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メディアグランプリ

出版する前に京都の街並みを歩いた方がいいという提案


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:山田ミナ(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「出版してみませんか?」というメールが来た。
ブログを開設して3か月、そろそろ2000字にも慣れてきてまとまりのある文章が書けるようになってきたころだった。まだまだコンテンツになるには内容が足りていないが、言いたい事がちゃんとまとまるようになってきた、と少なくとも自分ではそう思っている。
 
出版のお誘いメールは1件にとどまらず立て続けに5件ほど来た。中には会社まで電話をくれる人もいた。しかし、すべて聞いたことのない出版会社だった。
 
「どうせ、詐欺まがいの在庫抱えるやつでしょ?」そちらの方面に詳しい先輩からはそういう意見をいただいた。なるほど、この業界には詐欺のような出版会社が横行しているのかと新しい知識が入った。
 
本を読む人が少なくなったことで出版業界は業績が下がっているらしかった。とにかく本が売れなくて困っているらしい。確かに町の本屋さんの数はどんどん減っていっているし、大きな本屋さんに行っても有名な著者が書いた同じ種類の本が平積みになっているだけで、昔ほどバリエーションがない気がする。
インターネットの拡大で、紙でできた書籍以外の方法で情報を得ることができるようになっているからだそうだ。本が読みたい人は電子本で買ってしまうし、もともとあまり読まない人は口コミなどの情報で満足してしまうらしい。
その売れない出版業界の救世主となっているのが「起業したい!」という人や、自己表現を自由にすることができるようになってブログやインスタグラムでアウトプットしている人たち。いいね! の数やフォロー数を見ればすでにある程度ファンがついているので、おおよその売れる数が想定される。
何が売れるかわからない時代の中で、編集さんたちも「売れる本」を探すために毎日インターネットの海を回遊しているらしい。
 
昔はものすごく有名な“価値”を作らないとできないと思われていた「出版」というものが個人でもかんたんに手が届くようになっている。声をかけられる側からすると「出版のお誘いが来るなんて、私の情報には価値があるんだ!」と有頂天になってしまうが、実は、自費出版のお誘いであることが大半だ。
自費出版とは、自分で費用を負担して本を出版すること。本屋さんへの中継ぎや、販売などは自分で行わないといけない。多くの場合は数百万単位で自己負担費用がかかり、部屋に入りきらない在庫を抱えることになるんだそうだ。
先輩からこの情報を聞いていた私はすっかり自費出版への“負け”意識が根付いてしまった。望まれてもいない本を作るなんて、ただの自己満足じゃないか。
編集さんはあの手この手で自社の売り上げを上げようと必死になって、耳ざわりの良いことを言う。「amazonのからくりを知っていますか? あれは大手の出版業界がリベートを払って広告費を出すので、本当のランキングじゃないんですよ。本当に売れる価値のある本はランキングには出てきません。ランキングは広告です。広告費を出すから数が出ているだけなんです! 」「今はオンデマンドで印刷することができるので、受注してから本を刷ります。在庫を抱える必要はないんですよ。でも、編集やデザイン費用で50万円払ってくれたら、本を出版できるんです」「価値ある情報は形あるものにして、多くの人が手に取れるようにするともっとファンが増えますよ!」
自分の存在意義が社会貢献につながるかもしれない、という気持ちをうまく使うなあ、と思いながらそっとメールを削除した。
 
「口でうまく言えないことがもどかしいんですけど、とにかくいい! 絶対おすすめなんです!!」と静かながらも熱いセールストークを繰り出す京都天狼院の店員さん。
京都には素晴らしい本屋さんがまだまだたくさん残っている。大学が数多くあり、本の好きな人がたくさん住んでいるからだろうか。大手の大きな本屋さんよりも、こじんまりとした、個性あふれる品ぞろいの本屋さんが大通りを一本入った所にひっそりと建っていたりする。どの本屋さんも一歩入ると、それぞれの世界観がしっかり伝わってくる。京大の側の大学なら、ものすごく難しい専門書が多いし、外語大の近くには英文書が多い。芸大の側には何を書いているのかさっぱりわからないようなデザイン書が置いてある。
どれも書き手の「絶対にこれを伝えたい!!」という熱いエネルギーが伝わってくる。「買うか買わないかはあなた次第だけど、一つ言えることは表現したいことを追求して、磨いて、磨いて、磨きぬいた、最高の作品なんです!」というような声が聞こえてくるような気がする。
あとがきを見ると見たことも聞いたこともない出版会社の名前ばかりで、題名も一般人にはわかりにくい。しかしその方面の人なら「これ! これが欲しかった!!」と刺さるようにわかるのだろう。実際にわたしも好きだった作家が自費出版で作成した、絶版になってしまっていた本が並べられているのを見つけたときは最高にうれしかった。どうやっても大手の本屋さんでは売れないだろうし、駅前の本屋さんなら手に取ろうとも思わないかもしれない。けれど、京都という個性が煮詰まって伝統になっているような町では、個性の最高出力をする覚悟がないと面白いと思えない。
京都に行くと自費出版への意識が変わる。本気で言いたい事があるなら、真剣に形にしたい事があるなら、一度、京都の本屋さんをめぐってみることを提案したい。本を読まない人たちに本を売ろうとしている編集さんから「あんなの売れないよ!」と笑われてしまうような、しかし「本気の本気で書いたもの」が大事に並べられている。その先輩方の作品から、まだまだ本気の姿勢を整えていない気持ちを見透かされたようで、ちょっとお腹の底がひゅっとしたような気がした。

 
 
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2018-10-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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