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コンプレックスは1つの心がけで新たな価値になる~なぜ、ユーチューバーの妹のコンプレックスは、バズったのか!?~


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:坂田光太郎(木曜ライティングコース)
 
「なんかお前の妹が、テレビの生放送に出てるけど妹って何者!?」
 
私にとって妹は「正体不明の同居人」だ。
1年前までは大学に在学していたので「妹は大学生です」といえたのだが、卒業してから「妹は○○です」といえるものがない。
時にユーチューバーで、時に販売者で、時にライブチャット配信者だそうだ。
 
時々によっていろんな何者にも変わる彼女を一概に説明できないのだ。
一緒には暮らしていたものの、彼女が何をしているのかは正直わからない。
現に生放送の出演も友人からのLINEで初めて知った。
「妹って何者!?」と尋ねられたが、それを知りたいのは私の方だ。
 
スマホの充電は彼女の命そのものである。充電がなくなると仕事ができなくなるからだ。
彼女は自分のスマホのカメラから、ファンへ動画や写真を配信する。
それが仕事だ。
小さい画角にどれだけ思いをつめ共感を得られる動画や、画像をファンに送れるかで
彼女の評価は決まる。
どうやら彼女はその才能に長けていたらしい。
だから職業になった。まさに天職である。
 
しかし、地上波は少し様子が違った。
あの生放送の翌日、またLINEがきた。
 
「なんか妹、叩かれてるけど大丈夫か?」
 
なにやら、地上波を見た彼女を良く思わない人から
「デブじゃね?」、「豚だろ」
と、身体へ対する誹謗中傷が来たのだ。
彼女の動画内で全身を映すことは少ない。
テレビより小さいスマホで活躍していた彼女が地上波に出たことで、大きく見えたのも要因であろう。
 
確かに彼女は小柄ではない。
家族で「痩せろよー」と茶化す体型ではある。
だが、そんな女性は山のようにいる。
山のようにいる女性にケチをつけていたら、女性の敵として、時代が時代だったら、火破りに処されているであろう。
 
しかし、ネットは匿名で投稿ができるし、罪にもならない。
悪口が飽和する環境で彼女が格好の標的になったのだと思う。
これには、気丈な妹も落ち込んだらしい。
やはり、少々気にしていたことを言われるのは辛い。
 
数日後、またLINEが来た。
「お前の妹の動画が、バズってるよ!」
バズった?
つまり妹の動画が多くの人が見られているということだ。
なんだ、また誹謗中傷か?
と思いながら動画を見た。
わずか、49秒の動画。まさか病みすぎて喧嘩をふっかける動画でも上げたか?
と不安を抱えながら、再生を押した。
 
「なんか、最近デブとかブスとか言われるけど」
動画の中の彼女はそうこちらに語りかけてきた。
 
ヤバい、喧嘩が始まる。本気で思った。
 
「そうだよ! 筋肉質だし、おデブだよ!」
 
あれ? 認めた?
 
「そりゃそうだよーキャシャな女の子の方が可愛いよーでもね! こんな自分が好きなの! 人の身体の形ってみんな違って、小さい男の子もいるし、大きい女の子もいるけど、それが劣っているとかなくって、個性なんだよね! だからみんなも、どんな自分でも認めてあげてね!」
と語りかけて終わった。
 
喧嘩じゃなくって、体型を認めた。
認めただけじゃなくそんな自分でも好きと言った。
さらには、体型に悩みを抱えた人にメッセージを送った。
そのメッセージを受け取った人たちが心を震わせて、動画は大きな反響を生んだ。
そしてバズった。
同じ悩みで苦しんでいる人からのコメントが多く来たらしい。
彼女のメッセージが届いた確かな証拠だ。
妹のコンプレックスが体型を悩んでる人の心を揺さぶった。
コンプレックスは妹の新たな価値になったのだ。
 
 
自分のコンプレックスは誰かによって価値を与えることができる。
あの動画はそれを証明した。
でも、価値を与えるのは、少しコツがいるかもしれない。
そのコツも動画に隠されていた。
 
「とことん前向き」になること。それがコツだ。
動画の中で体型のことについて彼女も「とことん前向き」に話している。
だが、「とことん前向き」は難しい。
自分の痛い部分や隠したい部分を表現するのは想像以上に根気がいる。
だけど、難しいことではない。
 
コンプレックスを自分の一部だと受け入れる。
とことん受け入れて、とことん好きになってあげるのだ。
妹も「どんな自分でも好きになってあげて」と言っている。
この言葉こそ、コンプレックスが価値になる第一歩だ。
 
何も動画にしなくとも価値は生まれる。
 
まず自分を受け入れる。コンプレックスを好きになるところから始まる。
そして、知らぬ間にコンプレックスは価値になり、いつしか、個性へと変わる。
そんなことを教えられた気がする動画だった。
 
「お前の妹すげえな。本当に何者だよ!」
またLINEが来た。
本当に何者なのだろう。
いや、この疑問は愚問だったかもしれない。
妹はまだ何者でもないのだ。
妹が何者かは動画を見てくれた人、これから見てくれる人が決めること。
これからも、誰かにとっての何者かになって行く妹を説明するには、
まだまだ時間が必要なようだ。
なので、LINEは返答していない。いつ返答できるかは、私にもわからない。
 
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2018-12-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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