と説明「へー知らなんだ、至れり尽くせりやね、よかった」と変に納得。
数珠も100均でいいですよと言われたものの、それはちょっとかわいそうなので、それっぽく可愛らしいピンクのものを調達。 納棺の時に数珠を手に持たそうと思うが、硬直してドライアイス置いてるからカチンコチンでした。 強引に「持たんかーい!」ともたせた。
 
 滞りなく通夜が終わり、なんとなくひと段落した気分で、親戚も飯食わさないかんけど、なんせ田舎なもんで、一気に飯食いに行こうと車3台に便乗して飯を食いに行ったら、その隙にいろんな人が来てくれたらしい。 すんません。 
 
次の日は葬儀、その前にお坊さんによろしくお願いしますとご挨拶。 お布施は初七日の前に渡すのが礼儀だそうだ。 だいたい初七日の金額が、その後の法要の金額になるそうです。
 
 棺にいろいろ入れてやり、山ほど花で飾ってやり、出棺。 挨拶しろと言われたが頭がすっ飛んでいてまぁ大まかに「足元の悪い中会葬してくれてありがとう」的なことを言ったような気がする。
 
焼き場に行ってこれで最後ですと窯に入れられ、一同合掌! 係りの人が「喪主さーん」「はーい」と努めて明るく言ったのに「こちらへ」と招かれてなんじゃ? と思いながら目の間にあからさまに、自爆ボタンがあるではないか。
「どうぞ」と促されるが一瞬躊躇、「え? 俺が押すの?」「どうぞ」とうながされ、「母ちゃんごめんよ、えいや!」 と清水の舞台から飛び降りた。 その後3回ほどそのビジュアルが夢に出て来る。
 
 焼きあがった母の骨は生前健脚だったこともあり、骨がしっかりしてる。 骨壷も地方によってサイズや形式が違うようです。 母の骨は紺碧のユリの柄のツボに収めました。
 
 帰って初七日の後、食事ですが、ちょっと頼みすぎて大変だった。 酒も用意したが誰も飲まんし、こういう時誰か飲んで大暴れする奴がいたのが定番なんだが、時代は変わったなぁ。 としみじみ。
 
 母の葬儀は笑顔が絶えない葬儀にしてあげた。 故人を偲び笑顔で送ってやるのがうちらしいと思ったからだ。
 
いやーしかし! 問答無用、どうしようもない自然現象は突然やって来て、すぎさっていった。 まるでモンスター級の台風のごとく嵐が吹いたようだった。
 写真の母は満面の笑顔です。 合掌! 南無阿弥陀仏!
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2018-10-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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