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メディアグランプリ

当たり前のように傷つける


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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作者:ライウォリ(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
”ママ遊ぼう”
忙しそうに動き回るママに、子供が話しかける。
ママは
”ゴメン、今は手が離せないから後にしてね”
そう言って洗い物を続ける。
子供はしょんぼりして、リビングに戻る。そんな様子をパパはリビングのソファーに座って見ている。
 
これはテレビCMでみかけた一コマだ。
CM ではこのあと、新しい家電に替えたら、ママの時間に余裕が出来て、子供が”ママ遊ぼう”と言うと、ママが”いいよ”と答え、子供が笑顔になってハッピーエンドで終わる。
CMは新しい家電に替えれば時間短縮できるよ、とメリットをうたっているわけだけど、私にはどうしても納得がいかないことがある。
そもそもパパが家事をやってあげれば良くない? 何でソファーで他人事みたいに見てるだけなんだろう?
もちろんパパが家にいなくて、ママだけがいる状況であれば家電にのおかげで時間短縮できてママも大喜びだろう。
でもパパがいる状況で、ママだけがずっと休みなく働き続けていることに大きな違和感を感じる。
このCM は私に大きなしこりを残し、奇妙な不快感を残して心に居座り続けた。
 
先日、母と一緒に熊野古道に旅行に行った。
三泊四日の旅だったのだが、フェリーで車を持っていって高野山や、熊野本宮大社、熊野速玉大社などをドライブで巡り充実した旅となった。
充実旅の二日目にとまった宿も最高で、部屋も清潔感があり、料理も美味しく大満足だったのだが、それに加え、夜に宿の人がナイトツアーにつれていってくれた。
ナイトツアーの集合時間に集合したのは、私と母のみだったので、貸しきり状態でツアーに連れていってもらえることになった。
ワゴン車に乗り込み、30分くらい車で移動すると、橋の手前で車を降り、懐中電灯で足元を照らしながら進むと、目の前に圧巻の滝が現れた。暗闇の中に浮かぶ滝は、深い闇に落ちる水の音を響かせ橋の上から観ている恐怖感も相まって、エキサイティングな景色を私の目に写していた。
滝からの帰りの道中は、細く険しい山道だったので、私は台風の時の様子等を質問して、川が氾濫した時の様子を聞いていた。
小学校が見えたので、私は”この小学校も怖いですね”と言うと
その話を聞いていた母が、
「(あなたの)お子さんたちもここの道を通学なさってたんですか?」
と言った。
私はビックリして母の方をみた。
そんなプライベートなことを聞くのか、と驚いたのだ。
ワゴン車を運転してくれているおじさんは、困った感じの間を置き、
「私は大阪にずっといて、その時に子供も二人いたんですが、離婚しまして……。その後、実家の母の介護でこちらに帰って来たんですよ、なので独り暮らしでして」
 
私は、
あーやっぱりまずい空気になった……
せっかく楽しかったのに……
と思ったと同時になんて無神経なんだろう、と憤りを感じた。
 
フォローしようもなく、母にその後を任せたが実の母ながら情けなくなった。
次の日の朝食中に母が自分からその話題を持ち出した。
「軽い気持ちで聞いたら、いけなかったみたい」
 
そういうので、
「昨日のはいけないね。失礼だよ」
と返した。
母は”軽い気持ち”でよく人に聞く。
「お子さんはおいくつですか?」
「ご主人はお休みはいつですか?」
「お孫さんは?」
 
その人と親しい関係で、結婚をしているのがわかっていたり、子供がいるのを知っていれば、話は別だ。
しかし母は以前も初対面の50代くらいの女性に、それくらいの歳の女性は当たり前に結婚していて、家で家事をやるのが当たり前と思っていて、その前提で軽い気持ちで”ご主人は”という質問したのだ。
50代の女性は独身だったのだが、その質問の後で私に、結婚していると当たり前に接してこられると、面倒だといっていた。私も結婚していないので同感だ。
子供を産みたくても産めなかった人は、子供のことを当たり前に聞かれたらどんな気持ちになるだろう?
それぞれが、いろんな経験をし、いろんな事情を抱えている。
 
きっとCM の違和感もそれなのだ。
結婚したら子育てと、家事は女性がすべてやる。そんな暗黙の価値観がそのCM にも出ていた。
当たり前のように、それが家族のおうちの幸せな風景として描かれていた。
でも両親が一緒にお皿洗いをしていて、子供が話しかける。二人でもうちょっと待ってねと言う。そうすると、スッキリなと私は思う。
昔から根付いた価値観はなかなか変えれない。
でもその人が何を抱えて生きていたかを、もう少し想像力を働かせることは出来るのではないか?
母は差別に対して非常に敏感だ。しかし、いろんな場面で出る、”軽い気持ちの当たり前”を押し付ける、その行為こそが差別なのではないかな? と思うのだ。
自分の”当たり前”は、人にとっては”あり得ない”かもしれないのだ。
無意識に当たり前だと思っていることで、回りを傷つけてしまってはいないか? 
もっと当たり前が減れば、いきやすくなるのにと思うのである。

 
 
***

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2018-10-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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