「顧客満足度調査」という名のラブレター
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:あさのあきお(ライティング・ゼミ日曜コース)
「このハガキ書いた事ある?」
以前、カレー専門店でランチをしている時に、同僚に聞いてみた。
「書いた事ないです」
同僚から予想した言葉が返ってきた。
「自分も書いた事がないけど、良い事も悪い事も、思いが無いと書けないよね」
と、同僚よりも自分に向けて呟いた。
このハガキ。
表面には宛名の「お客様サービスセンター行」と、フリーコメントの欄。
裏面には性別・年齢・職業から、来店頻度や、商品や接客態度、提供時間などの満足度を選択肢の中から選ぶようになっている。
このカレー専門店の創業者は、早朝から毎日全国から届く、千通以上のお客様からのハガキを3時間半かけて読むことから一日がスタートしていたそうだ。
手厳しい言葉には、店長に直接電話をして改善の指示をして、とにかくお客様の声を最優先に考えていたそうだ。
私自身は、飲食店でもインターネットショップでも、この手のアンケートを書くことが無かった。強い思いもなければ、良い事も悪い事も無かったので、取り立ててアンケートに答える必要もないと思っていた。
そんな私に、数年前から「CS向上=顧客満足度向上」の業務が加わった。
CS(Customer Satisfaction)と言ったり、顧客満足度と言ったりするが、お客様が商品やサービスに満足しているかを調査し、どうやってお客様がさらに満足していただけるかを、検討し実施する事が役割となっている。
様々なアンケートの手法があるが、商品やサービス、電話窓口などそれぞれの満足度を10点満点や5点満点で評価していただき、さらにフリーコメントにはお客様からの言葉を直接いただいている。
我々の業界では、この「アンケート=顧客満足度調査」は、全国的に実施され、各メーカーは調査結果から導き出されたランキングに一喜一憂している。
業界内ではランキングが重要のようだが、現場では、お客様に対して、望んでいる事や、足りていない事を分析し、改善策を検討し実施するようにしている。
確かに、数値で表れる事が重要で、全体を見通すことは数値でないと出来ない。しかし、お客様は一人ひとり、1社1社なため、数値から読み解いた画一的な対応は、平均値は上がるかもしれないが、目の前のお客様が喜んでいただけるかは「?」と思っている。
画一的な対応よりも、お客様の目の前に居る社員一人一人が、お客様の事を考えて行動できるかに掛かっていると思っている。
回答していただいたアンケートの中には、こんなフリーコメントがあった。
「急なお願いにもかかわらず、対応していただきありがとうございました」
とか、
「有益な提案をいただきありがとうございました。弊社が抱えている課題が解決できました」
など、評価いただいているコメントが多くある。
私は、こんなフリーコメントを、
大袈裟かもしれないが、「お客様からのラブレター」と呼んでいる。
最近はWEBからでも回答が出来るようになったが、自分に置き換えてみた時、どれだけの思いがあれば、ペンを手に取って良い事でも悪い事でも書けるだろうか。
アンケートを答えるだけであれば、点数を付けるだけでも良い。しかし、コメントを書いていただけるお客様は、何かの思いがあって書いていただけていると思う。
自分の思いを書く事は、かなりのエネルギーを使うはずだ。そのエネルギーを掛けて、しかも手書きで書いていただけるなんて、とても嬉しく有難く思う。
しかし残念ながら、すべてがすべてラブレターではなく、手厳しい辛辣な言葉をいただく事がある。
「購入した時に機能の説明がなく、思い通りに使えません。出来れば返品したいです」
とか、
「社員の態度が悪いです。どのような教育をしているのでしょうか!!」
など、それ以外にも様々なお叱りの言葉もある。
黙って我慢していただいているよりは、不満であろうが思いを表現していただける事は有難い。課題が表面化すれば対処のしようがある。また、お客様によっては面と向かって話すよりは、文章にして表現するほうが、率直な思いを表せられるお客様もいらっしゃる。そのためには、辛辣なご意見をいただいてでも、このようなアンケートは大切だと思っている。
「CS向上」の役割を与えられた時には、戸惑いもあったが、お客様からの言葉に触れる機会が多くなり、辛辣なコメントを読んで胃が痛くなることもあるが、評価していただいているコメントを読むと、心が晴れやかになる。
お客様の思いをすべて受け止められないかもしれないが、お客様からのラブレターに少しでも応えたいと思う。
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