泣き叫ぶ赤ちゃんを寝かしつける秘策をキャンプ場のパリピに試してみた
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:黒崎英臣 (ライティング・ゼミ特講)
「ちっ、うるせえなっ!」
僕はイライラしている。
「ししゅんきに~しょうねんから~おとなにかわる~♪」
徳永英明の壊れかけのRadioの大合唱が、100メートル先のバンガローから夜10時を回ったキャンプ場に響き渡る。さっきまでウェーイ、ウェーイとはしゃいでいた集団。恐らく大学のサークルか何かだろう。今は、大カラオケ大会になり、静寂のキャンプ場を宴会場に変えてしまっているのだ。
キャンプ場ではしゃぐのは、個人の自由だ。日常では楽しめない空間、おいしいお酒と料理でテンションが上がり、歌いたくもなるだろう。楽しみたいだけ、楽しんだらいい。しかしだ。時間が問題なのだ。多くのキャンプ場は、22時以降は消灯となる。それは、子どももいるし、早朝を楽しむため、早く寝る人もいるからだ。寝る必要はないが、静かに行動する。これは、キャンプ場で快適にするための共通ルールであり、マナーでもあるのだ。しかし、22時を回ってからも、パリピのボルテージはどんどんと高まり、徳永英明が熱唱されている。
「ほんとのしあわせおしえてよ~♪」
うん。君たちは、幸せそうに歌っているが、僕は幸せが遠ざかっている気がするぞ。22時以降は、静かにしてほしい。それがささやかな僕の幸せだ。
実は、こうしたキャンプ場での騒音というのは、どこでもある。やたらと大きいボリュームで音楽を聴いていたり、楽器を奏でたり、酔っぱらって大声で叫んだり、深夜でも構わず騒いでいたり。こうした迷惑行為に対して、注意することもできず、ただひたすら我慢しているキャンパーも多い。キャンプ場の管理人に注意してもらうこともできるが、夜中などは管理人がいないため、自分で何とか対処するしかないのが実情だ。
22時を過ぎ、100メートル先から聞こえてくる壊れかけのRadio。特にファンでもないが、このままでは徳永英明が嫌いになりそうだ。どうする?注意しに行くか?しかし、相手がよくわからない。逆切れされて、一緒にいる彼女に何かあったら大変だ。管理人もいなさそう。何か方法はないか?そこで1つの方法を試してみることにした。泣き叫ぶ赤ちゃんを寝かしつける秘策を、キャンプ場のパリピに試すことにしたのである。
そのキャンプの数週間前、僕は信頼関係を構築するセミナーを開催した。信頼とは何か?どうやったら信頼関係が構築できるかについての講義だ。信頼関係を強化する方法の一つとして、『呼吸』がある。相手と呼吸を合わせることで、信頼関係がグンと強化されるのだ。この呼吸を合わせるというのは、非常にパワフルでそこにある空気感がまるで変わってくる。数年前に参加したセミナーでは、8人が輪になって座り、ただ呼吸を合わせるというワークをした。「さぁ、呼吸を合わせましょう」という掛け声もなく、相手を感じ呼吸を合わせていく。するとどうだろう。次第に輪になった8人の呼吸が1つになり、まるで8人が目に見えないドームに包まれているような、そんな感覚を感じたのだ。言葉を発さずともなんとなく相手の様子がわかる。息を合わせるというのは、こういうことかもしれない。呼吸というのは、信頼関係を構築するのに非常に簡単で強力なツールなのだ。
こうした呼吸の話をセミナーでしたところ、「泣いている赤ちゃんと呼吸を合わせると寝るらしいですよ」と受講者から発言があった。なるほど。これは、面白いことを聞いた。僕はまだ子どもがいないが、子どもができたときは是非とも試してみたい。その翌日、別の受講者からメッセージが届いた。「孫と呼吸を合わせたら、すやすや眠りました」と。本当に呼吸は、強力なツールだ。恐らく赤ちゃんは、呼吸が合うことによって、親と赤ちゃんの波長が合い、安心を感じ眠ったのではないだろうか?僕は、そのように考えた。実際にどうなのかはわからないが、呼吸には力がある。その呼吸をキャンプ場のパリピに試してみることにしたのだ。
僕は、目をつむり、いまだに大合唱を続けるパリピをイメージした。実際に見たわけではないし、所在地もあいまいだ。しかし、そのなんとなくの彼らをイメージし、呼吸を合わせていく。静かに深く。静かに深~く。呼吸を合わせていく。実際にあっているかはわからない。頭の中の彼らと呼吸を合わせていった。するとどうだろう。心のイライラが落ち着いた。と同時に大合唱が聞こえなくなったのだ。音が小さくなったわけではない。なくなったのだ。それから彼らは静かになり、僕はキャンプ場の夜の静寂を楽しむことができた。
不思議だ。呼吸を合わせたら、騒音が無くなったのだ。別のキャンプ場では、隣のテントのグループのスピーカーがやたらと大きかった。もう少し小さくしてもらいたい、と感じた僕は同じように呼吸を合わせてみた。するとだ。ものの1分くらいで、隣のグループが音楽を聴くのをやめた。音が小さくなったどころではない。音が止んだのである。これは、本当に不思議な体験であり、呼吸の秘められた力を感じた。
かつての僕は、こうしたトラブルがあるとすぐにケンカ腰になって、力で相手を押さえつけようとしてきた。しかし、力で押さえつけたら、当然ながら反発があるのだ。そこにトラブルが生まれる。だからといって、いやなことを野放しにしておくのは、自分のためにはならない。トラブルにせず、自分も相手も傷つけない。その方法が呼吸のように感じる。キャンプ場のパリピと呼吸を合わせて感じたのは、調和だ。自分も相手も調和されていく。そんな感覚を感じた。実際の所、本当に呼吸で騒音が止んだのかは分からない。目に見えない何らかの力が働いたのかもしれないし、単なる偶然が続いただけかもしれない。理由はわからないのだ。しかし、呼吸によって心を落ち着かせるという行為は、結果に対して何らかの影響を与えていると、僕は感じている。呼吸を合わせたらどうなるのか?これからも試してみたいと思う。
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