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ギャルゲーの主人公になった私。


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記事:浅野 今日子(ライティング・ゼミ木曜コース)
 
 
最近、私は職場の人間関係に悩んでいる。新しく赴任した職場の同僚が人見知りで1ヵ月経つ今でもまだ雑談の一つもしたことがない。仮にその人をA子さんとしよう。A子さんは初めて顔を合わせたときから常に怒っているような雰囲気だった。最初は私が何かしたのかと思っていたら翌日も翌々日も同じだった。どうやらこれは私が何かしたわけではなさそうだと思い、別の同僚に尋ねてみた。
 
「あの人は新しい人に慣れるのに3ヵ月くらいかかるんだよ」
「!?」
「私にも最初はあんな感じだったから気にしないで、悪い人ではないから」
 
自分で言うのもなんだけど、私は誰とでも上手くやっていけるほうだ。そんな私にとって彼女はまさに未知との遭遇だった。仕事の話すらまともにできない。
 
仕事中、手が空いていた私に一言言ってくれれば済む用なのに無視された。
店が混んでいたので作業を手伝うと、「こっち来なくていいですから」と言われた。
私は邪魔だったのかもしれないけど、それにしたってもう少し言い方があるでしょう!?怒りを通り越してあっけにとられた。
話しかけてみても返事ははいかいいえでしか帰ってこない。必要な伝達事項の声掛けは私が担当の時にだけ声が小さすぎて聞こえない。
 
その人は私以外とは上手くやっているようだ。仕事や雑談でよく他の人と楽しそうに話している。私はまだ赴任して間もなく、仕事の話には着いていけない。
上司は仕事に厳しく忙しい人で、新人で戦力外の私をあまり歓迎していない。
私を含め4人しかいない店舗。一日中同じ人たちと顔を突き合わせている。その中の2人とうまくいってない。
 
寂しい。居づらい。
 
今までの店舗がみんな始めから優しく好意的な人たちばかりだったので余計にそう思うのかもしれない。
 
その後もA子さんとの人間関係は相変わらずだった。
2週間目、変化なし。あいさつは一応返してくれる。
3週間目、変化なし。未だに目すら合わない。
4週目、変化なし。
 
もうこの人とはずっとこのままなのかと諦めかけていた5週目、ある変化があった。朝あいさつした時、A子さんから「おはようございます」が返ってくるまでのタイムラグが短くなったのだ! 声も大きくなってる! 1週間目はまるで私に挨拶すらしたくないと言わんばかりだったのに! ボソボソ小声で何を言ってるか聞こえなかったのに!
 
その瞬間、私は萌えてしまった。
少しずつ、少しずつ、私たちは打ち解けていると思う。そう、まるでギャルゲーのように。
 
ギャルゲー:ギャルゲーム。選択肢付き恋愛シミュレーションゲーム
 
ゲームの中で、主人公は仲良くなりたい女の子と交流を重ね、イベントと呼ばれるデートや会話、ハプニング等の出来事を経験し、だんだん仲良くなっていく。
 
私が直面した問題も実はこれと同じではないだろうか。
 
イベント①:挨拶のタイムラグが短くなる
というように。
 
ゲームでは会話で相手の質問に対する返事が選べるようになっている。その返事によって相手の自分への好感度が上下する。好感度が低すぎると発生しないイベントもある。
 
しばらくしてまたイベントが発生した。
 
イベント②:目が合う
 
ほぼ偶然のような合い方だったが、とても嬉しかった。
その後も少しずつイベントが続いた。
 
イベント③:声掛けの声が大きくなる。ちゃんと聞こえる。
イベント④:会話。兎と犬を飼っているらしい。
 
私は今、A子さんとの関係を(一方的に)楽しみ始めている。毎日ちょっとした変化に気付き、やった! と人知れず喜ぶ。今日は少し自分から話しかけてみようかな、もしかしたら少し長く返事してくれるかもしれない。明日は仕事のことを聞けるかもしれない。
 
私の頭の中を見られたら、同性の同僚相手に何を考えているんだとドン引きされるだろう。
それでも思ってしまう。
 
可愛い……!!
 
ちなみにA子さんは本当に大変失礼ながら、あまり一般的に可愛いと言われるような外見ではない。
しかしほんの少し私に好意的な事や慣れてきてくれたなと思う事を見つけるたびに、やった、懐いてくれた、可愛い、とニヤニヤしてしまう。ツンデレのヒロインと交流しようとするギャルゲー主人公そのまんまである。次は何が起こるか楽しみになる。
 
最初から上手くいく人間関係は楽かもしれない。でも上手くいかないところから始めると発展していく楽しみがある。
どうせ口に出さなければ頭の中で何を考えているかなんてわからないのだ。明日も(一方的に)萌え続けようと思う。
 
さて、同僚によればA子さんは3ヵ月で新人に慣れてしまうらしい。後1ヵ月半、イベントは何番まで行くだろうか? 地道に好感度を上げ、妄想を逞しくしながら仕事に精をだそうと思う。

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2018-10-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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