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メディアグランプリ

70人の女性に囲まれた女嫌いのオンナ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:今泉まゆ美(ライティング・ゼミ 木曜コース)
 「女性70人?それだけは勘弁して!」
その話が来た時、私は心の中でそう叫んだ。
 
私は女嫌いのオンナだった。
なぜならば、私は女性からいじめられてばかりの人生だったからだ。
 
小学生の頃はリレーの選手に選ばれなかった腹いせで、ボス的存在の女子からクラス全員に私を無視するようお達しが出た。
中学生では先輩からの告白シーンを目撃され、○○ちゃんの好きな人なのに裏切ったと部活女子全員が交換日記で私の悪口を書き立てた。友情を優先させ断ったにも関わらずだ。
女子高では必要な楽器を持っていたために1年生で一人だけコンクールに出たという理由で、上手なあなたには必要無いでしょうとバッグの中にしまっておいた教本を盗まれた。
 
どれも原因は私が悪い事をした訳ではなかった。要するに、嫉妬によるものだった。
だから私は謝罪でも話し合いでも解決できない問題に頭を抱え、憂鬱な学生時代を送る羽目になったのだ。
 
それに加えて、もともと私は女子らしさという要素が欠けていた。
常に集団でトイレに行く派閥には属さず、褒め合い合戦には不参加だった。
「全然勉強してなーい」という成績優秀嘘つきちゃんや、すぐに秘密をばらす拡声器オンナ、先生や男子に気に入られようと媚びるぶりっ子、事あるごとに張り合ってくるマウンティング女子が大嫌いで、この世から消えればいいのにとすら思っていた。
 

過去の経験から、私の中には「女性からの嫉妬や突然の裏切りには最大限の注意をすべし」というマイルールが出来上がり、女性と接する時は常に顔色を窺い神経をとがらせるようになった。オンナの敵はオンナだと、肝に銘じていた。
それにも関わらず社会人になってからも私に嫉妬や裏切りをする女性は一定数存在し、女嫌いに年々拍車がかかっていった。
 
もちろんそんな女性ばかりでないのは頭ではわかっている。長年の付き合いがあり、深い話をする仲の良い友人もいるが、万が一裏切られたらと考える防御反応が無意識に働いてしまい、それで自己嫌悪に陥るという悪循環を招くのであった。
心の底では深く繋がりを持ちたいと思いながらも、裏切られる恐怖が先に立って一定の距離を置いてしまう、そんな付き合い方をしていた。
 

そんな私を女性ばかり70人の職場に放り込むなんて、拷問のようなものだ。
また嫉妬が原因になって集団でいじめをされるような事があるんじゃないか、何か私の預かり知らぬところで怒りを買ってしまうような出来事が起きるのではないだろうか……
過去に私をいじめた女性たちが次々と頭に浮かび、また同じような人がいたらどうやって対応しようかと思い悩み、満足に眠れない夜が続いた。
 
そして、期限ギリギリまで悩んだ末に、その環境に飛び込む事を決めた。
怖いもの見たさと今の自分を試したいというチャレンジ精神が決定打となった。
 

勤務初日はとにかく目立たないことに全神経を注いだ。
ダークカラーの服に身を包み、170センチ近い身長を少しでも高く見せないように、ヒールの一番低いパンプスを選んだ。最近ずっとお気に入りだったマゼンタピンクのネイルをベージュに変えた。
上から下まで持ちうる地味アイテムを総動員し、裁判の判決を聞きに行くような気持ちで職場へ向かった。
 

しかし初日早々、私の心配はあっさりと杞憂に終わった。
私が嫌いだと思うようなタイプの人は、そこには誰一人としていなかったのだ。
 
ベテランの方々は親切で面倒見が良く、一緒に入ったメンバーは明るくて感じが良い。
休憩時間はどこからともなくお菓子が回ってきて、賑やかで笑いが絶えなかった。
 
少し華やかな色のマフラーをして行っても嫉妬をされるどころか素敵ですねと本心で褒めてくれ、頑張りは認められ、弱音は共感され大丈夫よと励まされる。
そして皆がよく働き協力的で生産性も高く、チームワークの良い職場であった。
たまに不仲もあるが、それは自分の担当を放棄し勝手なふるまいをしたという、いたって真っ当な理由によるものであった。
 

おかげで私の女性に対するイメージが、一気に前向きなものに変化した。
出逢った70人だけでなく、過去に知り合ってきた人たちも同様にポジティブな目で見られるようになったのだ。その影響力はかなりのものである。
 
これは私にとって、とてつもなく大きな収穫であった。
実は、私は女性の役に立ちたいと思い活動をしていたにも関わらず、女性のお客様とトラブルになったらどうしようという不安を常に抱えており、お客様の顔色を窺い常に気を張って疲れを感じているところだったのである。
それが変えられたらどんなに良いかと常に願いながらも、なかなか解消できない問題だったのに、こうもあっさりと前進できるようになるとは全くの想定外であった。
 
なぜもっと早くこうしなかったのかと、悔やんだ。
しかしその反面、過去の出来事を人に話せるくらいまで自分の中で消化できるようになったから今だからこそ、人を見る目を変えられたのかもしれないとも思う。
 
もしかしたら他の苦手なものも、今環境を変えてチャレンジしたら簡単に克服できるのではないか。そんな希望も湧いてきた。
 

「また一緒に仕事しようね」
そう言って居場所を与えてもらえる事が、私にとってはこの上ない喜びとなり力となる。
おそらく次回仕事をする時には、女性70人の職場が楽しみで仕方ないと感じていることだろう。そして、その頃には女嫌いのオンナから完全に卒業できているに違いない。
 
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2018-12-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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