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メディアグランプリ

今実感する永遠の法則、「継続は力」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事: 小林 千鶴子(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
近所の八百屋で売られている糠漬けが、すこぶる旨い。
 
定番のキュウリ、カブ、茄子に大根。キャベツに人参。セロリもあった。
香りの強い野菜も糠がふっくらと包んで、さらに香りを引き立てる。
 
買い物するたびに気になっていた。
でも、糠漬けは家庭の味。買うなんてもってのほか。そんな先入主があって我慢していたのが、ある時、あまりの芳香に負けて、ついにお買い上げ。そして、家に帰って糠を洗い落とし、一口大に切って口に入れた時の感動と言ったら!
 
以来、すっかり常連客である。
 
買う度に魅せられ、ついに自ら漬けていると思しき店主のおばあさんに話しかけてみた。
 
すると、べらんめぇ調で勢いのよい答えが返ってきた。
「百年ものの糠床だからね!」
 
「私で二代目。私が糠床を継いでから、もう60年経っちゃった。他では売ってないよ、こんなの」
 
ちょっと照れくさそうにしつつ、矜持ある表情でおばあさんが答える。化粧っ気のない顔、でも張りのある綺麗な肌をしたおばあさんだ。
 
百年といえば、戦前どころか関東大震災が起きる前。関東大震災からも、東京大空襲からも生き長らえた奇跡の糠床だ。
終戦後の物資不足の時期は、糠が手に入らなくて大変だったそうだ。田舎に行って、ということは恐らく着物との物々交換だったのだろう、漸く糠を分けてもらい、糠床をだめにすることなく、今につなげているのだという。
震災や空襲に罹災しなかっただけでも万に一つの奇跡なら、それを守り抜いたことは、人智と人の努力がなせる最大の奇跡だと思う。
 
美味しいという、たったひとつのその理由から、毎日切らすことなく買って食べてる糠漬け。おばあさんの話を聞いてからはいよいよ貴重に感じられ、糠を洗い流す時、包丁を入れる時には声にならない賛嘆と御礼の言葉をかけるようになった。
 
百歳になる糠床。
二代にわたって守り続けている糠床。
60年前に先代から引き継いで、一日たりと欠かさず手入れしている糠床。
そんな糠床から生まれる糠漬けに、「ありがとう」と。
 
継続は力だ。
 
ライティングゼミに参加して4ヶ月弱。最初の意気込みがどこでしぼんだのだろう。
自分の気負いがそのまま記事のアップに繋がった時はよかった。
 
注意事項を守りすぎて、選から漏れた時。
どうしても投稿できなかったとき。
宗旨違いで漏れたとき。
 
徐々にくさって、モチベーションが落ちていった。
 
モチベーションが落ちると、自分の世界に閉じこもる。他者の努力の跡を避けるようになる。
自分とは関係のない世界だと、自分に思い込ませようとする。
ゼミのほかの生徒さん達の投稿を遠ざけて、敢えて読まないようにしたり、自分が投稿しない理由を一所懸命探したり。
 
一度下がった気持ちを再度盛り上げるのは、至難の業だ。飴でも鞭でも、なかなか落ちた気持ちを上げることは難しい。
では、どうすれば、モチベーションを下げずに続けられるのだろう?
 
それは恐らく、行動を継続すること以外にないのではないかと思う。
 
おばあさんが、失笑気味に言っていた。
 
「毎日、糠床かき回さなくちゃならないから、外出してても気になっちゃってね。すぐ帰って来ちゃうんだよね」
 
「この時期は、冷たいからかき混ぜるのも大変だよ。一晩じゃ、漬かないし、ね」
 
おばあさんはそうやって自分の糠床依存を笑う。
その表情は、でも誇らしげだ。やるべきことをやっている人。地道なことを続けている人の矜持ある顔つきだ。目がイキイキしている。
 
自分に嘘をついていない人、自分に負けていない人なのだ。
 
承認されたり、人から褒められたり、褒賞を得たり。
そういうのも、もちろんモチベーションを維持するには役に立つだろう。でも、それは外面的なことであり、自分ではコントロールできないこと。そうではなくて、自分が誓ったこと、自分との約束を守ること、そしてそれを日々行動に移すことこそが、何をさておき継続の秘訣なのだと思う。
 
たまたま訪れる突然の閃きを頼みにするのではなく、日々の平均値を守り、その平均値を実直に保ち、継続の中で徐々に質を上げていくこと。それ以外にモチベーションを保つ秘訣はない。
 
ライティングゼミのたった4ヶ月の間に、私は上がったり下がったりのジェットコースターみたいな意気の揺れを経験した。
それは、今までの人生で何度でも経験してきたことだけど、なぜかこの4ヶ月はしみったれた自分を直視させられるいや~な時間でもあり、昂揚する自分、緊張で心臓が割れそうになる自分、ホッとする自分、絶望する自分、言い訳する自分、ギアを入れ替えようとして踏ん張る自分、と、いろんな自分に出会えた貴重な時間でもあった。
 
この4ヶ月の間に、百年ものの糠漬けの美味しさ、尊さを知った。継続がもたらす日常における威力を舌で体感した。
 
この4ヶ月の間に、この駄文をレビューしてもらう経験を持った。それは価値観の違いを超え、人に伝えるとはどういうことかという基本を教わった時間でもあった。また、他の参加者の迸る熱意や、努力の痕跡を見せられる時間でもあった。
 
私はこれからもしつこく書いていくことをやめないでいようと思う。この4ヶ月間を自分で継続させようと思う。
おばあさんが糠床をかき混ぜるのと同じだと思えるようになるまで。
 
最後は、「ありがとう」で締めくくれるように!

 
 
***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2018-12-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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