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メディアグランプリ

誰にも教えたくない場所


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:國正 珠緒 (ライティング・ゼミ 日曜コース)

 
 
「その場所」は池袋にある。
 
先ほどから「その場所」について書こうか悩んでいる。
 
 
「とても気にいったのでみんなに教えたい」と「満席になると困るから誰にも知られたくない」
の間で揺れている。
 
でもやはりこんなに心が動くことは滅多にないから、「その場所」について、心からの愛を込めて書いてみたい。
 
ライティングゼミを受けていると度々他のゼミについてアナウンスされる。その中で気になっていた、三浦先生が読み潰したという本の実物が天狼院のエソラ店に置いてあるという話を聞いて、今日の午後訪ねてみた。
 
エソラ店には以前一回行ったことがあったが、そのときには奥まで行かなかったので気づかなかった。
今日エソラ店を訪ねた目的はその「読み潰し本」を見に行くことと、写真に関する本をチェックすることだった。「読み潰し本」はゴッドファーザールームというかなり重厚感のあるコーナーに置かれている。その読み込み方、そして改めて書き起こされた「三浦流解釈ノート」も凄かった。「素晴らしい」ではない。「凄い」という言葉しか見当たらなかった。
読み込んだという迫力と熱意と熱気と愛と……。なんか湯気がたっている感じだった。
 
あの本とノートに関しては改めてもっと時間と体力のあるときに訪れて、深く読みたいと思う。他人が読み潰した軌跡の残る本を手にするというのは、初めての体験だったが、本当に刺激的だった。でもじっくり読むのは「今日ではない」と思い、写真の本のコーナーに行った。何冊か立ち読みをして、結局は当初の目的とは変わったのだが自己啓発系の本を一冊買った。今から思うと予定に反して「自己啓発系」を買ってしまったのは、三浦先生の「読み潰し本」の熱気に触れたせいではないかと思っている。そうあの熱気に触れて身体の中の「やる気」が沸々としていたからだ。
 
レジのところに居た店員さんは、ワッカの方のお店で8月にライティングゼミに誘ってくれた人だった。本にカバーをしてくれている間を使ってちょっと立ち話をした。
お金を払い、帰ろうとしたとき……。
 
それまで気づかなかった空間を見つけた。
壁に向かってデスクと椅子がある。自習室のような作り。デスクの上の棚にポップがあってなんと「スピードスリーピングルーム」とある。なんと魅力的な、しかも天狼院らしいネーミングだろう!
 
振り返り、早速店員さんに聞いた。
 
「30分500円でこのデスク使えるのですか? 集中できそうな空間ですね」
 
「はい。集中できますよ。そうそう、ライティングの課題をやるのにすごくいいです」
 
心がゾワゾワした。早速利用してみたくなった。ペンもノートも持っていなかったので書き物はできない。
 
「そうだ! 今日買った本を読もう」
 
一旦下の階に降りて、テイクアウトのコーヒーを買ってきて、レジで500円前払いした。
 
右端の席に座った。
 
「おっ、コンセントもある。ちょうどよかった。スマホの電源切れそうだったのだ」
 
右側は部屋の壁、左には座席を仕切る小さい壁。丁度良い感じに「一人」になれた。
 
本を開いた。周りの情報は一切入らず本の内容だけが入ってくる。何分くらい読み続けただろうか。集中力が途切れて本から目をあげると同時に店内のBGMが初めて聞こえた。
時計を見ると20分ほど経っていた。それまで本の内容以外なにも頭に入らなかった。ゾーンに入っている感覚。再び本に目をやった。
 
「國正さん、16時45分です」 店員さんの声でふと我に返った。あっという間の30分だった。
 
席を立ち伸びをして深呼吸をした。「本屋の匂い」がした。そう、大好きな匂い。
「新しい本の匂い」がした。心地よかった。
 
 
私は自宅を事務所にしている。一応オフィス空間となるスペースは確保してあるのだが、同居している91歳の母が私を必要とするときすぐ対応できるよう、リビングの一角にデスクを置いて仕事をしている。
母はほとんど刺繍をしているし、取り立てて話しかけたりはしないが、それでも常に背中に気配を感じている。たまにはテレビをつけることもある。
 
煩雑で仕事の環境ではないように思われるかもしれないが、会社に勤めていれば、周りの社員が様々な動きをするし、私語もあるし、それなりに煩雑なので我が家のリビングも似たようなものだと思っている。
 
でも、たまには思い切り集中したいこともある。
そんな時は早朝の時間を使っていた。早めに寝て4時くらいに起きる。母はまだ寝ている。誰からも電話はかからない。結構いい感じだ。
でも所詮そこは我が家だ。いろんなものが溢れていて目に入る。片付いていなければ気にもなる。おなかが空けば、冷蔵庫を物色したくもなる。
 
電話や母は私の邪魔をしなくても、家中の「ものたち」まではシャットアウトできない。
 
それでもかなり集中できているつもりでいた。昨日までは!
 
でも、私は知ってしまった!! 天狼院エソラ店の奥の「スピードスリーピングルーム」という場所を!
そこが私のバイオリズムとものすごく合うということを!
 
図書館、カフェなど確かに似たような空間は他にもたくさんある。
でも「コンセント」「新しい本の匂い」「三浦先生の読み潰し本」この三拍子揃った空間は他には絶対に! ない!!
 
エソラ店に行き、まず「読み潰し本」をめくり、アドレナリンスイッチを最大限に開く。
「スピードスリーピングルーム」の席を時間を決めて確保する。多分30分がベストだ。
利用が終わったら、深呼吸をして「新しい本の匂い」を堪能して心を解放する。
新しい独自の「集中の方程式」ができた。
きっと池袋までの定期が欲しくなる程通ってしまうと思う。
 
とここまで書いて気づいた。ああ、なんということだ! 「その場所」はたった3席しかないというのに、丁寧に「取説」までつけて語ってしまった。行列ができては困る。
 
 
どうかお願いです。できれば、行かないでください。

 
 
***

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2018-10-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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