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バイキンマンとは戦うな


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:すずき あゆみ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
わたしはずっと、自分が嫌いだった。
「あなたの長所と短所を教えてください」と言われたときも、短所ばかりが先に浮かんで、長所なんてひとつも出てこなかった。
コンプレックスの塊で、変わりたいと思っているのに、全く変われない自分に自信がなかった。
わたしにとってコンプレックスとは、わたしの中に存在するバイキンマンだった。
バイキンマンさえいなければ世界は平和に保たれるのに、いつも問題を起こしにやってくる。わたしはバイキンマンなんてさっさと倒して、早く理想の自分になりたかった。
 
子どものころは友達をうまくつくれないことがコンプレックスだった。教室という小さな社会では、トップの女の子が絶対で、少しでもその子の気に食わないことをすればあっというまに仲間外れにされる。それはその日で終わることもあれば、1週間以上続くこともあった。そのシステムに、子どもながらに嫌悪感を抱いていたわたしは、当時「外されていた」子と一緒に行動をした。一緒に給食を食べた。そして、気付けば、次のターゲットになっていた。
別にわたしは、あの子のように、誰かを仲間外れにして人気者になりたいわけではなかった。けれど、真面目で正しいことしか取柄がなかった当時のわたしは、面白くて明るくて、みんなの中心にいられるような人になりたかった。
高校生になってからは、部活や勉強で結果を出せないことがコンプレックスだった。
中学校では「なんでもできる」優等生だったわたしは、近所でも有名な文武両道校に入学した。そして、そこでは「何もできない」ことを思い知らされた。
この学校には、わたしなんかより勉強ができる人や部活で結果を残せる人が本当にたくさんいたのだ。
 
大学生になると、出会う人の幅が一気に広がった。
自分とは全く異なる生き方をしてきた人や、想像もしたことがないような価値観を持っている人と知り合う機会が増えた。
そこで「自分は他人と違う」「自分は自分でいい」という極めて当たり前の価値観をやっと手にしたわたしは、「コンプレックスを克服して、今の自分とは違う誰かになりたい」と願うことをやめた。
わたしはわたしにしかなれないのだと、頭と心で理解をすると、自分のコンプレックスを少しずつ受け入れていこうと思えるようになった。
 
わたしはいまだに新しい人間関係を築くのが苦手だし、面白いことを言って場を和ませることもできない。
けれど、輪に入るのが苦手な人の気持ちは手にとるようにわかるから、積極的にそういう人たちに声をかけることができる。
勉強や、目の前のやらなければならないことを頑張れないときがある。
けれど、自分の本当に好きなことだったら、努力を努力と思わずにできてしまう自分がいるということにも気付いた。
コンプレックスもひっくるめて全部大切な自分。
コンプレックスがあったからこそ、できることもある。
そうやって思えるようになったときに、世の中が少しだけ生きやすくなった。
ありのままのわたし自身を受け入れてくれるような友人、恋人にも恵まれた。
 
そして就職をし、わたしは社会人になった。
わたしはわたしにしかなれないと、頭でも心でもわかっている。
それなのに、時々、これまでうまく付き合ってきたはずのコンプレックスが、ひょいっと顔を出す。
例えば、社会の第一線で大きなお金やたくさんの人々を動かしている友人の話をきいたとき。
仕事でも、仕事以外でも、自分の叶えたい目標に向かってがむしゃらに努力をしている友人の存在を知ったとき。
そんな友人と比べたって意味がないことはわかっている。わたしはわたしにできることをやれば良い。だけど、活躍する同世代の友人を見るたびに、わたしはとても焦ったし、内心とても悔しかった。
 
それでいい、と思う。
ありのままの自分でいいと思える自分も自分だし、誰かの活躍を見て悔しいな、と感じる自分もまた自分だから。
「誰かと比べることで、人間は自分の位置を知ることができる」と、いつかどこかで聞いたことがある。比べることが悪いのではない。比べて、コンプレックスを感じて、必要以上に自信をなくして、そのまま動けなくなってしまうことが恐れるべきなのだ。
「社会の第一線で大きなお金や、たくさんの人々を動かしている友人」に対して、わたしはコンプレックスを感じた。それは決して、「わたしも大きなお金や、たくさんの人々を動かしたい」と思ったのではなく、「生き生きと働いて、たくさんの企業や人の役に立っている」ところに羨ましさを感じたのだ。
「仕事でも、仕事以外でも、自分の叶えたい目標に向かってがむしゃらに努力をしている友人」に感じたコンプレックスも、自分自身に叶えたい夢がないから悔しいと思った。
だとすると、自分は本当はどうしたいのか、どんな夢を叶えたときに幸せを感じるのか、なぜ、何に対して、コンプレックスを感じるのか。改めて問い直す機会にすれば良いのだと思う。
 
コンプレックスはバイキンマンだ。
だけど、バイキンマンがいない世界は平和すぎてつまらないし、アンパンマンもパトロールをしなくなってしまうかもしれない。新しい顔をつくる必要がなくなったジャムおじさんは失業してしまう。
いなくなれば良いと思うのに、いなくなると物足りない。
わたしはそんなバイキンマンを追い出すのではなく、これからも仲良く一緒にやっていきたいと思う。
 
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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2018-11-08 | Posted in メディアグランプリ

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