鼻の奥の小宇宙と一時間のたたかい
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記事:よくばりママ(ライティング・ゼミ日曜コース)
どうやら鼻の奥には小宇宙が広がっているらしい。
この1か月を振り返り、私が出した結論がこれだ。
猛暑が夏日になりつつある9月の半ばころ、私の身体に異変が起こり始めた。
きっかけは、何度となく繰り返されていた喉からの出血だった。
それは今年の春先から数回起きていたことで、喉の違和感とともに、咳をしたときに出血を伴うという何とも穏やかでない症状だった。ティッシュに広がる鮮血は目にも鮮やかで、目にするたびに、あれ、これやばいやつかな? と不安が胸のなかにじわっと滲んだ。
咳のし過ぎで喉が切れたかな。
鼻からの出血かな。
まさか、食道がんとか?
鮮血なら肺からの喀血ではないのとは思うのだろうけど……。
しかし、その症状はすぐに収まり、まるで何もなかったかのように日常に戻る、を何回か繰り返していた。
そして、先月。また、咳とともに同じ症状が出た。
いよいよしびれをきらした夫は、必ず病院で検査を受けるよう強く私に言い渡した。重い腰を上げて耳鼻咽喉科に足を運んだ私は、喉が切れたことによる出血ですよ、と一番望んでいた答えを得ることができた。
しかし、そんな診察結果とは裏腹に、私の胸中には嵐が起きていた。
検査として撮影された私の鼻腔のカラー画像は、大したことなくて良かったという安堵以上に、『私の鼻の奥はどうなっているんだ』という驚きをもたらした。
一言でいうと、小宇宙が広がっている! くらいの衝撃を私に与えたのだ。
生まれてから40年間、ともに過ごしてきた私の鼻腔は、なんとなく思っていた姿ではなかった。むしろ、これが本当に私の鼻の奥に? と信じられない思いであった。いや、正しくはイメージすらしたことがなかったのだ。
とはいえ、わたしの喉は無事であったことがわかった。
それですべて丸く収まるじゃないか、と思っていた。
だが、そうはいかなかった。
そこから小宇宙が奮闘し始めた。
なんと、鼻水が急に止まらなくなったのだ。
病院に行った翌日から、今度は謎の風邪様症状が起こりはじめた。
最初は、先日からずっと鼻風邪をひいている娘のものがうつったのだろう、と軽く考えていた。しかし、娘は良くなってきても、一向に私の身体に回復の兆しは見られなかった。
1週間目 声が出ない、鼻水が出る。
2週間目 声が出ない、鼻水が出る。ぼーっとする。
3週間目 くしゃみが出る、鼻の奥が重い、咳が出る、鼻水が止まらない。
4週間目 鼻の奥が重い、夜中咳が止まらない、鼻水が出る。
4週間目を過ぎ、あまりの治りの悪さに、内科と耳鼻咽喉科で受診する。
すると、それぞれの先生が同じ結果を私に伝えた。
「鼻の奥で炎症が起きているのが原因ですね」
なんと、私の小宇宙が原因だったのだ。
一見するとまるで風邪のような症状なのに、実はすべて小宇宙が影響していたのだ。
ああ、この子の仕業か……
言いようのない気分だった。
今までは近い存在と思っていた鼻の奥。けれど、その姿かたち、働きもやはり私の想像を超えるものなのだなと改めて痛感する。
小宇宙はやはり小宇宙なのだ。
この小宇宙に端を発したひと月以上におよぶ身体の不調は、私の活動をとことん鈍らせた。
咳で目が覚めるためよく眠れず、疲れがなかなか抜けない。
仕事でもしゃべりに難があるため電話がしにくい。
発作のように咳が止まらなくなる。
鼻をかんでいる時間が極端に多くなる。
そんな私にできることと言えば、できる限りの休息と、処方された薬を朝昼晩せっせっと服用することくらいだ。しかし、予想以上に小宇宙は活動をやめようとしない。おかげでいまだに一日中私はティッシュと行動をともにしている。
そして、ふと考える。
もしかしたら小宇宙は私に何らかのメッセージを伝えようとしているのかもしれない。
例えば、もう40歳になったのだから無理はするなとか、こどもの寝かしつけは身体を冷やさないようにしないと風邪ひくぞとか、口を開けて寝ると鼻や喉がやられるぞ、とか。
ああ、ダメだ。メッセージと考えると思いつくことだらけだ。
ただ、はっきりわかっていることは、私はこの小宇宙と死ぬまで付き合っていくということだ。
ならば、仲良く、お互い機嫌よく付き合えるよう、謙虚な気持ちで向き合うのが最善なのだろう。
そして、目前の願いとしては一つ。
ここしばらく手が止まっていたライティングをする時間を私に与えてほしい。
こどもを寝かしつけたあと、締切まであと1時間。
どうか私の中の小宇宙よ、このたたかいをどうか見守っててほしい。
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