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メディアグランプリ

家のお化粧をしています


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:國正 珠緒  (ライティング・ゼミ 日曜コース)

 
 
「へえ、設計士さんなのですね。どんな建物を設計されるのですか?」
 
名刺交換の時ほとんどの方が私にこう尋ねる。興味を持っていただけるのはとても嬉しいし、ありがたいことだ。でも、この問いに一言で答えるのはとても難しい。
 
「あの……エクステリアって言葉聞かれたことありますか?」
「はぁ」
「インテリアの反対の意味なんですけど」
「はぁ」
「家の外側全部を設計しているのです」
「あ、壁とか窓とか?」
「その外側ではなくて……」
 
と長くなってしまう。
 
私の仕事の範囲は敷地の中で家が建っていない部分全てなのだ。
 
こういうと
 
「ああ、お庭の設計をされているのですね」
 
と言われる。もちろん庭は私の仕事の一部だが全てではない。
 
家の前に立ったとき最初に見えるものは?
 
そう、「門構え」
 
「門構え」というと大邸宅のように感じるかもしれないが、実はどんなささやかな家でも「門構え」はある。インターホンを押す場所、ポストや表札が付いているところや、そこから玄関ポーチまでの通路。そして駐車場。
それらすべてが、私の仕事の範囲だ。そこだけを専門に設計している。
 
なぜそこだけに集中して設計する仕事があるのか!?
家を設計する人が全体を設計すれば良いではないか! と思う方もいるかもしれない。
実際には建物の設計をする方は建物自体のことに集中するあまり、外回りまできめ細やかに気配りされる方は少ない。外回りでは植物の知識なども必要なので、餅は餅屋で専門の人が設計して融合した方が良いものができることが多い。
 
例えて言えば、門構えは家のお化粧だ!
 
You tubeで「詐欺メイク」とか「整形並」と呼ばれるようなメイクの動画がたくさん流れている。ごく普通の女性がメイクのテクニックを使って、目を見張るような美女に変身する。
 
家も一緒だ。
 
家自体は変えずに、門構えを家のデザインに合って、バランスよくセンス良いデザインでリニュアルすると見違えるようになる。
 
一方どんな立派な家でも門構えが貧相だと、残念な第一印象になる。
絶世の美女が髪の手入れもせず、目の下のクマも隠さないでいたら、美人に見えなくなるのと同じだ。
 
 
家の門構えの印象は「家」の印象だけにとどまらない。
家と調和していて、季節感が感じられ、よく手入れされた門構えの家にはセンスがよく素敵な家族が住んでいるように感じられる。
どことなく殺風景で、玄関先の枯れた鉢植えがそのまま置き去りにされた門構えの家にはだらしない家族が住んでいるように感じてしまう。
 
インテリアは、家族や訪ねてくる親しい友人しか見ることはない。
それに比べ、門構えは見ず知らずの他人にまでそこに住む人の人となりを物語ってしまうのだ。
なんと恐ろしい!
 
 
門構えが「見た目の印象や住んでいる人の印象」を大きく左右するという話をしてきたが、実はもっと大切なことがある。
 
門構えは最初の「おもてなし」空間なのだ。
 
あなたが友達の家に呼ばれたとする。こんな風に……。
 
「今年のボジョレーもう飲んだ? よかったら来ない? 料理は赤に合いそうなのを適当に作っておくから。手ぶらでいいからね」
 
こう言われて、本当に手ぶらで訪ねる人はあまりいない。お菓子を焼いたり、花を買ったりして訪れるだろう。ちょっとよそ行きの服を着て、お化粧も華やかに。友達の家へのお呼ばれはちょっと心華やぐ特別なイベントだ。
 
最寄りの駅からの道も輝いて見える。ワクワクとルンルンが入り混じった気持ちで家までの道を歩く。
友達の家に着いた時、その笑顔より、ボジョレーより、心づくしの料理より何より先にあなたを出迎えてくれるのが「門構え」なのだ!!
 
門柱の横のシンボルツリーにはまだ少しだけ橙色の葉が残っている。
通路の脇には手入れの行き届いた寄せ植えの植木鉢が置かれている。
落ち着いた色合いの石畳がそっと玄関へと導いてくれる。
 
 
晩秋の名残のような美しい景色が何よりの「おもてなし」
そう、この何気ない景色を作るのも私の仕事なのだ。
 
歩く歩幅に合わせて少しずつ変化するシーン。
色、音、匂いなどを季節ごとに想定しながら作り込んでいく。
 
住んでいる人の「おもてなし」の気持ちが溢れるような空間づくり。
玄関にたどり着くまでの十数秒。その間に訪れた人を酔わせてしまおう。
 
そんなことを考えながら、家の図面をみて、その周りを設計するのだ。
 
家の外だけを専門に考えるのできめ細やかに考えることができる。
 
季節や、天候、雲の動きや、小鳥のさえずり、室内では取り入れることが難しいものを取り入れて、その家らしい、その家に住む人らしい「お・も・て・な・し」を作れたら、と思っている。
 
今度名刺交換をした時
 
「どんな建物を設計しているのですか?」と聞かれたら、ちょっと勇気がいるけれど
 
「家のお化粧をする仕事です」と答えようと思う。
 
不思議な顔をされたら、続きを話せばいい。

 
 
***

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2018-12-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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