メディアグランプリ

運動音痴すぎてレギュラーにもなれなかった私が、部活で得たモノ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:鷹野サヤカ(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
私は運動音痴だ。
小学生の時はスポーツなんて体育以外でしたことがなかった。毎日テレビゲームをしながら、ぐうたらしている子供だった。
私の通っていた田舎の中学校では、全員何かの部活に入らなければならなかった。しかも田舎で生徒が少ないから、部活の選択肢が異様に少ない。
「バスケ部」「ホッケー部」「剣道部」の中から、好きな部活を選べと言われて、私はホッケー部に入ることにした。
理由は、ユニフォームが一番可愛かったからだ。この理由を言うとみんなに笑われるが、私はモテたかったのだ。
ホッケー部はスクールカースト上位の、キラキラした女子の集まりだった。私もホッケー部に入れば、好きだった男の子に一目置かれて、自信がついて輝けるんじゃないかって思っていた。ぐうたらな私から卒業できるかもしれない!
しかし、運動音痴すぎて3年間レギュラーに選ばれず、まさかそのユニフォームすら着れないとは夢にも思わなかった。
恥ずかしながら、「運動ぐらい、自分はやればできる」と思っていたのだ。
入部してから、体力テストがあった。
私は50m走が12秒台。一番遅かった。握力は両腕8kg。中1なのに、6歳児の平均握力と同じだ。とにかく、全ての運動能力が平均以下だということに気付いた。
ホッケー部に入った私は、運動音痴すぎて別の意味で目立ってしまっていた。キラキラするどころじゃない。
毎日の部活が苦痛で仕方なかった。人よりも体力がないからすぐ疲れる。自分より下手な人は誰もいないという辛さ。みんなからどんどん置いてかれる惨めな私。それでも部活は休まなかった。ずる休みした方が惨めだったから。
スポーツ漫画だったら「ここで主人公が猛練習してレギュラーの座を勝ち取る」というストーリーにするだろうなと思う。だが現実は甘くなかった。中学3年生になっても、新しく入った1年生に追い抜かれるぐらいだった。
そもそも試合に出ることがないので、ホッケーがうまくなることはない。
勝つか負けるかの熱い試合などやったことがなく、試合の日は応援席でビデオを撮る役に回された。「勝ち進んで全国大会なんて行かなくていいから、早く家に帰りたい」と思いながら、撮っていた。
「部活の経験は一生モノ!」 なんて言うけど、私はやはり胸がチクチクと痛む。漫画のように上手くいくものと、いかないものがある。
しかし、私はホッケー部に入ったことは後悔していない。
ホッケー部に入ったことで、改めて運動が苦手ということを自覚できた。「やればできる」なんてとんでもない。
「努力しても人並みにすらできない分野もある」 ということを知った。この考えは、今後の人生において役に立ったし、私は人に優しくなった。
部活を引退した後、「これからは自分の得意なことをしよう」と胸に決めた。
「一体、どの分野にいけばラクして輝けるのだろうか?」
スポーツも勉強も、輝いている人はたしかに努力はしているはずだ。
しかし、そのなかでも吸収が早い人というのがトップ層にいる。上手くなるための努力を、努力だと思っていない人たちがいる。
将来は「意識して努力しなくても、褒められるような分野に進もう!」と思った。この思考にいきついたのは、向いてもないホッケーを3年間も続けた成果である。
私は美大に行こうと思った。クラスで1番絵が上手かったからだ。
努力しなくても褒められる分野は、思いつく限りそれしかなかった。
単純だったので、そんな私が努力したら、きっとすぐ上位トップになれるに違いない!と思った。
しかし、美大に入ったら、私と同じように「クラスで1番絵が上手かった」という人たちがわんさかいた。やっぱり打ちのめされた。
結局、分野を変えても凡人は凡人だった。私はグラフィックデザイナーとして就職はできたけれど、年収300万円を超えられない弱小っぷり。
だから今は「デザイナーにだって文章作成スキルが欲しい!」と思って、ライティングゼミを受講している。
文章だって得意な方だと思っていたが、毎週、課題の文章を提出しても受かったり受からなかったりを繰り返している。
ネタ切れすると「今週は出さなくてもいいかな」と思ってしまう時もある。それでも「コツコツ頑張ろう」と思えるのは、机に向かって文章を書くほうが、運動なんかよりも自分には向いていることを知っているからだ。
最近の中学校では、部活は強制ではなくなり、私のようにわざわざ苦手な運動を3年間もするような子は減ってきている。
絶望的に向いていない分野のために、大事な思春期に不毛な努力をする子が減るのは良いことだと思う。
それでも、手放しで羨ましいとは思わない。
苦手なことをトコトンやってみないと、自分が本当に得意なものも分からない。今の自分が、グラフィックデザインという自分の得意なものを仕事にできているのは、つらかった部活のおかげだ。好きなものを取捨選択する能力がついたのだ。
だから、ホッケーをしていた過去の自分にエールを送りたい。
「それ、ほぼムダな努力なんだけど、がんばれ! でも、未来はあるぞ!」 って。

 
 
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2018-10-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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