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部下育成は、廃課金する勢いで!


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記事:落合健太(ライティング・ゼミ 木曜コース)
 
同じ仕事について、気がつけば13年が過ぎようとしている。
その間、たくさんの部下と出会いや別れを繰り返してきた。
仕事と初めて向き合う彼らに、全力を尽くしてきたつもりだったが、先日、ひょんなことから部下育成の本気度合いを疑うことになった。
きっかけはスマホゲームである。
 
最近はマシになってきたが、一時期狂ったようにスマホゲームにはまっていた。
一番ひどい頃のゲームフォルダは、3ページにわたって26個のアプリを詰め込んでいた。
それだけのアプリを同時に進めるのに、一日にどれだけの時間を費やしたことだろうか。
パズルに野球に街づくり、格闘ゲームにリズムゲーム、三国志からF1レースまで。
雑食もいいところ。ちょっとでも面白いと思ったゲームは片っ端から手を出していた。
 
ただ、どれだけゲームに熱中しても、一つだけ絶対に外せないルールがあった。
課金をしないこと。
自分の性格的に、一度でも課金してしまうと、無限につっこんでしまいそうで怖かったのだ。
どれほどたくさんのアプリをダウンロードしても、その一線だけは死守していた。
 
課金をしないとは言え、どのゲームも一度始めると、全力で取組んだ。
あらゆる攻略サイトをチェックして基本情報は完璧。
毎日必ずログインし、ボーナスやコインを集めて回る。
朝・昼・晩に発生する特殊イベントも欠かさず参加し続けた。
レベルの高いユーザー同士のチャットにもへばりついて、少しでも良ネタがないかを探し続けた。
ときには、ランキング上位のユーザーに個別でやり取りし、美味しいおこぼれにあずかったりもした。
そこまで取組むと、非課金でも一定のランキングまでは上がってこれる。時間をかければかけるほど順位も上がり、モチベーションも右肩上がりだった。
 
しかし、一定のランキングで突然頭打ちを迎える。
どれほど頑張ったところで非課金者は重度課金者には勝てない。
越えられない壁に出会うのだ。
順位が上がらなくなってくると急に投下時間が減ってくる。
特殊イベントの参加率が下がり、そのうちログインすらしなくなる。
モチベーションは急速に失われていった。
このゲームにこんなに時間をかけたのに……。
残るのは虚無感だけだった。
 
これに懲りずに数々の虚無感を同じように味わい続け、ふと気づいたことがあった。
スマホゲームに課金をしないと決めていたが、それは重度の課金が怖かったのではない。
全く逆である。
重度に課金したのに、望むランキングに到達できないことが怖かったのだ。
 
長年社会人をしているので、1日100円程度の課金が出来ないわけではない。
結局は気合が足りないのだ。
本気でゲームに向き合っていなかったのだ。
「課金してないと上位になれなくても仕方ないよね」とか。
「あいつら(課金者)は努力もせずに、ランキングを金で買っている」とか。
ぬくぬくと甘えた言い訳が使えなくなることこそが、なによりも怖かった。
 
そして同時に感じたことがある。
スマホゲームに課金する怖さは、部下育成に本気を出す怖さと全く同じだった。
 
部下に仕事を教えていると、最初の頃は吸収がよく、教える自分も、覚えてくれる部下も機嫌よく進んでいく。
挨拶も電話もまともに出来なかった新人が、名刺交換を覚え、電話営業が出来るようになる。気がつけばプレゼン資料を作ったり、セミナー講師までやってのけるようになっていた。
 
しかし、一通りの仕事を身につけてしまうと、成長は一度頭打ちを迎える。
基礎を一通り身につけることと、基礎を深めて己の武器にすることでは、能力開発の向きが全く異なるのだ。
部下の特性やモチベーションも影響する。
どんな仕事に出会えるか、運やめぐり合わせ、顧客との相性もある。
そして何より、上司である私の本気度合いが圧倒的に影響していた。
 
数々の部下に接しながら、基礎は身につくのに、その先は足踏みしているなと客観的に感じている自分がいた。
しかしそれは言い訳でしかなかった。
「本気を出したのに、部下を成長させられなかった自分」から逃げるための言い訳だったのだ。
 
そう考えると、部下育成とスマホゲームが同じものに見えてくる。
結局は気合なのだ。
本気で向き合うかどうかなのだ。
 
着々と社会人経験を積み重ね、そろそろ40歳が見えてきた。
社会人人生も折り返し地点だろうか。
非課金の範囲で、聞こえのいいことだけを言っている役回りはそろそろ終わりかもしれない。
時に廃人と称され、取り返しの付かないレベルで金銭を投じている上位ランカーのように、部下に対して、嫌われてしまう程の熱量を投じる時期がついに来た。
 
面白い。
平成最後の誓いにふさわしいテーマだ。
私は来年、部下に対する廃課金者になる。

 
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2018-12-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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