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メディアグランプリ

少年院上がりの天使にうつ病アラサー女が勇気をもらった話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

http://tenro-in.com/zemi/62637
記事:林絵梨佳(ライティング・ゼミ木曜コース)
 
 
暗闇の中、一筋の光とともに舞い降りた天使は、少年院を満期で出てきたばかりのアイドルだった。
天使はあどけない笑顔で、
「(明後日の誕生日で)二十歳になったら保護観察取れるよ!!」
と手を叩いて喜んでいた。
 
天使の名前は「戦慄かなの」というらしい。
 
うつ病を患って早や2年。
私は療養のために意識的に続けていることがある。
 
なるべく下らない笑いを提供しているバラエティ番組をたくさん録画しておくこと。調子が悪い時、今日は頑張るぞという時にそれらを薬として見る。
特に気候に体調が左右されることが多いので、雨が多く肌寒いここ最近はずっと調子が悪い。
 
調子が悪い、というとライトな感じだが実際は結構とんでもなく悪い。毎回「あ、このまま死ぬのかな」と思う。
 
まず息ができない。肺が膨らまない。真空パックの中に入れられたようにぺしゃんこになっているんじゃないかと思う。
体も重くて指一本動かせない。そして髪の毛から爪先までが脈打っているような激しい動悸。
しかし意識ははっきりしていて、動けない自分への苛立ちと惨めさが猛威を振るう。
 
それが数十分、ひどい時は数時間続く。
 
その症状が収まったらバラエティ番組を見るとその後の回復が早い。
そんな具合で先日、息も絶え絶え、必死でベッドから這い出して何とかテレビのスイッチを入れた時に、その天使は舞い降りた。
 
「アウト×デラックス」(フジテレビ)という番組だった。
戦慄かなのはそこにゲストとして出演していた。
「マツコも唸る」「とんでもないモンスターが現れた」とか散々番組予告で煽ってくるので「また最近の一風変わった系アイドルか」と期待せず見始めた。
 
しかし戦慄かなのは、ただ昔ヤンチャしてきて顔が少し可愛いからアイドルになったような甘えたアイドルではなかった。
 
彼女は幼少期母親からの暴力を受け、小学生からずっと陰湿ないじめに遭っている。
幼い妹と二人、何日も食べるものも与えられない中、帰ってくるかどうかわからない母親を待っていた。そこで自立への強い執着が生まれ、お金を稼いで自立するために犯罪に手を染めていったという。
 
少年院では初めこそ反抗ばかりしていたが、次第にご飯があり、勉強させてもらえる環境に幸せを感じていたのだそう。その証拠に彼女は勉強に励み2年間の少年院生活の中で7つもの資格を取っている。そして彼女はこの春大学の法学部に合格した。
 
娯楽が少なく勉強しかすることがない環境とはいえ、相当のやる気と能力がなければできないことだ。
 
今彼女は「bae-ベイ-」という育児放棄や児童虐待問題に取り組む団体を運営している。
二十歳になれば理事になる権利を得られるので、NPO化の手続きなどを準備しているという。
 
可愛い顔と軽快なトークで壮絶な人生を笑い飛ばしながら、将来の夢も語る彼女に、その場の出演者は皆やられていた。
 
彼女の壮絶な半生は本になるよと出演者から言われ、
「(既に)本の話は来てるけど、こんなんで終わらせたくない。もっと2個3個成し遂げてから。だからまだ(書籍化の話は)受けてない」
と野心を語り、出演者たちを唸らせた後間髪入れず
「ビリギャルよりもビリギャルじゃない?」
と微笑んで、会場を爆笑させた。
 
凄まじいセルフプロデュース力だ。
私は自然とテレビの中の彼女に拍手を送っていた。
 
確かに、今彼女の半生をメディアで小出しにして消費してしまうより、溜めて溜めて一気に露出した方が当たりが大きい。それを19歳にして自覚し、更に実行に移そうとしている。
 
彼女がここまでどん底に振り落とされても腐らず、朽ちず、上へ上へと駆け上がってくことができるのは何故なのか。転んでもタダでは起きない上に、転んだことを栄養にどんどん空へ羽ばたいていく。
もともとが賢い、というのももちろんあるだろう。しかしどんなに賢くてもその能力は使う意志がなければ発揮されない。
 
おそらく、彼女はどんな時も「考える」のをやめなかったのだ。
助けてくれる大人がいない中で、少年院の中で、アイドルになって、自分に今できることは何か、ずっと考え続けているのだ。
 
あぁ、だから彼女はこんなに格好良く見えるのか。
そう思い至った時、私の中にある思いに光が差した。
 
「考えるのをやめたい」
そう思ったことが人生で何度もある。考えるから辛いのだ。レールに乗って生きていければ幸せな筈。「言われた通り」やって「みんなと同じ」になれば穏やかに暮らせる筈。
 
しかし考えるのをやめて幸せになった人に会ったことがない。
考えるのをやめた人は不平不満しか言わない。それで自分に何ができるのか考えないから不満は改善されないままだ。
 
今私は、うつで無職、今後働ける見通しも立たず暗闇の中にいる。でも考えることだけは諦めたくない。
うつになって出来なくなったことがたくさん増えた。でも出来ないことを嘆き続けるより、何が出来るかを考え続けていたい。昔のように元気になることは出来なくても、今の私がより良く生きるためにどうしたら良いか、考え続けたい。
 
ここ最近、どんより重く暗い空のせいで忘れかけていたその気持ちを、戦慄かなのという天使が少しだけ雲間から光を照らしてくれたのだった。
***

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2018-10-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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