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メディアグランプリ

「替えがきく会社員」というポジションを謳歌する


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:杉本織恵(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「え?Uさん、辞めるんですか?」
「やばくない?Uさん辞めたら、仕事回らないんじゃない?」
 
スタッフの間では、しばらくその話題でもちきりだった。
「Uさんが辞める……」それは、他の誰が辞めるのより衝撃だった。
  
新卒で入ったある企業の地方支社。Uさんは、その中の実質ナンバー2で、言い過ぎではなく、彼女が業務の7割くらいを取り仕切っていた。営業所長が辞めると言ったとしても、本社の部長が辞めると聞いたとしても「ああ、そうなんですねー」くらいで終わったと思うが、Uさんが辞めるとなると、話は別だ。
  
Uさんは、非常に仕事ができた。困ったこと、わからないことは、Uさんに聞けば何でも解決してもらえた。人当たりも非常に良く、面倒見も抜群だったため、スタッフから絶大な信頼を寄せられていたし、何十年も取引しているベテラン業務委託の方々も「Uさんなら」と2つ返事で仕事を受けてもらえる、そういう存在だった。
  
そんな、支社の大黒柱であり、組織の要であり、私の尊敬する先輩のUさんが辞めるというのだ。
  
もちろん、UさんにはUさんの人生があって、Uさんの選択で仕事を変えるというのは尊重すべきもの。そこに口を挟む余地は全く無い。が、スタッフ側は「Uさん無しで、果たしてきちんと業務が回るのだろうか」という心配が残る。特に、下っ端の私達には、Uさんが抜けた後の組織形態や、業務の引継などが見えるはずもなく、ただ噂をして不安な気持ちを解消していた。
  
組織で働いたことがある方なら、わかっていただけると思う。どんなに優秀な人が居たとしても、その人が一人抜けただけで、どうにかなるような組織は組織では無い。社長であろうと役員であろうと、突出した一人が抜けたら、その穴を普通の人が複数人数集まって埋めていけば、組織は回っていく。会社員と言うのは、基本的に「替えがきく」ものなのだ。
  
だが、社会に出て1年余りの私には、その視点はまだ持ち合わせていなかった。不安ながら、どこか他人事として「どうなるんだろうなあ」と思っていた。
  
結論から申し上げれば、どうにもならなかった。
業務は数人で引き継ぎ、何の混乱もなく、もちろん私には何の影響も無く、あっけない程だった。
  
だが、この経験は私に強烈な印象で残っている。組織の中でどんなに仕事ができても、どんなに優秀でも、どんなに業務を任されていても「替えがきく」ということを、まざまざと見せつけられたのだ。
  
ショックではあったが、決してネガティブな意味ではなく、とても良い経験だった。「働く」「組織に所属する」ということが軽く感じられて、すごく自由になった気がした。
  
それ以降、わたしの認識の中では、組織で働く、ということはイコール、常に替えの人材がいる、ということを意味するようになる。この一見非情に思える「替えがきく」という言葉だが、逆を返せば、他の組織でも働ける、ということになる。自分がどんなポジションの「替え」として入れるのか、ということがわかっていればいいのだ。
  
例えば、事務系が得意なら、事務系でも特にどんな分野により持ち味を発揮できるのか、経理なのか、管理系なのか、簡潔な書類作成なのか。人事なら、採用なのか、評価システムをつくることなのか、退職勧奨交渉なのか、本社との折衝なのか、労務なのか、など。よくよく業務経験を観察すれば、自分の経験上、これは得意だけれど、これは不得意、というのが見えてくる。
  
ポイントは、その得意なことの中で共通する点を、視点を変えて探してみることだ。
自分の視点で自分を見るのではなく、「自分」がテレビゲームのキャラで、「自分」を動かすコントローラーを持っている人がいるとしたら、「自分」というキャラはどういう風に見えているだろうかと想像してみること。
  
例えば、本当にゲームだったとしたら、このキャラは足が速いから、ステージが変わったところでも、足の速さを活かせるポジションに置いておこう。このキャラはとにかくパワーがあるから、今は温存しておいて、戦闘になった時に使おう。このキャラは頭がいいから、あそこの謎解きで使えるかもしれない、というように考える。
  
では、「自分」というキャラはどうか?もしコントローラーを持っていたら「自分」をどういう風に使いたいか?
  
現時点で持っているスキルは?経験は?キャラとして得意なことは何か?組織を俯瞰してみることが得意なのか、初対面の人と一瞬で打ち解けることが得意なのか、コツコツとデータを積み上げていくのが得意なのか。
  
ゲームのコントローラーを持っている感覚は、経営者や人事に近くなる。自分を一つのコマとして客観的に見られるから、使い場所がよくわかるし、「替え」の人材の特徴も見える。また、転職や移動など「自分」を他の場所に送り込む時に、どこに置けばいいのかという「替え場所」を探しやすくなる。
  
組織で働くというのは、「自分」というキャラを知り、その活かし方を模索していくということだと思う。そして、キャラである以上、コントローラーで動かせば動かすほど経験値を積むことができ、レベルを上げていくことが可能だ。
  
どこまでも「替えがきく」存在ではあるけれど、「替えがきく」からこそ、自分の意思で自由に移動することができる。どんな風に「替えがきく」のか把握していれば、レベルを上げながら、場所を変えて仕事をしていくことができると、様々な組織で働いてみて、そして周りの組織人を観察して、実感している。
 
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2018-11-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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