女アラフィフ、トンネルを抜けるとそこは自分を抱きしめる世界だった話
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記事:永森ゆり子(ライティング・ゼミ日曜コース)
テレビの中継で裁判終了後にバタバタと弁護士がカメラの前に姿を現し、手に持った紙を上下に開いて結果を叫ぶ姿をご覧になったことはあるだろうか。
そう、あれ。あれが目の前に垂れ下ったように感じたのがほんの2週間ほど前。わりと大きな衝撃とともに、「ほう、ほう、ほう!」と溜飲が下がった。ただ、10ヶ月ほど前の冬の時期から、なんとなく兆候はあったのだ。
あんなに好きだった朝のカフェで過ごす時間に間に合うように起きることができない。毎朝の起きがけには、気のせいとはとてもいえない眩暈が起こる。肩こりとは無縁だったのに、いつも肩がこって頭も重い。利き手親指の第二関節と手首が痛くて動かない。いつもは気にならないことが気になって不安になる、落ち込む。大食いだったのに人並みにしか食べられない。ついでに検診で原因不明の腎機能障害を指摘される始末。
なまじ大病をしたことがないので、無理が利かなくなった自分の体に何が起こっているのか気になっていた。仕事も多忙を極め、職場のストレスもまあある。けれども、そんなものは今までだって乗り越えてきたし、例外はあれ、どんなに疲れていても一晩二晩ぐっすり眠ることができれば疲れは大抵回復した。
それがだ。振り返ってみればこの10ヶ月、すっきりと疲れがとれた実感がない。疲れっぱなしだ。この体調で、病院の検査結果は問題なし。腎機能障害も軽度で経過観察。そしてついにこの言葉を生まれて始めて聞くことになった。
「まあ、ご年齢でしょうね」
更年期症状という言葉が出なかったのは医師の気遣いだろうか。それでもいつか聞くことになると思っていたその言葉、実際に聞いてみると身も蓋もないような気になったのが正直なところだ。いやいや大変失礼したと頭を掻きたい気持ち。
そもそも更年期症状、これは今まで出てきた性ホルモンの分泌量が、加齢によって減ることが原因で起こってくるというもの。いわゆる老化であれば、死亡率100%の我々誰もが通る道で自然現象だ。ここで敢えて性ホルモンという言葉を使ったのは、女性だけのお話ではないから。女性ホルモンのエストロゲンに比べ、男性ホルモンのテストステロンは生涯を通じて分泌量にそれほど変化はないといわれているのだけれど、それでもテストステロンの減少が原因でつらい症状に苦しむ男性が少なからずいたりする。しかもそれが自殺の原因になることもあり、泌尿器科とは別に男性更年期外来なるものも存在もしている。私は女性なので、女アラフィフの体験でしか当事者にはなれないけれど、苦しむのは女性だろうが男性だろうが同じということだ。
そう、いくら老化という自然現象であっても、体も心も辛いし苦しい。更年期障害という言葉だってある。要するに生活に支障が出て心身の健康を害する可能性がある状態なのだ。であれば、病院でそれを指摘されて、大変失礼したという気持ちになるのはむしろ、自分に対して大変失礼だ。
自分の心と体を受け入れて生きていくしかない。でもその時に、今までお世話になった自分の体への敬意を持とうではないか。平均寿命が短かった時代、性ホルモンの減少が起こる前に、ほとんどの人が天寿を全うしていた頃、更年期という概念はなかった。そう考えると、長い歴史の中で考えたときに、更年期は先人の知恵に頼りきれない新しい世界だといえるのかもしれない。
少し前からこの時期にある自分を意識していた。それでも動揺はする。でも動揺の先にはなんというか、扉をひとつ開けて新しい世界があった。さあどうやってこれからを歩いていこうかと、わくわくする自分。私の周りにはイキイキとこの時期を過ごしている先輩がたくさんいるから、それが私の大きな助けになっているのは間違いなく、先輩方には感謝しかない。
今この時、老いを諦めや忌むべきものとして死を恐れることから自由になるタイミングでもあると思うのだ。死生観は人それぞれであるとは思うが、死について好奇心を持ってとらえた上で、豊かな人生を歩みたいと意識しながら生活している人がどのくらいいるか。
では豊かな人生とは何か。それは個人が幸福を感じる人生なのだろう。幸福を感じるのは自分以外の誰にもできないことだ。だから豊かな人生は自分の幸福が何によってもたらされるのか知らなければ始まらなかったりする。自分が豊かな人生の主役なのだ。
もしかしたらたくさんの問題があるかもしれない。仕事での悩み、介護、子育て、生活等……。でもだからこそ、自分の喜びや幸せを探していくことが自分の大きな助けになるのではないか。小さな幸せでいい。そして幸せ探しをするときに、無理の利かない自分は実は都合がよくていい。だってホルモン少ないから朝ごはん作れない、でいい。ホルモン少ないから少し充電しないと、でいい。自律神経の働きが整うから楽しいことは苦にならない、でいい。
そうやって、限りある人生と今を味わうのが始まりなのだ。だから自分を抱きしめる気持ちで今を歩んでいこう。
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