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私があまり自分の意見をいわない理由


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記事:村山千尋(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「○○な人ってちょっと無理だよね」
「○○に決まっているよね」
「○○な人はさすがにいないでしょ」
 
というような話をする人はよくいるだろう。実際に私も誰かと話しているときに、この手の話を聞くことは多い。
 
私はいつもこのような話題に出会うと心が痛む。そして、口数が少なくなる。
「~って無理だよね」、「絶対○○するに決まっているでしょ」のように、個人の価値観をさも全員に当てはまるかのような物言いが嫌いだ。
そういうことを言う人は大体、自分の思っていることをほかの全員が考えていて、自分の考えは「普通」だ。と思い込んでいる。
このような人たちの発言に対して、嫌な思いをしてしまうのには理由がある。
 
原因は私の子供時代にまでさかのぼる。
自分の子供時代は周りの人たちと考え方がとにかく違って集団生活になじむのが大変だった。幼稚園の時はみんなが外で遊んでいるのを見ても、家の中で静かにひとり遊びをしているのが好きだった。小学校の時は、帰り道が一緒の女の子たちが永遠に校門の前でおしゃべりしているのが嫌すぎて、早く帰ってゲームがしたいと思っていた。
 
子供の時だけでなく、今になっても周りの人と意見や考え方、そもそもの価値観が違うなと感じる場面は多々あるが子供の時よりも正直に周りにいうことができなくなった。
子供の時には感じることのなかった、人々の中にある固定概念の壁が見えるようになってしまったからだ。
 
冒頭に話したような会話は、言っている本人たちは誰かを傷つけようとしているわけではない。その人の中にある、「常識」がその人個人の「固定概念」であることに気付けず周りもそうだと思い込んでいるためまったくもって自然に発言する。
 
例えば私の場合、理系の入試で農学部に入り、農学部内の経済学を専攻する学科に進んだ。
特に学びたいこともなかったので、院にはいかずに東京で就職をする選択をした。
すると、院を選択した友達と一緒にいた時の会話で、
「研究職への道を今捨てるようなバカなことはしないなー」と、片方の友達が言った。
 
私もその場にはいたが自分の進路の話題をしていた中の発言ではなかったので、自分のことをバカにしたくて言ったわけではないことは分かった。
しかし私は私なりに考え、自分が進む可能性の限りなく低い研究職という分野のために莫大なお金と二年間という時間を使うのであれば、その二年間を働くことや自身のスキルアップにつなげたいと考えていたのだ。それは彼女にとっては「バカな選択」だったのかもしれないが、私にとっては最善の選択だった。
 
きっと私たちは日々、彼女の発言のように無意識に特定の人を傷つけているかもしれない。
周りにいるひとが必ずしも自分と同じ意見を持っているわけではなく、傷つけるつもりはなくても傷つけてしまうこともきっとたくさんある。もちろん私も無意識に多くの人を傷つけてしまっているのだろうと思う。
 
だから私には日々気を付けていることがある。
 
それは、自分以外の人間は自分とは違うことを認識することだ。何か一つ発言をするにしても、感覚や感情での好き嫌いに関しては必ず、「自分はこう思う」というようにあくまで自分の考えであることを伝える。もし相手が違う考えを持っていたとしても言い出しにくいような雰囲気を極力作らないように会話するし、必要がなければ意見や好き嫌いに関してはあまり言わない。
 
そして、何か自分自身が批判をする場面においては、「自分は無理」と一蹴するのではなく「こういう事実があるから、こういう行動はよくなかったかもね」というように自分の好き嫌いではなくその時の状況などを理由にして批判や意見などを述べるようにしている。
 
 
もちろん自分の感情をないがしろにするわけではない。
だけど感情と論理だとしたら明らかに感情によって傷つけられることのほうが傷は深い。だから自分のはなつ言葉の力を知ったうえで気を付けているのだ。
親が子供を叱るときに例えると分かりやすい。感情的になって子供自身を否定するような叱り方をするよりは、その時のどの行動がなぜいけなかったのかを叱られたほうが傷も浅くなるし何より子供自身が学んで前に進むことができる。
 
 
この世の中には私よりもずっとマイノリティの考えやバックグラウンドを持って周囲の目に敏感になっている人がたくさんいる。その人たちもきっと冒頭のような軽い気持ちの発言に人知れず傷ついている。
 
みんなが発言にあと少しだけ思いやりを持って、どんな考えの人も自分をさらけだせるように、本当の意味での多様性のある社会に近づきますように、と今日も願う。

 
 
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2018-12-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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