ソ・ウ・ナ・ン物語2018
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:ライウォリ(ライティング・ゼミ日曜コース)
ピピピ……
朝5時、鳴り止まない目覚ましの音が、私のまぶたを無理やりこじあける。私は観念して重いからだをお越し、少しボーッと座ったままで徐々に頭を回転させる。何で早起きしたんだっけ?
そうそう、今日は登山するんだった。やっと頭が働き始めたので、立ち上がって準備に取りかかる。
”今日は軽い山だから、準備も少なくていいか”
昨日久々に登山をしようと思い立ち、ネットで調べて登りやすそうな山をチョイスしておいた。自分が登ったことのある山と比較してなんとなく大丈夫だろうと予想をしていたので、水とおにぎりと、タオルと怪我用のグッズ、などをカバンにつめ登山用の服を身につけ出発した。
家から高速を使って2時間弱、ようやく登山口の駐車場に到着した。8時半過ぎ、快晴秋晴れでとても気持ちいい登山にもってこいの日だった。
準備していた荷物を背負い、登山靴に履き替え出発。私以外の登山客は見当たらず、一人で登山を開始した。一人登山は何度もしているので、いつも通りの感じで出発した。
しかし、今日の山はなんだか違った。台風や今年の雨の影響なのか倒木はすごいし、どこが道なのか非常に分かりにくくなっていた。
道中には親切な人が木に赤いリボンやテープで登山道の道しるべをつけてくれていたので、なんとかたどって進むことができた。
それでも数ヶ所どちらに進むのか全く判別しない箇所があって”これ大丈夫かな?”と不安にかられた。途中で登山届も出し不安にかられつつ、なんとか頂上に着いた。山頂から望む景色は最高だった。おにぎりを食べ、しばしの休憩後、下山を開始した。
下山中、多くの登山客とすれ違い挨拶をしながら軽快に下っていた。登れた安心感から、気持ちが緩んでいた。
その油断は最悪な方向へ私を導くことになった。
ふと、足を止めるとこの道合ってる? と疑問が沸いた。
いつの間にかルートから外れて進んでいることに気がついた。
赤いテープが見当たらない。
戻る道もわからない。
いつの間にか、四方見渡しても安全に歩ける場所は見当たらなくなってる。
どうしよう……
頭がシーンと冷えた。
遭難……
頭によぎる二文字。
携帯を取り出しなんとか現在地を把握しようとした。しかし地図を持っていない私にはどう対処していいのか検討もつかない。
GPS でどうにかできないか?
しかし現在地を把握しても、それに対処できる知識がない。
山を軽く考えていた自分を悔いた。しかし、後悔しても何にも変わらないから、とりあえず無理やり滑りながら急斜面を下ることにした。恐怖感から何度も足がすくんだ。時間は11時半。まだ大丈夫。必死で目印になりそうなものを探しては、少しでも緩やかな斜面を選んで進み続けた。途中で私にビックリした鹿が何匹もうスピードでかけ降りていった。
気持ちいいだろうな。
そんなことを考えていた。
ここまでくると、腹をくくっている自分がいた。
自己責任。
そう、これは自分が蒔いた種。
一人で良かった、そう思った。必死に下っては何度も滑落しかけ、倒木に助けられ命拾いした。
必死過ぎてよく覚えていないが、自分の呼吸音が乱れて、それを冷静に客観視しているもう一人の自分がいた。もっと冷静になれば大丈夫だよ。解決策は必ずある。そう語りかけて呼吸を静めてくれるもう一人の自分。
ひたすら下を目指し、無我夢中で下だり続け、やっと道らしき場所が見えてきた。
”神様ありがとうございます”
と言っていた。泣きそうだった。
14時半、駐車場にたどり着いたときには、足の力が抜け筋肉が震えていた。
山を見上げた。
「私をなめるな」
山にそう言われている気がした。
生きてて良かった。
海外で、一度夜にバスに乗った時のことを思い出した。
そう言えばあの時も本当にヤバかったな。ロスでバスにしかも夜に女性一人で乗るのは本当に危ない、ということを知らずに乗った。
乗った瞬間から車内の異様な雰囲気に恐怖を感じ、運転手のすぐそばで、たったままずっと離れずにいた。
しかも、泊まっていた場所には窓に鉄格子がはめられ、夜には銃声が聞こえたりもした。怖くて一睡も出来なかった。
後で友達にその事を伝えると怒られた。
ここは日本じゃない。レイプや強奪は当たり前だよ。自分の身は自分で守りなさい、そうたしなめられた。
質は違うが今回の山登りもロスの時と一緒だな、と思った。
私の危険はちゃんと知識と準備があれば防げたこと。
自分の知識と経験を過信し、甘い考えで行動をしてしまったから起きたこと。
たくさん情報を得れるのに、怠って勝手に自分の都合のよい方に解釈すると、とんだしっぺ返しを食らう。
最近いい気になっていた、自分を猛省した。
生かされていることに心から感謝する。
これからは、何事も精通した人に教わって一人立ちをしようと心に誓い、ちゃんとしたハイカーに激怒されるであろうエピソードを終わることにする。
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