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貯金の大切さ


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記事:宮嶋周一郎(ライティング・ゼミ木曜コース)
 
「ああ、なんでこんな目に合わないといけないのだろう……」
夏も終わりの頃、その時働いていた職場で、ため息を吐いてそう思った。
 
ひどいことをされた、人に裏切られた。
そういう経験はしたくはないが、人生長く生きれば生きるほど色々なことがある。自分は、しっかりしているから、自分だけは大丈夫だと、皆そう思う。けれど、人生とは予期しないことが起こるのが常であり、まさかということが起きるのだ。
 
私もかつて、まさかということが起きたことがあった。信頼していた人物に裏切られたことがあった。私はショックを受け、怒った。私が怒ることを想像もしていなかったようで、私が本気で怒ったことがわかると、慌てて反省している様子を見せた。
私は、その反省を見てこう思った。
「許せないが、反省している人をさらに責めても仕方ないか」
今なら、その考えは甘かったかと思う。なぜなら、その相手はその後、同じことをやってきたからだ。しかし、当時の自分はその相手を信用していたので、そう思った。
後は立場もあった。その相手は、雇用主であり、私はスタッフでもあった。心のなかでは、いつ辞めようかとも同時に思ったのも確かだ。
 
人は感情の生き物である。一度心が拒否してしまうと、相手を受け入れるのが難しい。しかも、相手が誠意を持って謝ってくれれば、また話は違うが保身のため、その場をしのぐための謝罪だとわかってしまうと、なおさら許せなくなる。
 
感情とは、財布の中に入っているお金のようなものかもしれない。
相手に対しての信頼感が増えれば増えるほど、貯金も貯まる。逆に、信頼を失われるようになれば、手持ちの金額が減り、最悪マイナスになるだろう。
私が経験した出来事は、お財布の中にあった信頼残高10万円が、一気にマイナス100万円にまでなったようなものだった。それだけ、ショックな出来事だった。
そのマイナスの100万円を取り戻そうと、その相手なりにしてくれていたこともあったのかもしれない。だが、それは長くは続かず、時間が経ってもプラスまでは到底ならなかった。
結局、喧嘩別れのような形で、私は職場を去った。
あの時、私が欲しかったのは、相手のごめんなさいという謝罪だけだった。それだけで、50万は減ったと思う。気持ちを金額に換算するのも、微妙に感じるかもしれないが、半分ぐらいは解消したと思う。それがないまま月日は経ち、私の財布の紐が緩むことは二度となかった。
 
ただ、今言えるのは自分の非を認めるのは、非常に勇気がいることだということだ。特に立場が上であれば、余計にできないだろう。ただ、謝罪が伝わらないと大きなしこりが残ってしまう。結局、私とその相手は相性が合わなかったのだろう。
 
怒りの感情だけではなく、喜怒哀楽の感情は日々蓄積されていく。良い記憶も悪い記憶も、貯まっていく。自分の行動を振り返ったとき、相手のお財布と自分のお財布の中身を確認できれば、もっと適切な行動はとれるのかもしれない。
ただ、貯金も一円からと幅がある。大きく一度に貯金することは難しい。
信頼の金額は、一円~百円ぐらいしか貯まらない気がする。しかし、なにか失敗してしまった時の支出の幅は、貯金よりも遥かに多いことを、考えなくてはならない。
例えば、一年かけて信頼残高がようやく一万円になったとする。そして、大きな失敗をして五千円損失したとする。一年かけて得た貯金が、一度の失敗で半分減ると考えると、信頼の減り方が一瞬だなと想像しやすいかもしれない。いや、半分ならばまだいい。なぜならば、まだ半分残っているのだから。現実はもっと厳しい。一気にマイナスになることも珍しくない。だからこそ、日々の堅実な貯金が大切だ。なによりも、信頼を失うことをしないことが一番大切だ。私も、私のもっている信頼の貯金額を、日々確認しなければならない。
どうせなら、いつもお財布の中を百万円入っているようにしたいものだ。そうすれば、人からの協力も得られ、良い人間関係も築けるだろう。とても夢がある話だ。信頼できる人が多くいれば、それだけ環境も安定する。
実際に、それだけの金額を持ち歩けるぐらい収入があれば、もっと幸せだ。
それこそ、コツコツと仕事を頑張るしかない。
ただ、現実は厳しく、信頼残高も現金も百万円が、お財布にあるのは難しい。でも、目指すのは自由だ。
そして、嫌なマイナスの出来事も、反面教師として受け入れよう。起きてしまったことは変えられない。許すことはできなくても、現実を受け入れることはできる。
私自身も他人にマイナスの金額を与えたことは、数知れずあるだろう。もしかしたら、小さい金額の支出の数は、その相手よりもずっと上かもしれない。今も、知らぬ間に借金を抱えているのかもしれない。
そうしたら、勇気と誠意を持って、こう言おう。
「ごめんなさい」と。

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2018-10-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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