サンタクロースはじめました
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記事:飯田峰空(ライティング・ゼミ木曜コース)
生まれて32年。
ついに今年の冬。子供にクリスマスプレゼントを渡す、すなわちサンタをはじめる時がやってきた。といっても私に子供はいない。妹の子である4歳の双子の姪っ子たちにあげるのだ。
実は、これまでもクリスマスプレゼントはあげてきた。しかし、去年まで彼女達は、「12月25日にプレゼントをくれるサンタという気前のいいおじさん」の存在を知らなかった。だから、なんだかよく分からないけれどおもちゃもらえたラッキー! くらいにしか認識していなかったのだ。
ところが今年は違う。幼稚園という社会で揉まれ、日々知恵をつけていく彼女達は、おもちゃのカタログに丸をつけて、欲しいアピールをするまでに成長した。周りのことをあっという間に吸収し、どんどん巧みな自己主張をしてくる彼女達が、生意気で愛くるしい。
よし、パパママサンタ、じじばばサンタに加えて、おばサンタ(この呼び方はつらいな)も頑張っちゃうよ! と意気込んだ。
妹に聞いたところ、姪っ子たちはもちろんサンタさんが枕元にくるのを信じて心待ちにしているらしい。
そこで一つ疑問に思った。
私が姪っ子たちに会ってプレゼントを渡すのは年末で、もうすでに25日にサンタさんからプレゼントをもらっているはずだ。彼女達が信じているサンタさんの設定を壊してはいけない。その状態で後からプレゼントを渡すにはどうやったらいいのだろう?
悩んだあげく、「サンタ 夢 壊さない 渡し方」とグーグルに聞いてみた。初めての検索ワードだ。すると、サンタ的プレゼントの渡し方や演出アイディアが出るわ出るわ。熟読した結果、「うちにサンタさんが来て、姪っ子ちゃんに渡してね、とサンタさんに言われたよ」と言うことに決めた。
プレゼントを買って渡すだけなのに、この「サンタ」という括りがあるだけで、まさかしょっぱなからつまずくとは思ってもいなかった。恐るべし、サンタ道。
そして数々の演出を試し、こうして初心者サンタに秘伝を教えてくれる先輩サンタの存在が頼もしくみえた。
かくして、プレゼントの渡し方を決めた私は、肝心のプレゼントを探しに街に繰り出した。姪っ子たちがカタログに丸をつけた大本命のおもちゃは、パパママサンタが渡すらしいので、私のセンスで選ぶことにした。
「え……なんか色の配色が多すぎる! 個々の主張が激しい!」
久々に入ったおもちゃ売り場で、私は卒倒しそうになった。赤、青、黄色の鮮やかで派手な色から、ピンク、水色、淡い黄色などの女の子が好きそうなパステルカラー。キラキラのホログラムやラメが施された箱。それぞれの装備をまとったおもちゃたちが、選んでほしい一心で、一斉に自己主張しているように見える。
おもちゃ売り場って、こんなにハイカロリーな場所だったっけ? 胸焼けしそうな気持ちの中、売り場を見てまわる。
プリキュアは……シリーズもキャラクターも多いから鬼門だ。姪っ子たちにも、それぞれお気に入りのメンバーがいるのだろう。下手に介入して、このキャラクターそんなに好きじゃないとか言われたらショックだ。
リカちゃんも難しい。どの洋服やアイテムを持っているかなんて把握できていない。もう持ってる、なんてことほど悲しいものはない。
そんな風に最初は見定める基準で考えていたのだが、売り場を5周くらいしていると、だんだんかつて女の子だった時の勘が戻り始めていた。もらって遊んでおしまい、ではなくて自分で何か作ったりできるおもちゃ。作るものは少しだけ背伸びができるお姉さんみたいなものがいいなぁ……。
そんなかつての女の子の勘で、オリジナルのアクセサリーが作れるおもちゃを買った。箱も大きいし、二人で一つドカンとあげるにはもってこいだろう!
おもちゃを買い、大きな箱を抱え家に帰る途中、疲れと達成感の混ざった心で考えた。
サンタ業務、結構大変だ。
暗黙のルールもあるし、キラキラで子供仕様の売り場に行くことや、全部同じに見えるところから子供の好みのものを探すって、なんて労力がいるのだろう。今まで、もらう側しかやってこなかった身としては初めての経験だった。
しかし、それをやってのけられるのは、ひとえに子供たちの笑顔や驚く姿が見たいからなのだ。そして、その喜ぶ姿を思うと、疲れなんて弾け飛んでしまうのだ。
そう思った時、ふと自分の両親のことを思い出した。
きっと、両親も今の私と同じ気持ちで私のプレゼントを探してくれたのではないだろうか。
その時の両親の想いが、何十年越しに私に届いたような気がした。
不意打ちでやってきたプレゼントに、熱いものがこみ上げてきた。
サンタさん、これも織り込み済みですか。
大人になった時にこのプレゼントが届くように、子供の時から準備してこのタイミングを見計らっていたんですね。
まったくもう、サンタさんには敵いません。どこまでも演出するんだから。
そして、どこまでも頑張る世界中の誰かのサンタさんに、全力で声援を送りたくなった。
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