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どんな仕事にもある「絶対に外してはならないもの」とは


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:富田裕子(天狼院・書塾)
 
「仕事において、質と納期は、どちらが重要か」
この問いは、大学を卒業してすぐ入社した会社での新人研修で出されたものだ。
 
25年以上前のことになるが、私は教育出版の会社に入社した。
この新人研修で、私のグループは全員「質の方が大事」という回答をした。
もちろん納期は大事だが、質が完全でない商品を世の中に出すべきでない。
ちょっとくらい遅れても、質を高めるべき、など。
 
ところが、インストラクターである先輩社員の回答は
「重要なのは、質より納期」
仕事には納期をほんの少しでも過ぎてしまうと、まったく商品として意味のないものになってしまうものがある。
もちろん、質を最大限に高める努力をすることは必要だが、絶対守るべきものは「納期」である、と。
 
これは、私にとって衝撃的だった。
「質より納期」などと考えたこともなかった私は、ああこれが社会なのかと、実感した瞬間だった。
 
私はこれを、実際に体験することになる。
新人研修後に配属されたのは、高校生向け模擬試験の部署だった。
そこでは、毎年大学入試センター試験の翌日に、センター試験を受験した学生に自己採点をしてもらい、その採点票を即日回収してデータを集計し、数日内に合格判定を出し受験生に返すというサービスをしていた。この合格判定を参考にして、受験生は最終的に出願する大学を決める。
このサービスにおいて「質が高い」というのは、センター試験を受験した全員の、正しく自己採点をしたデータを完璧に回収して、分析したうえで判定を出すということになるだろう。
しかし、質を高めるためにと、データ提出に遅れた人の採点票をいつまでも待っていたとしても、受験生が2次試験に出願する前にデータを返すことができなければ、なんの意味もないものになってしまう。
このサービスは、実態とわずかの誤差があったとしても、決められた期限内に合格判定を出して返却することが、最大の使命になる。まさに「質より納期」が絶対なのだ。
 
だが、この「質より納期」とは、すべての仕事に言えることなのだろうか。
 
今話題になっている「ダンパー不正問題」
検査データを改ざんし、国の基準を満たしていない製品などを販売したことで、そのダンパーを採用している建物の免震・制震に不安の声が拡がっている。
 
このダンパーを制作している会社は「日程計画をキープするために、作業を省いてしまった」と述べている。
そういう判断を下してしまった会社の事情は、社会人であれば理解できるだろう。
一つの仕事には、多くの人が関係する。特に建設業界では、様々な技術者たちが関わる。大きな建設物になると、何百、何千の人が携わることになる。
工期の初期段階に、建物の地下に設置されるダンパーの納品が遅れてしまうと、すべての工期が狂ってしまう。もし遅れてしまい、その損害の賠償を請求されるようなことがあれば、きっと途方もない額になってしまうだろう。
だから、何がなんでも、「納期」が絶対だった。
 
しかし、この会社は大きく見誤っていたことがあった。
それは、「最終顧客」はだれか、「最終顧客の求めているもの」は何か、ということであった。
最終顧客、つまり建物を購入する人であるが、彼らが「ダンパー」に求めるもの。それは、この地震が頻発する日本でも、自分や家族の生命や財産をきちんと守れる安全性である。
ここは何としても譲れないところだったはずである。
 
だか、該当の会社は、顧客は「注文をくれる元請けの建設会社」だと位置付けていたのだろう。
元請けの求めに沿うことが絶対で、その先にいる「最終顧客」まで考えが及んでいなかった。
そのため、「納期を守る」ということが最優先され、状況が改善されることなく、15年も不正を続けてしまうことになった。
 
 
同じようなことは、どんな仕事でも起こりうる。
私は社会保険労務士として、社労士事務所に勤務している。
私に給料を払ってくれるのは、事務所のボスの社労士であり、その背後には業務を委託してくださる会社の事業主がいる。
基本的には事業主の意向に沿って仕事をするのだが、会社には従業員がいる。
 
しかし、事業主の意向が、必ずしも従業員の幸せにつながることばかりではない。
当面の利益を確保する必要がある、取引先からの要求が厳しい、他社との競争に勝たねばならない……。理由はいろいろある。
事務所に顧問料を支払ってくれる事業主の意向を「はい、はい」と聞いていれば、表面上は上手くいき、顧問契約も継続し続けるのかもしれない。
 
だが、事業主の意向に沿うことが、必ずしも将来的に会社の利益につながるという訳ではない。
事業主が些細なことと対応しなかったことが、問題を大きくし、世間からブラック企業とみられるようになってしまうこともある。
だから、事業主にとって耳の痛いことも言わねばならない。
 
私は、従業員が生き生きと働ける環境を整えることは、最終的には会社の利益につながると、信じている。
従業員はうちの事務所の「顧客」ではないが、最終的な「顧客」になりうる存在だと思っている。
一気に理想通りにいくわけではない。
何度も丁寧に説明する、経過措置を作る、代替案を提案する。
そうして、少しずつ従業員が働きやすい会社とすることができれば、その会社自身も成長していく。
 
従業員にとって働く環境はどうか、という視点を忘れないようにすることが、私の仕事の絶対に外してはならないものだと考える。
 
自分の仕事にとっての真の「顧客」は誰なのか、彼らが欲しているものは何なのかをきちんと押さえることが、どんな仕事にとっても必要なことである。
それが「絶対に外せないこと」を見誤らないことにつながると、私は考えている。
 
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2018-11-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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