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紺ブレザーは危険な色


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:西後 知春(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「そっちにいった!」
とっさにM先生が虫網と殺虫剤を持って生徒の横をこっそりと、でもドタドタと走っていく。
 
季節は秋になった。
それでも全校朝礼を行っている体育館は締め切ると何となく暑い。
衣替えの時期に入り、生徒たちは冬服姿である。
だから窓も扉も全開にする。
そうすると入ってくるやつらが入ってくる。
 
東京都内の学校と言っても、23区を離れた私が勤務している学校は結構な田舎だ。
昨年四月に青森市から引っ越しをしてきた私が、
「ここ、本当に東京なんだろうか? 新幹線に乗って田舎から出てきたはずなのに、また田舎に戻ってしまったんだろうか?」
と錯覚してしまうほど、青森よりも田園風景が広がっている。
肥料の臭いなど、プンプンしている。
初夏から窓を開けられないほど臭いが充満する。
そんな田舎な風景が広がる土地には、もちろんのことながら虫が多い。
 
虫と言ってももちろん、ゴキブリからハエ、蚊、ガも多いが特に注意しなければいけないのは、ハチ、特にスズメバチである。
 
スズメバチ自体、一般的なハチよりも大きくて獰猛である。
人の手の人差し指程度あるものもいる。
そして、スズメバチの巣はとてつもなく大きい。
女王蜂は、と考えるだけでゾッとする。
だから、民家などに巣を作ってしまったらさあ、大変。
業者に駆除してもらうことが多い。
しかし、ここは学校である。
学校には木が多い。そして、その高さははしご車を必要とするのではないかと思われるほど大きい。そのくらい髙い場所に巣を作られてしまうと、容易に駆除はできない。
 
最近、アナフィラキシーショックという言葉をよく耳にするであろう。
体の中の免疫がアレルギーを持つ物質に異常反応してしまうものだ。
一度ハチに刺されると、またハチに刺されたらどころか、はちみつ製品に触るだけでショック状態を起こしてしまう生徒がもいる。
ピーナッツや小麦などをアレルギーを持つ生徒にとっても、とてつもない問題になっている。
近年では、アレルギーを持っている生徒がアレルギーを起こす食品を食べてしまったがために亡くなってしまう生徒もいるため非常に気を使うものである。
もちろん、アナフィラキシーショックは食べ物でも引き起こすため、エピペンという緊急補助治療薬の注射を持ち歩かなければいけない生徒もいる。
エピペン講習会なるものが学校内で毎年あり、それくらいいつでも起こるものとなっている。
 
実は私、スズメバチを知らずに触っていたことがある。
学校の大型テレビの取っ手にいたらしいのである。
なんだか、ブーンという音は耳に入ってきた。
でも、姿が見当たらない。
気のせいかな? と思い、テレビのコードをつなぎ直す作業をする。
もうちょっと、テレビの場所を移動させたい。
何か手に触れた気もするが、気にならない程度。
そして、低い、かなり低いブーンの音。
びっくりして逃げる。
あ! スズメバチだ!
 
窓があいている。閉めたい。仲間を呼ばれたりしたら大変だ。
でも、スズメバチはこちらを睨みつけている。こわい。
移動をすると、いつでも攻撃できるようにこちらを見つつ体を私の方に方向転換。
なんとか長い棒を見つけて、追いやろうとする。
でも、動かない。そしてにらみ続けるハチ。
もう、どうにもならないと思い、その場を離れることにした。
ここにいるのは危険だ。
10分くらいして戻るとハチはいなくなっていた。
今思えば攻撃しようなどと思っていなかった時はなにもされなかった。
でも、何とかしなければと思った瞬間からハチは攻撃態勢にあった。
 
ちょっとうっかりスズメバチを手で払ってしまうとスズメバチは攻撃してきていると勘違いしてしまう。ハエを追いやるように払っただけだとしても。
 
スズメバチはもちろんのこと複眼であるが、色は白と黒の身認識する。
白い服を着ている人はあまり認識されにくい。
先生たちは白いYシャツ姿の人が多い。
そして、頭も黒々とした髪の先生もいれば、そうでない人もいる。
全校朝礼中の生徒たちはほぼ全身真っ黒だ。
黒っぽい服を着ているだけで興奮しているハチにとっては攻撃の対象になる。
そうなると、やばい。
かなりやばい。
だから刺されないように対策しなければいけないが、生徒たちは紺ブレザー。
もう、刺してくれと言わんばかりの人たちが150名を越すほどいるようなものである。
 
生徒達が危ない目に合わないように先生たちは気を付けなければならない。
アナフィラキシーショックで亡くなる生徒を作ってはいけない。
だから、先生たちは虫網を持って駆け回る。
虫網でとったとしても、怖い。
外に逃がして上げられれば良いが、興奮してしまっているスズメバチは殺すしかない。
しかし、しょせんはハチ。
飛び回り続ける。
なかなかとらえることができない。
 
はたから見るとおもしろい。
ドタバタドタバタ、あっち、こっちと走り回る先生たち。
その様子を見て笑う生徒たち。
くそー、こっちの気も知らないで―。
でも、走る。
 
もうすぐスズメバチを気にしなくてもよい季節が少しずつ近づいている。
ほっとする反面、なんとなく寂しい気分になる安心な季節が間近に迫っている。

 
 
***

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2018-10-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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