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たらこ唇からの超進化


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記事:前田 政哉(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「たらこ唇が残念やな」
高校生の時、何の話をしていた時か忘れてしまったが、親友にそう言われた。
 
そんなこと言われなくてもわかっている。
自覚している。
小さい頃からずっと気にしているんだ。
 
写真を撮るときは、たらこ唇がわかりにくくなるように、思いっきり歯を見せて笑顔で写真に映るようにしていたくらいに気にしていた。
 
小学校の頃、大阪城に家族で行ったとき、とても空気が乾燥していて、唇がバキバキにひび割れていた。腫れが酷くて、唇の周辺まで腫れてしまい、ひとまわり唇が大きくなってしまい、焼きタラコのようになっていた。
 
天守閣の上で、両親は記念に写真を撮ってくれたが、唇は腫れて痛いし、こんな無様な写真を残して欲しくないと思いながら、むすっとした表情をたことを今でも覚えている。
 
その後も、学生時代はよく鏡を見て「この唇、どうにかならんものかな」と治す方法をめちゃくちゃ調べた。
 
当時、パソコンが家になかったし、まだガラケーをみんなが使っていた時代で、インターネットにはろくな記事がなかった。仕方がないので、自分で編み出した「タラコ唇矯正体操」を暇があれば鏡の前で行なっていた。
 
マッチ箱くらいの小さい箱を、口をすぼめて咥える。唇あたりの筋肉に力を入れたり、緩めたりする。口の周りの筋肉を鍛えることで、たるんだ唇が引き締まって、スマートに見えるんじゃないかと信じて体操を行なっていた。実際に効果があったのかどうなのかはわからない。
 
たらこ唇だけではなく、昔から自分の顔にコンプレックスがあった。
 
私の顔は母にそっくりで、小さかったころ母の友人に、
「あら〜、お母さんにそっくりね〜」
なんて言われた日には、なぜ嫌だったのかわからないが、嫌で嫌で涙を流していた。
 
今になって母とその話をすると、「こんなブサイクな顔に似てるって言われて嫌やったんやな、はははは」と笑われた。
 
私は2人兄弟の長男で、私と似ていない弟が1人いる。弟と並んで歩いていても「兄弟」と言われず、「友達」と言われるほど似ていない。
 
弟はとても小顔で色白で、小さい頃は女の子に間違われるくらいだった。そんな私と弟を見比べて、母は「あんたの顔は、ほんまにでかいな」と、なぜそんなことを私に言ったのかわからないが、母はゲラゲラ笑っていたのを今でも鮮明に覚えている。
 
そんな幼少期だったので、自分の顔に自信が持てず、何となく、自分自身にも自信が持てない日々を送っていた。
 
仕事もうまくいかず、大学を卒業して新卒で入社した東京の会社を辞め、地元の大阪に帰ってきた。
 
せっかく仕事もやめたし、新しいことにチャレンジしようと思い、英会話を始めたり、ヨガをはじめたりした。
 
地元には学生時代からの友人しかいないので、新しい大人の友達を作ろうと、その頃流行り始めていた街コンに、大学の後輩を連れて、初めて行ってみることにした。
 
恥ずかしながら、合コンもしたことがなかった私は、どうしたら良いのかわからず、スタッフの人に案内された席に座り、たわいもないお喋りをしていた。終始キョロキョロしていたと思う。
 
そんな自信のない私でも、突然チャンスが訪れた。
後々、私の妻となる人と、その街コンで出会ったのだ。
 
数件の居酒屋さんを巡りながら、いろんな方とお話していく形式の街コンだった。
 
はじめの方は、緊張していて連絡先を聞いたりすることもできずに、席を離れてしまっていたが、回数を重ねるごとに、街コンの雰囲気にも慣れていった。
 
順番も良かった。
最後のお店で、将来妻になる女性と同じ席になった。
 
連絡先を無事交換することができ、その後、紆余曲折しながらも2年後、結婚することになった。旦那さんかっこいいですねとは、決して言われないが、奥さん綺麗ですねとはよく言われる。自慢の妻だ。
 
2人ともタイが好きで、夏休みにプーケットに行った時のことだ。
 
繁華街を2人で歩いていると、マッサージ屋のオカマちゃんに「そっくり〜」と日本語で言われたり、現地のガイドさんにも「そっくりですね〜」と言われたりした。
 
こんなにそっくりと言われるのだから、ペットと飼い主ではないが、本当に顔が似て来ているのだろうと思う。どちらが、どちらの顔に似て来ているのかわからないが、2人で一緒に撮った写真を見てみると、確かに似ている。
 
大人になって少し顔が変わって来たのかもしれない。
いつの間にか、たらこ唇も目立たなくなってきていた。
 
でも一番の要因は、妻と過ごす時間が長くなり、笑顔になる回数が増え、表情が変わってきたのだと思う。
 
タラコ唇から、大好きな妻の顔への超進化。
 
小さなチャレンジでも、その後の人生にどういう影響を与えるかわからない。
自分が気にしているコンプレックスも、周りの人はどうも思っていなかったりする。
 
考えすぎず、小さなチャレンジをこれからも続けていきたい。
 
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2018-12-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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