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メディアグランプリ

銃のない国で本当に良かった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:加藤しのぶ(ライティング・ゼミ木曜コース)
 

つい最近、女性社員向け社内報の取材を受けた。
「女性管理職のロールモデルが周りにいない!」という声が多いとかで、第一弾として私に声がかかったのだ。あまり参考になるような話はないからと、最初は断ったのだが、社内報を作っているのは隣の部署なので逃げ切れるわけもなく、ランチをしながらインタビューされる羽目になった。
社歴や管理職を目指した理由などを聞かれ、取材も終盤になった時、こう訊かれた。
「仕事で嫌なことがあった時、加藤さんはどうしてるんですか?」
その質問が嫌だから、取材されたくなかったんだよ!
 
この取材に限らず、最近、職場の後輩たち、それも女性の後輩たちから、同じ質問を受けることが増えた。
彼女たちの目には、私は大量の仕事をさばきながらも、いつも平静でいるように見えるのだという。なにか心をフラットに保つ秘訣でもあるんじゃないかと、それが知りたいのだそうだ。
おそらく、彼女たちが期待しているのは、ストレスから脱するための思考法だとか、ステキな習慣とか、目からウロコが落ちて視野が広がる話なのだろう。
あるいは、先輩であっても、自分たちと同じように七転八倒しながら歯を食いしばって頑張っているんだと、仲間意識のようなものを求めているのかもしれない。
そんな時、私の公式回答は、いつもこう。
「アクション映画を観ることね。スカッとするから」
嘘ではない。それも確かにストレス解消法の一つだ。
だが大抵、相手の反応は芳しくない。世間の女性にとって、アクション映画はメジャーなストレス解消法ではないらしいから。
かといって本当のことを言えば、彼女たちをもっと困らせる羽目になる。
申し訳ない。
本当にごめんなさい。
私のストレス解消方法は、あなたたちの役にも立たなければ、同調してもらえることすらないだろう。
それどころか、人としてどうよ、と、白い目で見るようになるかもしれないのだ。
 

例えば、朝礼で嫌いな上司が、的外れな説教を長々と語っていたとする。
あとにはいくつも仕事が控えているのに、話は終わる気配もない。イライラが募り、上司の声がますます耳障りになっていく。そしてさらにイライラが増し……。
そんな瞬間。
「バン!」
銃声とともに、上司はその場にひっくり返り、目の前から消えていく。
ただし、私の頭の中で。
 
実は、イライラや怒りが高じてどうにもならない時、私は相手を、銃で撃っちゃうのだ。
ただし!
あくまで、頭の中で。
 
不謹慎な妄想だとは重々承知だ。
でも、銃で撃っちゃうといっても、それが殺意かというと、ちょっと違う。
気持ちは「死んでしまえ!」というより、「お黙り!」に近い。ただ職場で口に出すのはいかがなものか、と思うので、妄想で気を紛らわせるわけだ。
 
とはいえ私は意識的にそういう妄想でストレスを解消しているので、自分の中に少し危うい部分があるのだという自覚がある。
もちろん、本当に危ないことを実行するには、心理的なハードルはもっとずっと高い。ストレスを抱えて、さらに負荷が長期間かかっているとか、瞬間的に爆発的にリミッターが外れるほどのきっかけでもなければ、まず実行するのは無理な話だ
それに、そこまで追い込まれても、手元に本物の銃はない。包丁だの金属バットだの、他の武器では相手に近づかなければ使えないから、女の身ではリスクが高い。
そう簡単に、妄想は現実にならないのだ。
少なくとも、銃が持てない日本では。
 
最近は報道が下火になったが、アメリカでは銃を規制するか否かで論争をしている。賛成派は「銃を規制しなければ、危険な相手が銃を手に入れてしまう」といい、反対派は「銃を規制されたら、身を守る手段がなくなる」といって平行線だ。
どこかの危ない誰かが銃を手に、自分や家族やコミュニティを攻撃するかもしれない!
だから……という話なのだが、不思議で仕方がないのは、どちらも「被害者」の立場で語っているところだ。
でも私は、もし銃が簡単に手に入るのなら、自分が加害者になる可能性がゼロではない、と、思っている。精神的にギリギリまで追い詰められたそんな時、手元に銃があったとしたら、撃たない自信は、私にはない。
でも、規制の厳しい日本では、銃を手にする機会なんて、まずありえない。それこそ最近の事件のように、お巡りさんでも襲わなければ銃を手に入れるのは難しい。
しかも、仕事でクタクタになってるところに、交番で警官を襲うなんて、少なくとも私にそんな体力はない。銃のメリットは、力がなくても人を倒せることなのに、その銃を手に入れるために体力も腕力も必要だ。
なんてバカバカしいんだろう!
恐らく、日本で暮らす私たちは、無意識化にそんなことを考えて、平和な生活を営んでいるのだ。
銃規制って、実は、フツーの人がうっかり加害者にならないためのものなのだ。
 
だから私は、銃のない国で生活できることに感謝して、今日も脳内発砲を繰り返す。
そして明日も平和でありますようにと、結構切に願っている。

 
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2018-12-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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