ラーメン屋の餃子的に楽しむ「神社のアレ」
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記事:飯田峰空(ライティング・ゼミ木曜コース)
ラーメン屋で餃子って頼みますか?
メインのラーメンだけで十分という人も、セットで頼むのは当たり前という人も、一緒に行く相手次第という人もいる。
餃子は、作る側の選択肢が無数にある料理だ。焼く・煮る・揚げるという調理法から、中に入れる具材、包み方と、調味料として何を使わせるか。サイドメニューながら、お店の主義主張を強く感じる食べ物だ。一口に餃子といっても店によって全然違うものが出てきて、期待したほどでもなかったと思うこともあれば、想像以上の味に出会うこともある。
美味しいものに当たればラッキー、くらいの軽い気持ちで私は毎回、餃子に向き合っているのだが、これに似ているなと思っているものがある。
神社のおみくじだ。
おみくじもまた、神社に参拝するという目的のわきにあるサイドメニューだ。遊び要素の強いおみくじを邪道と感じて敬遠する人もいる。
私も、参拝するたびにいつでもどこでも、おみくじをひくのはミーハーだと思いながらも、ついひいてしまう。
それは、自分の運勢の良し悪しを知りたいというより別の目的があるからだ。
おみくじは、ラーメン屋の餃子のような存在だ。
大抵の神社にあるが、ひき方から書いてある文章の雰囲気まで、神社ごとのタイプがある。
私はおみくじを通じて、その神社の味わいやこだわりを感じたくなるのだ。
おみくじには、いくつかのタイプがある。
まずは、おみくじのひかせ方だ。紙のおみくじを直接掴むスタイルは、運を自分の手で引き寄せる感覚になる。また、筒から木の棒を出すタイプは、長年の歴史の重みを味わえる。木の棒を混ぜる時の厳かなサウンドも気分を盛り立てる。
そして、恋愛の神様、勝負の神様など、ある分野にいわれのある神社だと、そのジャンルを彷彿させるコメントが多い。参拝客が何を望んで参拝にきているのか、わかっているような感じだ。
一方、吉凶を記さないおみくじもある。書かれている和歌から教訓を読み取るスタイルは、趣はあるが、少しテンションが落ちる。俗物なのはわかっていても、吉凶で一喜一憂できるおみくじが、私は好きだ。そして、吉凶を示すおみくじの中で重要なのが、書いてあるコメントの厳しさ具合だ。
凶でも、上向きなコメントでフォローが入る甘めのおみくじもあれば、吉なのに戒めの言葉が多いおみくじもある。
甘めのおみくじは、最初は嬉しいものだが、読み進めていくと媚びを売られているような複雑な気分になる。
なので、ちょっと辛口くらいのコメントをくれるおみくじが、信用度があって私は好きだ。
でも、その辛口のおみくじにも欠点がある。運だめし気分で笑っていられる時にはいいのだが、深刻な状況を抱えている人や、言葉を言葉の通りに受け止めがちなお年寄りと一緒に行く時には、ヒヤヒヤしてしょうがない。そんな中、素晴らしい演出をみせてくれた神社があった。鎌倉にある鶴岡八幡宮だ。
その日、私は知人と鶴岡八幡宮に行った。入退院を繰り返して病と闘っている知人にとって、長寿や健康祈願で有名なこの神社での参拝はかねてからの目標だった。本殿までの長い階段をゆっくりと、確かな足取りで登りきり、参拝の後におみくじをひいた。
あろうことか、切実な願い事のある彼だけ、凶を引いた。不安が的中した私は、「やってしまった……」と心の中で懺悔した。そして、辛口タイプのおみくじだけあって、拠り所にするような景気のいいコメントは見当たらなかった。
このタイミングで私はなんと声をかけていいか分からず、「今が一番悪い時であとは上昇するだけ」と茶を濁していたのだが、とある看板を目にした。
「凶の人は、赤い箱におみくじを入れましょう」と。
境内の中央にあった赤い箱に近づくと、「おみくじを箱に入れて、矢を掴むと『凶運』が『強運』に変わります」とあるじゃないか!
しっかり矢を握りしめた彼だけがプラスαの運気を手に入れて、一気に形勢逆転。一瞬ガクッとさせながら、安心感と特別感を与えて浮上させるこのおみくじは、彼の心にも私の心にも深く刻まれた。
さすが日本有数の参拝者数を誇るだけあって、アフターフォローは万全だ。
この神社の巧みな受け皿に、やっぱり人が多く集まるところは気配りが一味違うなと舌を巻いた。
上向きな言葉で気分を高揚させるのも、厳しい言葉でメッセージを堅実に伝えるのも、落ち込んだ気持ちさえも包み込んで浮上させるのも、深い意味を読みとかせるのも、その神社が私たちに仕掛けるサプライズだ。
最近おみくじひいてないな、という人は、餃子を追加するみたいな気分で一度ひいてみてはどうだろう? 意外な発見があるかもしれない。
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