メディアグランプリ

ラーメンは宝だ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:派夢世(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「今日は一人で、ラーメン食べて帰る」
夫にメールを送り、いそいそと私は職場を後にします。
今、私の心はラーメンに満たされ、他のことは考えられません。
それにしても、ラーメンとは、何と魅惑的な食べ物なのでしょうか。
私の体はラーメンで出来ています。何故ならほぼ毎日ラーメンを食べるからです。
私に取ってラーメンは、とても神聖な食べ物です。何故なら、わたしがラーメンを食べるときは、一人でどんぶりに心静かに向かいたいからです。
 
夫には申し訳ないけれど、今日は一人でラーメンの気分です。
心を悲しみが宿るとき、一杯のラーメンが心を癒します。
怒りにうち震えるとき、一杯のラーメンが戦う勇気を与えてくれるのです。
仕事がうまく行った時、一杯のラーメンが心をねぎらいます。
何もない時、一杯のラーメンが私の心を幸せにするのです。
ああ、神様は私にラーメンを与えたもうた。
この命の一杯によって、心に癒しを、体に脂肪を与えられるのです。
ひとときの癒しと、さらなる業。ああ。
 
ラーメンを一人で食べるとき、同じカウンターで同じく一人でラーメンを食べる人に、心を揺さぶられます。
さながら、思いを共にする同志。互いを認め合った戦士。
この東京には無数のラーメン屋が存在するというのに、今この瞬間、同じ空間で、同じ麺を食す。
同じ一杯のラーメンに心を捧げ、ともに味わう仲間。
再び会うことはなかったとしても、いまこの瞬間心を通わすかけがえのない時。
 
それは一杯の醤油ラーメン。澄んだスープに薄く浮かぶ透明な油。
具はシンプルにネギ。そしていまや珍しくなったナルト。すましたように一枚だけのったチャーシュー。
侍が鞘から刀を抜くように、厳かに箸を袋から引き抜き、おもむろにそれを構える。
ラーメンは音を立ててすするのがよい。容赦なく汁ごとすすりこむ。
食べ終わった後の爽快感に浸りながら、店を後にするときの満足感。
 
それは一杯の味噌ラーメン。合わせみそでこってりと濃いスープ。
分厚いチャーシューが大きく主張し、わきにそっとメンマが寄り添う。
ひときわ太い麺は、スープの個性に引けを取らず、訪れた客に大きな達成感を与える。
麺を食べ、具を味わい、最後までスープを飲み干し、征服感に酔いしれる。
 
それは一杯の塩ラーメン。なぜか居酒屋で供されるインスタントラーメン。
毎度おなじみのあのラーメン。キャベツとネギが一緒に煮られ、上にゴマが振りかけられている。
塩というにはやや黄みがかった不透明のスープ。塩というにはバターのような濃厚な香り。
煮られた鍋のままのチープな姿。しかしなぜか、これがいい。
家で食べるのとはまた違った滋味。だが同時に懐かしい。
やさしさに浸りながら、黙々と食す。酒の入った胃に染み渡る温かさに心震える。
 
それは一杯の豚骨ラーメン。バリカタの麺、濃いめのスープ。
店に入る前から、付近に漂う豚の脂の匂い。
どんぶりの淵まで飛び散る脂。麺の上に浮かぶ脂。スープをすくってもまんべんなく脂。
どこまでも脂の中に際立つうま味。切れのある醤油の味わい。
口の周りを脂でまみれさせ、子供のように我を忘れてすする。
脂で満たされた胃袋からは、途方もない背徳感があふれる。
背徳感にまみれたい。そんな日もある。
 
ああ、ラーメン。ラーメンとはなんと奥深いのでしょうか。
これほどの素晴らしい食べ物が、東京には無数に存在しているのです。
さながら東京は、ラーメンという素晴らしい宝を隠した、壮大な秘境です。
昼に夜に、この素晴らしい宝物を訪ねて歩く同志たちは、東京を旅する冒険者です。
 
私もまた、一人でラーメンに向かうとき、この素晴らしい宝に酔いしれているのです。
そしてまた、新たな宝を求めて、東京をさまようのです。
 
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2018-12-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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